<SessionDigest#6(05/06/07)(前)┃Rv'Lct┃(次)
アイグリスの種族設定#3>
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12月1日に行われたセッションのダイジェストです〜。少々補完的な情報もあるので
プレイヤーの皆様、ご確認を〜。TRPGって何?って方、とりあえず、ファンタジーの
世界の登場人物になりきる「ごっこ遊び(おままごととか、仮面ライダーごっことか)」
みたいなモンだと思っていただければよいかも〜☆
<PC>
みずのえさん:好奇心旺盛な自称学者、だが熱血漢な戦士でもある、ライノス・クライン
kengoさん:行方不明になった亡国の姫君を追い求める元ナイト、ヴォルフ(以下略
むらさきさん:ふた○りエルフ!?頼れるレンジャー、ヴァリーフィラネー通称ヴァリー
カノレーアさん:狼人間でもあるエルフ、今回アダルトな展開、リミナシア通称リミたん
エンジェルさん:将来服飾店の開業を夢見て依頼をこなす、ノーテンキな剣士レイチェル
ko1さん:姉妹?の魂をその身に宿した二重人格、どちらも魔法戦士系、、、
→リリィ・アルタイル(妹)
低CP、両手でモーニングスターを振り回す。50CP級ながら、
前衛の戦士として必要十分な能力を持っている。ちょっと内気。
→ローザ・デネブ(姉)
高CP、片手でモーニングスターを操る上に凶悪な高ダメージ系の
必殺技「アイドルヴォイス」を1日1回ブチかます。頼りになる。
今回は・・・エンジェルさんのレビューをもとにして、、、
ちょっと不真面目でヤル気の無い短編風?って方向で書きますか(何
こんな感じでTRPGって遊ばれてるんですよ〜(マテ
<お互いの呼び方と口調設定(仮説)>
ライノス(丁寧な口調とくだけた口調を使い分ける)
→ヴォルフ:ヴォルフ殿
→目上や初対面:〜さん
→その他:呼び捨て
ヴォルフ(丁寧な口調、少々古風な感じになることもある)
→全員:〜殿
ヴァリー(不思議な口調。時々接続詞の無い喋り方をしたり、舌足らずになったり)
→全員:〜さん
リミナシア(行き過ぎた美希口調)
→全員:〜しゃま
レイチェル(天然口調。元気系だったり間延び系だったり)
→全員:呼び捨て
ローザ(お姐系の、サバサバした口調)
→全員:呼び捨て
リリィ(自信なさげな、雪歩口調)
→全員:〜さん
注意!この短編適当小説は1週間以上をかけて、様々な精神状態のGMが少しずつ書いて
行ったものです。なので、所々不適切だったり過剰にえrかったりする描写があります。
特に、GMは、物書きとしてはえr小説が原点だったので、そういうのを覚悟しないと、
思わず不快になられるかも知れません。なので、閲覧は覚悟の上、自己責任で願います!
…まぁ、大抵はヌルい微妙ネタだらけなんですがががががw
ちなみに、ほとんど実際のプレイ内容に沿っているのだから困りますねw
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<ひぐらしが鳴く頃に>
冒険者の活躍によりドレンの街に暗躍する竜王教が駆逐されてから三週間が過ぎた。
…晩夏。
朝夕にひぐらしが物悲しそうに鳴くような季節。
相変わらずドレンには腐竜高原から断続的にモンスターの定期便が届き、守備隊や駐留
冒険者の手を焼かせていた。襲撃の頻度そのものは段々と落ちてきていたが、襲撃に来る
モンスターは逆に多様化し、アンデッドばかりでなくなっていた。
例えば、再生する九本首のヒドラや石化する視線を持つバジリスクのような極めて危険
な古典的魔獣も見られた。また、あるときなどは朝にどこからともなく結集したスライム
の大群に街が囲まれる、ということもあった。西岸守備隊を率いるミーナ・ベルザレスが
炎の魔法使いでなければ、町は文字通りとかちつくされていたかも知れない。
<なにこのキャラクター紹介文>
ドレンの冒険者ギルド兼酒場<暁の大鷲>亭。
ヴォルフは前回の依頼が終わった後、毎日ここに入り浸り、酒場を訪れる冒険者を相手
に執念深く情報収集を続けていた。ミューシャ姫の行方は杳として知れず、たまにドレン
を訪れるナスターシャとも度々情報を交換してはいたが、シェリーの大鏡を以って姫君の
メイド服姿を認めることは出来ても、居場所が何処であるのかが解らないということで、
ヴォルフは途方に暮れていた。
そんな彼がいつも通り<暁の大鷲>亭に入ると、元気な声に迎えられた。
「ヴォルフじゃない!今日も聞き込み?」
華奢な身体に最新の流行を取り入れた可愛らしいVi服。名高いブランゼ家の令嬢で、
家を飛び出して冒険者となったレイチェルだ。ちゃらんぽらんな性格とは裏腹に剣の腕前
は職業戦士であるヴォルフですら舌を巻くほどで、得体の知れない人物である。
「レイチェル殿、風邪はもう大丈夫ですかな?」
「さすがにもうへーきよ、へーき!」
「とは言っても、ここのところずっと寝込んでいたからな。本当に平気なのか?」
学者を自称する冒険者、ライノスが力強い声で言った。その深い学識と旺盛な好奇心は
学者肌と呼ぶに遜色無いが、重い斧槍<ハルバード>を振り回せるほどのたくましい肉体
を誇る熱血漢でもあり、果たして肉体派の学者なのか、それとも博識な戦士なのかは意見
が分かれるところだろう。
「大丈夫だってば。もう今すぐにでも冒険に出られるくらいなんだから!」
「冒険…そろそろ本格的な収入が無いと…財布が枯渇してれぅ〜(=ω=;)」
得体の知れなさではレイチェル以上かも知れない、半陰陽エルフ、ヴァリーが卓の上に
べっとりとへばりつくような姿勢で溜め息混じりに言った。彼女(?)のアホ毛が大きく
前後に跳ね、プライスレスな絶対領域が艶かしくのぞく。
その言葉を待っていたかのように、酒場を満たしていた甘美な歌声が止んだ。
美声の歌い手、ローザ・デネブが店内に設けられたステージ上で一礼した後、真っ直ぐ
四人のもとへ歩み寄った。
「ローザ殿。久々に拝聴致したが、見事な歌声でしたぞ。ドレンにはいつから?」
「ありがとう、ヴォルフ。今朝着いたばかりよ。歌も楽しいんだけれど、歌だけで糊口
を凌ぐのもそろそろ辛くなってきたし、私も冒険に出たいですわ」
「ヴォルフ殿、お知り合いか?」
「お三方は初対面でしたな。以前ある冒険でご一緒したことがありましてな…」
(注:SessionDigest(Mini)#4-#5の#4参照/
http://zenon.jugem.cc/?eid=1895)
こうして、ヴォルフがローザを皆に紹介した。
好奇心旺盛なライノスの興味を引いたのは、彼女がいわゆる二重人格であるということ
だった。ローザのもう一人の人格はリリィ・アルタイルと云い、姓こそ違えど互いに姉妹
として認識していた。双方とも“素質を持つ者”で、またモーニングスターを得物とする
戦士でもあったが、内気な“妹”のリリィより“姉”のローザの方が実力で勝っていた。
しかし、彼女が自己愛と表現して良いのか、家族愛と見るべきなのか、それとも女性愛
なのか、ともかく双方とも異常なまでに互いを愛し合っているという常人には理解し難い
性癖を秘めていることを知る者は少ない(それとも、公然の秘密?w)。
一通りの紹介が終わったとき、一人の可愛らしいエルフの少女が卓に寄って来た。
「ただいまぁ!あろぇ〜、見慣れない人がいるなの。このお姉さん、誰なの〜?」
可愛らしい声。しかし、ヴァリーはそんな少女を鬼の形相で睨みつけた。
「…丁度紹介が終わったばかりだ、KY、この雌犬が」
ヴァリーも、この少女も、エルフ族の中では奴隷階級に属する「不完全な成体」だが、
少女はヴァリーのみならずほぼ全ての仲間からイジメに近い形で可愛がられていた。
少女の名は、リミナシア。狼に変身出来る半獣人でもあり、野伏としては一流の腕前を
持つヴァリーに勝るとも劣らない実力者である。そんな彼女が時々犬畜生にも劣るような
扱いを受けているのは、リリィ以上の内気な性格からか、それとも彼女自身が醸し出す、
特殊なイジメてオーラのせいなのだろうか?
「くぅぅ〜ん、ひどいなの…」
この日も、リミナシアの泣き声が幾度となく周囲の耳を愉しませる。
<依頼>
冒険者が集まると、依頼が舞い込む。
理由は全く以って不明だが、この世が始まって以来のお約束である。
六人の冒険者が近況を語り合っていると、また馴染みの顔が話の輪に加わった。
ドレンを守る二人の守備隊長、ハーフエルフの魔法使いミーナ・ベルザレスとヒト族の
風使い、エレノア・スマイト。
勿論、依頼である。
「やぁ、元気かな?ライノス、いつも守備隊に協力してくれてありがと!」
「いえいえ、少しでも貢献出来ていれば幸いですよ、ミーナ殿。今日は何故このような
場所に?もしかして…」
「そう、ライノスだけじゃなくて、ヴォルフガング殿、ヴァリーフィラネー…竜王教を
この街から駆逐した皆の実力を見込んで、一つ頼みたい仕事があるの。ご同席の方、もし
冒険者だったら、こちらも歓迎するから、よかったら一緒にどうかな?」
「して、内容は?」
ライノスの問いに、ミーナの顔が少し曇る。
「ちょっとヤバい仕事。でも、報酬は一人あたり最低でも二十万リラニア出るよ!」
慌てて取り繕ったかのような報酬の話に、ヴァリーが飛びついた。
「二十万!破格的冒険収入ッ!やるやる、勿論喜んでやります!」
「そこまでの大金とは、よほどの大仕事みたいですね」
「う゛、ヴォルフガング殿、冷静な突っ込みありがとう…それじゃあ、エレノア、内容
の説明をお願い」
「…汚れ役はいつも私ですね。仕方ない、説明しますか。内容は、腐竜の調査です」
「わぁお、確かにヤバい内容ね。私はともかく、リリィにはちょっとキツイかな…」
「…依頼を受けて下さる場合、二週間の準備期間と、報酬とは別に準備金二万と報酬の
前金として五万、あわせて七万リラニアを約束致します。残りの報酬最低額十五万以上は
任務成功の際に渡されます。任務期間は二週間後の出発日から一ヶ月間。即ち、今日より
四十五日以内に帰還し、腐竜の現状を報告して下されば任務達成とみなされます。これは
逆に言うと、四十五日が経っても誰も戻ってこられない場合、全滅したとこちらは考える
でしょう。以前パズー王国から派遣された調査隊が全滅したとの話も聞いてます。まぁ、
そういうわけで、非常に危険な任務ではありますが…」
「もちろん、私は受ける」
ライノスは仲間達を見渡すと開口一番、そう言い放った。
「古代の竜が如何なるものなのか、非常に興味をそそられるからな。命を賭ける価値の
ある任務だ、少なくとも私にとっては」
「金欠どのみち野垂れ死に…やるしかないし」
「私もやりま〜す!二十万もあればあんな服やこんな服が…じゅるり」
ヴァリーとレイチェルが口々に参加を表明した。両者とも金銭を意識していたが、その
内容は天と地ほど違うようだ。
「二週間の間、大切な人に別れを告げてこいってことね。中々粋なはからいじゃない。
気に入ったよ、私もやる。それだけの期間があれば、きっとリリィも心の準備ができると
思うし、ね」
「…レディーが命を賭けようとしているのに行かないとあっては騎士の名折れ。私も、
参加致しますぞ。ドレンの民のためにも、皆の命、私がお守り仕りまする」
「リミたんどうしようかな…怖いし…」
「勿論一緒に来るよな?」
「ぁぅ、ヴァリーしゃま、そう言われても…」
「来 る よ な ?」
「ギャン!ライノスしゃままで…ぁ〜ぃ。行きますなの…」
それを聞いて、エレノアが苦笑いを浮かべながらミーナを振り返った。
「…六人、のようですよ」
「うん、この人たちなら大丈夫…かな。それじゃあ、これを渡すよ〜」
ミーナが、水晶で出来た筒を六つ、冒険者達に手渡した。
筒にはボタンのようなものがついており、押し込むことが出来るようになっていた。
「この筒は、筒の先に映る景色を中に記録する魔法のアイテムなんだ。腐竜を見たら、
筒の先の部分を向けてボタンを押せば、その様子が記録されるというもの。これを全員に
一つずつ渡すね。調査をやった証拠としてこれで腐竜を写して、持って帰ってきてね」
こうして、六人の冒険者は決死の任務に挑むこととなった。
<それぞれの準備/レイチェル編(エンジェルさんの日記より引用)>
エレノア
「ああ、そういえば。レイチェルさんを探しているという人に会ったのですが」
レイチェル
「……」
エレノア
「メイド服で──」
レイチェル
「アーアー、キコエナーイ」
かくして、レイチェルは2週間の間、彼女を探しているという甲冑を身に着けた不思議
なメイドさんを必死に避けながら過ごすのであった。なんぞこれ。
<それぞれの準備/ライノス編>
ドレンの北東にあるエルフ族の集落、フーラン…の、近く。
ここに、ライノスが師と仰ぐマグニス・ゼクスが居を構えていた。
ライノスは、死をも覚悟した任務を前に、師に別れを告げに行ったのだった。
しかし、結局は酒盛りとなってしまい…。
ライノス
「師匠、ブランデーを二本ほど持ってきました、ヒック」
魔理沙マグニス
「なら、餞別にこっちのブランデーを一本やろう。これはいい酒だぞ?」
ライノス
「師匠、本当にブランデーですか、瓶に“男盛り”とありますが…」
マグニス
「なぁに、細かいこたぁ気にするな、男だろ?」
ライノス
「それもそうですね、わはは」
マグニス
「ハハハこやつめ…そうだ、最近ギスライに住むライリーという手練の錬金術師と会った
のだが、いくつか霊薬<エリクサー>を入手してな。何か、買っていかないか」
ライノス
「おお、これは助かります。それでは、この<怪力>を頂いても宜しいですか」
マグニス
「大特価、五万リラニアだ」
ライノス
「かたじけない。師匠はいい人だなぁ」
こうして、森の夜は更けていく。なんつーか、壬さん、ホントーに済まねぇw
<それぞれの準備/リミナシア編>
同じく、フーランの近く。
森の中に、ぽつんと小さな家が一つ。
もうずっと昔、リミナシアを可愛がっていた一人の女冒険者がいた。彼女は暫くこの家
でリミナシアと共に暮らし、そしてある日、どこへともなく去っていった。
リミナシアは今でも時々この家を訪れる。
女冒険者が何時戻ってきても良いように、家の掃除をしていくのだ。
「リミたんに唯一、優しくしてくれた人なの」
死を覚悟せねばならない任務を前に、彼女は一人、彼女に取っての“聖地”を訪れて、
そして何処に居るとも知れぬ過去の恩人に心の中で別れを告げるのだった。
「ぐすっ、今どこに居るのですかぁ。リミたん寂しいなの」
最も心休まるこの空間で、リミナシアはいつものように涙を流していた。
「…リミたん、きっとまた生きて帰るなの。きっとまた会えるそれ日まで…それじゃあ
リミたんは行くなの。リミたんは狼なの、絶対に負けないの…」
決意を新たに、狼娘は思い出の場所を後にした。
<それぞれの準備/ローザ&リリィとヴァリー編>
…ドレンの宿屋、の、一室。
自己愛たくましい二重人格が爆発していた。
ローザ
「あはは、うふふふ」
リリィ
「らめぇ、お姉様ぁ」
ヴァリー
「私も混ぜて→(*=ω=)」
二人(?)が半陰陽エルフを受け入れたか否か、それはプレイヤーにしか解らない。
だが、カオスは二週間の間、ずっと続いていた。
いやもうマジで、スマソwwwwwww
<それぞれの準備/ヴォルフ編>
ナスターシャ
「腐竜の領域へ行くのかえ。ならば、以前調査団に参加していたジャレイアが色々知って
いるんじゃないかのぅ?」
ディシャーヤの姉、蛇レイア、じゃなくてジャレイア
「アワワワ、ナニモオボエテナイ、シラナイ、コムギコカナニカダ」
ナスターシャ
「これ、シッカリせんか」
ジャレイア
「…スライムには注意しろ。腐竜の領域内の水は飲んではいけない。後は…」
ナスターシャ
「…まるでコンピューターRPGの村人みたいな喋り方じゃのぅ」
ジャレイア
「駄目だ!オモイダシタクナイ!オンドゥルルラギッタンディスカー」
ナスターシャ
「普段は有能なのだが、調査団の記憶を語らせるとこうじゃ。許してたもれ」
ヴォルフ
「いえいえ、充分参考になりました、礼を申し上げます。って、台詞これだけですか」
<旅立ち>
ジャレイアから得た情報によると、死と腐敗の領域の中央部にそびえる山に腐竜が居る
可能性高いとのことであった。そこで一行はなるべく死と腐敗の領域を避け、最短距離で
危険地帯を抜けて山へ至る経路を選ぼうとした。
結局ドレンより河沿いに南東へ進み、死と腐敗の領域の中心部を南西から突っ切る経路
が決定し、こうして一行は腐竜の生み出す、死と腐敗の領域へと旅立つのであった。
…って、最後の一文、エンジェルさんの日記そのまま!
<DAY1>
最も安全な経路を行こうという彼らの目論見は、初日から崩壊した。
ドレンを出て暫く、河沿いは既に死と腐敗の領域に覆われ、これが川の水と混ざり腐臭
の激しい沼地と化していたのだ。
そして、危険な魔獣がこの湿地帯に生息するようになっていた。
四速歩行の大きな爬虫類の胴体に二本の尾、そして長く伸びた九本の首。
ヒドラ、である。
一行は足場の悪い入り組んだ沼地で道を探りながら進まねばならないと同時に、水辺や
水中にたたずむこの凶暴な魔獣を慎重に避けねばならず、遅々としてはかどらない行程に
疲労はかさむばかりだった。
しかし、運は彼らの苦労をあざ笑うかのように、酷い仕打ちを与えた。
それは一行が遅めの昼食を取り、午後の長征に備え短い休息を取っていた時だった。
最初に危険を察知したのは、
レーダーヴァリーだった。
「何か、来るよ。とてもおっきい…みんな気をつけて!まっすぐ向かってる!」
「先ほどから遠くでチラチラ見えてた奴らしかないな。どれくらいで現れる?」
「数分も無いと思う。ごめんライノス、もう少し早く気付いていれば…」
「ヴァリーが気付かないってことは、誰も気付かないってことさ。気にするな」
「それより、早く態勢を整えないといけません」
ヴォルフの言葉に、全員が素早く反応した。荷物を共用のリアカーに押し込み、武器を
抜いて相手を待ち受ける。どのみち地の利は相手の方にあり、逃げたところですぐに追い
つかれてしまうだろう。ならば、ここで迎え撃った方が良い。
リアカーを中心とした陣形を整え、全員が覚悟を決めた、そのときだった。
ヴァリーが驚愕の表情を浮かべた。
「−−−来るッ!」
沼の表面から激しい水飛沫とともに九本の首が勢いよく飛び出し、次いで正面でも横幅
3メートルはある大きな胴体が岸に前足をかけた。
即座に、ヴォルフが怒号を上げる。
「ヴァリー、下がって!」
「いわれなくても!…こうも気配を消してくるなんて…ッ!」
その巨体に似合わず、水中におけるヒドラの隠密性は極めて高い。ヴァリーが居た後方
に現れたことが、その事実を如実に物語っていた。
戦いの火蓋が、切って落とされた。
弩<クロスボウ>を準備しながら急いでリアカーの方へ飛び退くヴァリー。
そのヴァリーをかばうように前に出るヴォルフ。
一番前に立ったつもりが、結果的に最もヒドラから遠い位置となったレイチェルは弓を
取り出し、矢を番える。
ライノスはハルバードを掲げ、側面からヒドラの隙をうかがう。
リミナシアは得物のグレイブを構え、ヴォルフの援護に回る。
そして、ローザは、勇壮な戦いの歌を歌いだした。
ローザは歌いながら戦うのである。また、一日に一度しか使えない彼女の“素質”も、
こうして歌いながら発動するのである。
九本の首が蠢き、ヒドラがまっすぐリアカーを目指して動き出した。
立ちふさがるヴォルフやリミナシアに首が一斉に襲い掛かる。噛み付く者、巻きついて
動きを封じようとする者、障害を無視しリアカーに積んである食料ばかり注視する者。
応戦するヴォルフはリアカーに向けて伸ばされた首を一本斬り落としたが、首の傷口は
即座に塞がり、激しく泡を吹き出しながら新しい首を形成しようと再生を始めた。
丁々発止、激しい攻防の内にヴォルフやリミナシアが手傷を負い、ヒドラの突進を受け
て危険に陥る。ヴァリーやレイチェルが矢を飛ばして援護するが、それでも魔獣の勢いは
止まるところを知らない。
しかし、ヒドラの攻撃がいよいよ激しさを増し、前衛危うしとなったところで、ローザ
の歌が一層の激しさを増し、一撃必殺の音波攻撃「アイドルヴォイス」が発動した!
凝縮された音波が衝撃波となり、ヒドラの身体に激しく打ちつけられる!
凄まじい振動は肉を貫通し、骨を砕く。
ヒドラの胴体が力なく崩れ落ちた。
「今だよ!」
激しい疲労に襲われながらも声を張り上げたローザの声に応じ、ライノスがハルバード
をヒドラの肉体に深々と沈める。
その巨躯が、ぴくりと震え、そして動かなくなった。
しかし、それでも九本の首は執拗に攻撃を続けた。まさに恐るべき生命力である。
ヴォルフの両手剣が鮮血の斬舞を演じ、ライノスやリミナシアの長柄武器が鮮やかな弧
を描きながら断ち切り、ローザのモーニングスターが鈍い音を出しながら骨を砕き、叩き
潰す。こうして九本の首全てが動かなくなるまで、彼らは戦い続けたのだった。
その後、ヴァリーが治癒の術で傷ついた者を癒し、一行はヒドラの屍を後にした。
そして、日没。
一行が野営の準備に取り掛かろうとしていた、そのときである。
「まだちょっと距離あるけど…また、何か来るよ。さっきのより、おっきい」
「ヴァリーしゃま、驚かさないで下さいなの」
「これが冗談に聞こえるか、馬鹿犬」
「ぁぅ…怖いの…」
「とにかく、ここを離れた方がいいね。この沼地はきっと、奴らがうようよいるに違い
ないわ。事前に知っていれば…」
「ローザ殿の言う通りですな。無用な危険は避けるべきかと」
「ヴォルフ殿がいたずらに名誉を求めて無謀な戦いを挑む、物語に出てくるような騎士
でなくて助かります」
「ふむ。物語とは得てして暗愚を戒めるもの。無用な戦いを避けるのは、寸毫たりとも
名誉を損なうことでは無いのですぞ、ライノス殿。猪突猛進は騎士の誉れではなく、恥ず
べきこと。それがあなたの騎士に対する認識ならば、改めなければなりません」
「…これは失礼した。やはり書物と実物とでは、違うということですね」
「変だなぁ、私の知ってる騎士様って頭悪そうなのが多いんだけど」
「レイチェル殿!?…ま、まぁいい、とにかく今は逃げましょう」
こうして一行は夜通しヒドラの影を恐れながら沼地を抜ける道を探すのだった。
<DAY2>
「よかった、ちょっとでも逃げるのが遅れたら、今頃あいつとダンスを踊ってるよ」
ローザが血の気の引いた表情で後方を指し示した。
そこには、前日戦ったものより一回り巨大なヒドラのシルエットがあった。
「あんなのと踊ったら、服が汚れちゃうよ…もう汚れてるけど。あ〜あ、コレ、落ちる
のかなぁ。お気に入りだったのにぃ」
レイチェルがため息をついた。
こうして一行は腐臭の酷い沼地をゆっくりと歩き続け、日没時、遂に緑が生い茂る河辺
の草地に出ることが出来たのだった。
ヒドラの生息地から出られたことで、一行はいくばくか気持ちが楽になったように感じ
られた。しかし、リミナシアは酷い不眠症に悩まされ、一睡も出来なかった。
果たしてそれは、隣の二人用テントから漏れるように聞こえる嬌声のせいだろうか。
「うふふ、リリィ…」
「らめぇ、お姉様ぁ」
「私も混ぜて→(*=ω=)」
それとも、レイチェルの不気味な寝言のせいだろうか。
「じゅるじゅる、あの服も綺麗、この服も綺麗、エンスウェさ゛ぁん、レイチェルもう
食べられないよぉ〜」
…!?
交代で見張りに立つライノスとヴォルフは、一体何を思うのだろうか。
どちらも、寝ているときは凄まじいイビキをあげ、リミナシアの耳朶を休ませない。
「くぅぅ〜ん…眠れないの…」
<DAY3>
結局一晩中寝られなかったリミナシアはずり落ちそうになる瞼をこすりながら、必死に
仲間たちの後を付いていくほか無かった。
一行は河沿いの岩場より少し内陸に上がった草地を進んでいた。ヒドラの恐怖を避ける
ため、暫く水辺は歩きたくなかったのだろうか。
右手にはドレンの河が滔々と流れ、その向こう側には雪冠山スネム・ゼヴァルと周囲の
山々がその雄姿を堂々と見せていた。左手には腐竜がもたらした死と腐敗の領域が続き、
一行が南下を続けると、黒々とした不気味な領域は緩やかに起伏する丘陵地帯とその上に
生い茂る広葉樹林の向こう側へ消えて行った。大河が刻々と大地に穿った、幅数キロにも
及ぶ広い谷間の荒々しくも美しい自然が一行の視界を満たしていた。
(GM注:雪冠山、英語でスノウ・キャップ、エルフ語でスネム・ゼヴァル。フルで表現
する場合はマウント=スノウ・キャップ、即ちレラクス=スネム・ゼヴァルと呼称する)
と、情景描写だけエピックファンタジー風を心掛けたとて、ストーリーテラーとしての
おちゃらけぶりはもはや隠しようも無いのだが orz
…一行がこうして南進を続けていた、その道中。
彼らは進路を狼の一家に遮られた。
大人が二匹、その後ろに隠れるように、子供が三匹。
「リミナシア、出番だぞ」
「ぁぃ、ヴァリーしゃま」
リミナシアが瞬時に子犬ほどの大きさの小さな狼に変化した。瞬時に、目の前の狼達の
思念が言語となって理解出来るようになった。
<お前、まるで飼い犬のようだな。子供とはいえ、狼の誇りはどうした>
<お願い、ここを通して欲しいの。ご主人しゃまたちは何もしないの>
<許さん。ここは我が一家の縄張りだ。早々に出て行け>
<縄張りを荒らすつもりは無いの、通してくれるだけでいいの〜>
明らかに、交渉は上手く行ってなかった。じりじりと圧力をかける親狼。
リミナシアの思念が、仲間たちの脳裏に響いた。
「う〜駄目みたいですぅ」
「使えないな、雌犬。これはお仕置きだな」
「お仕置きお仕置き〜♪」
「うっう〜、ヴァリーしゃまにレイチェルしゃままでぇ…」
ヴォルフが剣を抜いた。
「お仕置きは後です。追い払いましょう」
しかし、ライノスは子狼を無垢な存在として、傷つけることになるのをためらった。
「傷つけるわけには…火か何かで追い払わないか?」
ローザがその意見に同意した。
「たいまつを…!」
しかし、事態は思わぬ方向に進展した。
<ふむ…通してやらぬでもない。ただし…ハァハァ>
<通してくれるの〜?>
<俺様の子種を注ぎ込んだらな!>
突如欲情した父狼がリミナシアに襲い掛かった!
<ひゃぃぃぃぃぃぃ〜ん!?>
<大人しくしないか…はふはふ>
子犬ほどの体格しかないリミナシアはたちまち組み伏せられた!しかし、それでも後背
を取られまいと必死に抵抗を続ける。だが、組み敷かれて腹を見せている様子は自然界の
法則からすれば、既に屈服を示しているのと同等だった。
<はふはふ、愛い奴じゃのぅ、よいではないか、よいではないかぁ〜>
<や゛〜め゛〜て゛〜な゛〜の゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛〜!>
しかし、そこへ母狼や子狼が雪崩れ込んだ。
<アンタ!こんな子供に…この変態ロ○コンがッ!えぇい小娘が、ウチの旦那をかどわ
かしおって…許さないよ!>
<がうがう、お父さんを返せ〜!>
<ちがうのぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜!?>
<こら、ル○サ、メル○ン、リ○カ、危ない!さがりなさい!>
<がうがう、でもでもお母様、お父様を守らなきゃ!>
<ウチの旦那は、ウチが正気に戻しちゃるぅぅぅぅ!>
それは、傍から見れば、リミナシアと狼の一家が打ち解けてじゃれあっているようにも
見えなくはなかった。少なくとも、彼女の仲間からはそう見えたのかも知れない。
「なんだ、通っていいのか?それじゃあリミたん、先行くよ」
…否、やはり、わざとであろう。
「ぎゃん!ぎゃんぎゃん!<ライノスしゃま、それは無いですなのぉ〜!>」
そんなリミナシアの思念を聞いてか聞かざるか、一行は彼女を置いて場を去ろうとして
いた。殿のヴァリーがあられもない姿のリミナシアを眺め、ニヤリと笑った。
「これで立派なお母さんになれるね、おめでとう、雌犬」
<ひゃぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜ん!?>
奴隷階級のアランジファロッド・オルファスには人としての権利が無い。
その事実を、リミナシアは改めて骨身に染みさせたのであった。
そして、旅立ちの前に<リミたん狼だから負けないの>と誓ったことの滑稽さを、同じ
狼からの甘噛み攻撃を受ける最中、今更ながら噛み締めるのだった。
<DAY4>
「くぅぅぅぅ〜ん…ぐすっ…ひっく…えぐっ…リミたんは穢れてしまいましたなの」
「奴隷の癖して、カマトトぶってんじゃないよ。そもそも、そういう運命を受け入れる
のが、自分たち奴隷階級の役目でしょうに」
「ふぇぇぇぇ〜ん、なのぉぉぉぉぉ」
「まったく、結局無事だってのに、何泣いてんだか。あの根性なしの父狼、相方に追い
払われたじゃないか。大したかかぁ天下だよったく…仕方ない、今夜は私がた〜っぷりと
可愛がってやんよ、め・す・い・ぬ♪」
「う゛ッ…ヴァリーの…その…とても…おっきいなの。痛いからヤなのぉ〜」
「あらぁ、リミたんを可愛がるの?私も混ざってよろしいかしら?」
「ローザさんなら大歓迎ですよ〜ぅ(*=ω=)」
「びゃあ゛ぁ゛゛ぁやめ゛てぇぇぇぇぇぇ!」
「あーあー、そういうのは夜にしてもらえないかなぁ。って、夜ならいいのかよ?」
休憩時間、周辺の見回りから戻ったライノスの自問自答が青空に吸い込まれていった、
まさにそのとき。
「むっ、昨日の一家みたいですね」
ヴォルフが、忍び寄る五匹の狼を指し示した。
「…敵意は無いみたいなの」
「リミたん、変身してなくてもわかるの?あらぁ、偉いねぇ。後でお姉さんがご褒美に
可愛がってあげるねぇ」
「ううっ、ローザしゃま…目が本気なの…」
「また昨日みたいにリミたんが食い止めればいいじゃない」
「レイチェルしゃま、それは勘弁なのぉ!」
「でも、なんだか積荷の食料を狙ってるみたいだね…そうだ!ほぅら、餌だよぉ〜」
レイチェルは携帯食を掴むと、無造作に狼達の前に振りまいた。
レイチェルは菜食主義で、その携帯食には肉が混ざっていなかったが、狼達は不思議と
それに喜んでありついた。
「餌付けしている場合かー!」
「でもライノス、この子たち可愛いよ?」
そう言うと、レイチェルは一匹の子狼に近付き、突然抱き上げた!
「ほぅら、よ〜しよしよし…いい子ですね〜」
それを、何もせず見つめる親狼たち。
GMが、その場のノリで狼に狼らしくない挙動をさせたことを、後からちょっぴり後悔
したのは言うまでもない。くそっ、狼っちゅぅモンはもっと恐ろしい生き物だってのに。
ああでも、面白かったから別にいいかw
「…今のうちに逃げましょう」
「ヴォルフ…は〜い、しょうがないなぁ」
レイチェルは少し未練の残る表情で、走り出したリアカーへと軽やかに飛び乗った。
「重っ!」
「ライノス、し、失礼なー!」
<DAY5>
雪冠山スネム・ゼヴァルは遥か後方に去り、左手の丘陵地帯は鋭い曲線を描いて地平線
を埋め尽くした。一行は平野地帯を抜けようとしていたのだ。
「明日には、あの丘陵地帯を横切らなければならないな」
ライノスが言った。そして、後ろを振り返る。
「それにしても、この狼たちは一体全体、どうしてついてくるんだろうな」
リミナシアは知っていた。
父狼が、好奇の混じった視線で自分を見つめていたことを。
恐らく、狼に変身した途端、すぐまた襲い掛かってくるだろう。
彼女は、敢えてその事実を口に出さなかった。
だが、ずっとニヤつきながら父狼とリミナシアを交互に見るヴァリーの視線が、非常に
気になっていた。一体何を期待しているのだろうか。
こうして冒険の五日目が夕暮れ時を迎えようとしていた頃、縄張りの外に出たためか、
奇妙なエスコートは、静かに一行から離れて行った。
ただ一匹、父狼だけが未練がましく時々立ち止まっては後ろを振り返り、そして母狼に
引っ張られるように遅々と遠ざかっていくのだった。
<DAY6>
一行は丘陵地帯に入った。勾配は全体として緩やかだが、入り組んでおり、野伏を帯同
していなければ同じ場所をぐるぐる回ったりして道に迷っていたかもしれない。
事実、上々下々の繰り返しは確実に一行の体力を蝕み、一見似たような地形を堂々巡り
しているかのような錯覚を覚える者もいた。しかし、彼らはヴァリーに全幅の信頼を置い
ていたため、疑問を口にする者はいなかった。
この丘陵地帯は、今や腐竜高原と呼ばれているロイス高原へ至る、西の玄関口だった。
歩を進めるうちに、一行は自分達がかなりの高度まで登っていることに気付いた。時折、
突如として一歩先に切り立った崖に挟まれた谷が口を開けることも珍しくなく、ヴァリー
も一層の慎重さを以って進むようになっていた。
ヴァリーは仲間たちの信頼に応えていた。その的確な知識と技量に導かれ、彼らは着実
に丘陵地帯を抜けようとしていた。
こうして再び夕暮れ時が迫ろうとしていた頃、一行は周囲の草木が絶え、岩だらけの地
へ踏み込んだことに気付いた。
「おかしい」
ふと、ヴァリーが呟き、立ち止まった。
「なになに、なにかいるの?」
一行の先頭を歩くレイチェルが無邪気そうにきょろきょろと辺りを見回しながら更に歩
を進めようとしたが、ライノスがそれを制止する。
「レイチェル、待て。
レーダーヴァリーが立ち止まってるのに、ほいほい先へと進むん
じゃない。さっきも危うく崖から落ちそうになっただろ…ったく、遺跡のときみたいに、
また落ちて死にそうな思いをしたいのか」
「だ〜いじょうぶ、あのときだって、何ともなかったじゃん!」
「…落ちるのとは違う。周りを見て」
ヴァリーが静かに語った。普段は捉えどころのない不思議な性格で知られる彼女(?)
だが、任務に対する姿勢は真摯で、こういう時にヴァリーが発する言葉というのは、常に
重く受け止められていた。
一行は、息を潜めて辺りを見回した。
「草木の声が聞こえないの…でも、なぜなの、とても悲しい気持ちになるの」
「…それは当然ですよ、リミナシア殿」
ヴォルフが目を細めながら言った。
「この岩を見て下さい…まるで、生きた植物がそのまま岩と化したみたいだ」
「なんだい、この石…まるで小鳥がそのまま石になって落ちたみたいじゃないか」
ヴォルフに続き、ローザも、異変の正体に気付き始めた。
「みんな、あれを!」
ヴァリーが少し先の方を指し示した。
「…ッ!」
それは、人間…ドワーフの石像にしか見えなかった。
周囲を警戒しつつ、一行はその石像に近付いた。
それは、驚愕と恐怖が入り混じった表情を浮かべた冒険者風のドワーフに見えた。
今にも飛び出して叫びをあげそうな様子は、まるで生きたまま石になったかのような、
非常に生々しい印象を与えるものだった。
「間違いない…」
ライノスが、呻くように呟いた。
「バジリスク…」
一瞬、周囲の空気が凍りつく。
「…ひぃっ!?」
「ローザ、どうした?」
「…あれ?あっ…わ、私…こんな時に“表”に出るなんて…怖い…お姉様…ぐすっ」
「あちゃぁ、ここでリリィさんが表になるのね」
ヴァリーが何やら悟ったような表情でこぼした。
それを聞いて、ライノスは納得したように大きく頷いた。
「おお、これが二重人格が入れ替わる瞬間か。極度の緊張で…なるほど興味深い」
「極度の快楽でも入れ替わるみたいだお(*=ω=)」
「こんなときに何を悠長な…皆さん、ここは一旦少し引き返しませんか?ここに留まる
のは危険です」
ヴォルフの提案に反対する者は一人も居なかった。
「ねぇ、バジリスクってなんなの〜?」
ただ一人、レイチェルが間延びした声を辺りにこだまさせ、一行の心拍数をあげるのに
貢献していた。
<石ヲ睨ム者>
バジリスク。
エルフ語でザシラン・ジェール(石を睨む者:stone gazer→dhasilan ller)
アイグリスでは、レイチェルのようなノーテンキな例外を除いて、この名前を知らない
冒険者は少ない。
睨み付けた者を瞬時に石化させる、恐ろしい魔獣だ。
しかし、石化の視線を持つ大トカゲであるということ以外にバジリスクについての知識
を有する者となると、そう多くない。
トサカオオトカゲ、という、全長三メートルにも達するトカゲが、アイグリスの各地に
生息している。鶏冠(トサカ)のような突起を頭部に生やしているのが特徴で、雑食性で
攻撃的、数匹から十数匹の群れを成し、人間に取って中々危険な種族だが、人里の近辺に
来ることはほとんど無い。
このトカゲが強い魔力磁場の影響を受けやすいという特徴を持っているという事実は、
魔獣の生態学や神秘学に詳しい者以外にはあまり知られていない。
彼らは継続的に強い魔力を浴び続けると、その生態を激変させ、完全に別の種族として
生まれ変わるのである。
数多くの冒険者に知られている、例えば火山の近くに巣くうサラマンドラ、毒の沼地に
潜むヴェノムリザードなどは、このトサカオオトカゲが変化した姿である。
そして、バジリスクとは、そうした変異種の中で最も危険な種族なのだ。
彼らは死と腐敗の魔力を受けてバジリスクとなる。そして、群れの中で最も早く変化を
遂げた者は、その石化の視線で他の個体を全て視殺し、単独の個体となるのだ。こうして
バジリスクは自らの領域を創り、唯一の生物として君臨する。古代言語を学ぶ者の中には
バジリスクという名が「王者」という意味を含むということを知る者もいる。
バジリスクは、死と腐敗の領域を石に還元することで生きる糧を得る、極めて魔法的な
生物である。即ち、彼らは無限に溢れ出る死と腐敗の魔力に対する抑止者でもあるのだ。
アンデッドの沸く墓場、伝染病によって全滅した都市国家、こうした場所にバジリスクは
流れ着く。有力な魔導師の死骸に近寄ったトサカオオトカゲが変異したという例も記録に
残っているという。古来ネクロマンサーが無限に勢力を拡大出来ないのは、実はその勢力
の大きさに比例してバジリスクが増えるからだとする説もある
<要出典>。ただし、腐敗
が支配する領域全てにバジリスクが必ず寄り付くとも限らず、実際、例えばナスターシャ
の領域周辺には未だにバジリスクが目撃されたという話は無いことから解るように、この
説は一般的に眉唾だとされている。
石化の視線を以って死と腐敗を食らい、灰色の王国に君臨する王として石を睨む者。
それが、バジリスクである。
<DAY7>
リリィの大盾が、光沢を放つまでに入念に磨き上げられた。
「じゃあ、私が行くね〜」
「レイチェル…本当に、危険性が解っているのか?」
ライノスが心配そうに声をかける。
「…本当に解っていて、それでもなお行くのなら、私、惚れてしまいますぅ」
リリィが大きな瞳に涙を溜めながら、遠慮がちに呟いた。
「それじゃあ、オペレーション・鏡音リン、いっくよぉ!」
「レイチェルさん、あのぅ、忍び足の魔法は?」
「……あると助かります」
「ああ…レイチェルさん、やっぱり…」
「その方が雰囲気出るもんね!ま、なんとかなるでしょー!」
「実はなんにもわかってないに一票」
ヴァリーが呟いた。
オペレーション・鏡音リン。
それは鏡のように磨きが得られた大盾をバジリスクに向かって掲げ、石化の視線を反射
して逆に相手を石化させるという、無謀な作戦である。
実際、バジリスクの視線を鏡で反射させて退治したという例は存在する。しかしそれは
昼行性のバジリスクが寝ている夜中に鏡の罠を仕掛けて、トサカオオトカゲが好物とする
鶏肉を餌におびき寄せるという手法が一般的である。
よしんば大盾がバジリスクの視線を反射出来たとしても、それを掲げて一人で正面から
近寄るのは愚策だと言う他ないだろう。しかし、この時点では、これが一行が取れる最良
の策だったというのも事実である。
…決死の役目を引き受けたレイチェルがずんずんと前進していく間、それを見守る一行
には一秒が数時間にも感じられたかも知れない。
しかし、盾を掲げ、暫く前進したレイチェルは、そこで不思議な光景を目にした。
そこには、ぴくりとも動かない、大きなトカゲの姿があった。
バジリスク、である。
だが、相手はレイチェルがいくら接近しても、全く動く気配を見せなかった。
レイチェルは、バジリスクの横に回りこんだ。
バジリスクの正面にある岩に、大きな鏡が立てかけてあったのを、彼女は見つけた。
バジリスクは、以前派遣された腐竜調査隊によって、既に退治されていたのだった。
鏡には、伝言とおぼしき紙切れが挟んであった。
「後から来る者のために、これを残しておく。他にもバジリスクは居る。好物の鶏肉を
使い、夜間、鏡で罠を張れば退治も可能だろう。腐竜調査隊、ジャレイア」
一行は複雑な気持ちを抱きながら、鏡を回収し、先へ進むのであった。
「ジャレイア殿は、バジリスクについては何も言いませんでしたぞ…」
ヴォルフの呟きが、晩夏の夕暮れに吸い込まれて行った。
<DAY8>
丘陵地帯、最後の岩場を抜けた先は、腐臭の酷い、広大な沼地だった。
その中心部に、大きな山が鎮座ましましていた。
そして、沼地を蠢く影は、一行の士気を直撃していた。
「また、奴らか…」
ライノスが吐き捨てるように呟いた。
腐敗の沼地は、ヒドラの生息地だった。
「くぅぅぅん…怖いの…」
「でも、進まなければ…」
怯えるリミナシアに対し、弱々しくはあったが、リリィが決然と言った。
「ん、偉いね!私も頑張るからね(*=ω=)」
気丈に言い放ったヴァリー。
しかし、無事に山へたどり着きたいという願いは、敢えなく打ち砕かれた。
それは山が視界一杯に広がるか否かというところで日が暮れ、野営中の一行がすっかり
寝静まった時だった。
六人用のテントの入り口にリアカーを置き、その上でライノスが見張りをしていた。
そのすぐ目の前に、巨大な影が突如浮かんだかと思うと、次の瞬間、耳をつんざく轟音
と激しい水飛沫と共に、ヒドラが襲撃をかけてきたのだ!
奇襲!
ライノスは警告の叫びを上げながらリアカーとヒドラとの間に立ちはだかった。
この時ばかりは、リミナシアの不眠症が一行を助けたとも言える。
彼女は即座に反応し、一行を起こしながらもグレイブを引っつかみ、表に出た。
「…ッ!?やはり、こうした危機には私が出なきゃね」
ここでリリィの精神を抑えたローザが、嬉々として歌いながらモーニングスター片手に
飛び出した。レイチェルやヴァリーも銘々の得物を持って後に続いた。
急いだとはいえ、完全武装に多少時間のかかるヴォルフは最後にテントを出た。そこで
彼が目に飛び込んだのは、明らかにリアカーの食料を狙っている貪欲なヒドラの巨躯。
既に一体のヒドラを屠って来た一行の動きに迷いは無かった。
彼らはヒドラの胴体を集中的に狙った。
このヒドラはドレン近郊で彼らを襲ったものより一回り強く、アイドルヴォイスの直撃
を食らっても動じることなく暴れ続けたが、レイチェルまでもがヒドラの背に登って剣を
突き立てるに至り、遂に力なく斃れたのであった。
そして、残った首も、ライノスが身体を巻きつけられて脳を狙う必殺の一撃に危うし、
という場面もあったものの、一行によって次々と屠られて行った。
ここに至り、一行は傷つき、疲れ果ててはいたが、犠牲者を一人も出していないことに
安堵を見せるのだった。
「さぁおいで、ヴァリーが治してあげるお」
ヴァリーの<治癒>が傷ついた仲間を癒していく。
しかし、何故かリミナシアに対してだけは、利きが悪かった。
「みんなしてリミたんをいじめるの、ひどいの〜」
「日頃雌犬がどう思われているかの裏返しさね(;=ω=)」
「ひゃぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜ん…」
<DAY9>
山の麓にたどり着くまで、一行は慎重に慎重を重ねた。
「もしかしたら」
ライノスは出発前に呟いていた。
「以前の調査団は、あの魔獣の群れに囲まれて全滅したのかも知れない。自分たちとて
数匹同時に襲われたら、ひとたまりもないからな」
一行は何時襲撃されるか判らない極度の緊張の中、時々すぐ近くにまで寄ってくる魔獣
の陰にハッとしながらも、しかし、遂には無事腐竜が居ると思われる山にまでたどり着く
ことが出来たのだった。
山は、登り易かった。
中腹あたりに、巨大な何かに穿たれたかのような横穴がぽっかりと開いていた。
何かが引きずられたかのような痕跡が、穴の奥まで続いていた。
「見て」
ヴァリーが地面を指し示す。
そこには、人間のものと思しき足跡がくっきりと残されていた。
一行は緊張した面持ちで穴の奥を覗き込んだ。
しかし、何も見えない。
「行くしかないですね」
ヴォルフが、押し殺した息の下で囁くように言った。
こうして、一行は死が待ち構えているかも知れない場所へ踏み込んで行った。
<友>
横穴にはところどころ落石があり、一行はそれを盾にしながら少しずつ前進した。
暫く歩くと、大きな吹き抜けの明るい空間が開く。
そこに、腐竜バスラが佇んでいた。
それは、まるで腐肉の塊だった。異臭を放つ醜悪な肉塊、その不恰好な姿に、辛うじて
頭部や尾と判るような構造が見られた。
そして一行と竜との間に、一人の男がいた。
背は平均的なヒトのそれだったが、体格はがっしりとしていた。
大きな鎚鉾<モーニングスター・スピア>を肩に掛け、悠然と竜の前に歩を進める。
ここでライノスは師匠から買い求めた<怪力>のエリクサーを飲んだ。
念のため、である。
しかし、効果は思ったほどではなかった。
「師匠はいい人だなぁ」
そう喋ったのを、ライノスは頭なのかで反芻していた。
結局、一行は固唾を飲んで成り行きを見守るしかなかった。
男は突然、鎚鉾を地面に突き刺すと、地面に腰を下ろしてあぐらをかいた。
そして、声を張り上げた。
「…寝ているのか?それとも、寝ているフリをしているだけか?」
暫くして、頭部と思しき肉塊が鈍然と動き、真紅の輝きを放つ目が覗いた。
くぐもった声が、辺りに響いた。
「ドラゴンというのは、完全に寝ていることはない。亜種のまがいものなら別だがな。
しかし…数百年、数千年…久しぶりだな。友よ」
男が軽く笑った。
「数千、は無いぞ。我が友、バスラよ」
「あれからどのくらい経った?我の封印は一体何ゆえ解けてたのだ?ケイジーは?」
「ケイジーなら、ディルツとジィが。今では暗黒竜ジィ、だ。互いに封印したのだ」
それを聞いたライノスの脳裏に、ふと竜王教の神殿で見た資料が蘇る。
腐竜バスラ、雷竜ディルツ、土竜ドーラ。彼らと戦った千年竜王ケイジー。そして最後
に現れた暗黒竜ジィが千年竜王と互いに封印しあう。
だが、目の前で行われている会話は、その資料の記述と合わないような気がした。
「…滅ぼせなんだか。だが、封印出来ただけでも僥倖というものか。情けない」
「ケイジー復活を望む者がいる。アンタの封印は、彼らによって弱められた。そして、
不幸な事故で解き放たれてしまったのだ。そのときのアンタの暴れっぷりと来たら、酷い
モンだったよ。街を一つ潰した、な」
「混乱していた。怒りに身を任せてしまった。我はどうすれば良い」
「ははっ…ドラゴンが、ヒトにそれを尋ねるかよ」
果たして本当にヒトなのか?と、ヴォルフは思った。
「ヒトではなかろう」
竜の言葉に、ヴァリーが思わず頷いた。熟練の冒険者六人を以ってようやく突破した、
あの腐敗の領域。それを単身で乗り越えられるなど、とても尋常な所業ではない。
「…ははっ、確かにな。俺がヒトなら、こう言うだろう。今でもアンタが存在している
お陰で、アンタの磁場に引き寄せられた魔物がヒトの町を襲っている。だから、アンタは
滅びるべきだとな」
友と呼ぶ割に、過激な発言。この男は、竜と戦いに来たのか?
一行は思わず身構えた。
しかし、竜は嘆息とも取れる、沈むような音を漏らした。
「我自身は人間に害意は無い言うに、な。憎きはケイジーよ…」
竜はそう言うと、おもむろに男の背後に視線を向けた。
「ところで、友よ、お前の後ろにいる鼠どもは、連れ…ではなさそうだが?」
竜は、一行の存在に気付いていたのだ!
ほぅ、と男は頷き、振り向いて言った。
「誰か居たのか。隠れてねぇで出て来いよ。最強の嗅覚を持つドラゴンを相手に隠れて
いられるとでも思っていたか?」
決断の時が、一行に迫った!
<邂逅>
ライノスとヴォルフが、おずおずと出ようとした。
その姿を認め、男は「何者なんだ?」と問いかけた。
それに対し、最も速く行動したのは、レイチェルだった。
なんと、リアカーを引っ張り出し、その上に乗って大見得を切ったのだ!
「冒険者ッでぇ〜〜〜〜〜すぅ!」
竜は戸惑いの視線を向けた。
しかし、男は腹を抱えて笑い出した!
「こりゃ傑作だ!いいねぇ、俺気に入っちゃったよ!」
どうやら、レイチェルの突飛な行動は、男の笑いのツボにクリティカルしたようだ!
こうして、意外な形で、一行は多くを学ぶこととなった。
<不死身のゼノン>
「俺は不死身のゼノン。悠久の時を生き、魂をうつしよに縛られる者」
侵入者である一行が自らの目的を明かすと、男はこう名乗った。
ゼノンは、ドレンの悲劇は竜の封印が強引に解かれ、腐竜が戸惑いと怒りのうちに意識
せずして暴れだしたためであると語り、そして腐竜バスラは自ら人間に対する害意は無い
のだと改めて語った。
普通、竜というのは宝物を溜め込み、生き物の肉を食らうものである。
しかし、この竜はそうしたものを欲しがらず、ただ「魔力が欲しい」と語った。
そこでヴァリーが自らのパワーストーンを差し出すと、竜は喜んでそれを飲み込んだ。
そして、微々たる魔力しか供給されなかったにせよ、竜はそれを最上級の礼儀と見做し、
一行に心を開いた。
竜はヴァリーのパワーストーンがその一個のみであったことを見抜いていたのだ。
(GM注:この行為は、GM的にはレイチェルの自殺志願wと同じくらいMVPでした)
…そこで一行は、長らく疑問に思っていたことを尋ねた。
「千年竜王ケイジーとは何者なのですか?古の時代、竜の争いというのは一体如何なる
ものだったのでしょうか?」
ライノスの問いかけに、竜は頷いた。
「千年竜王か…ふん、おこがましい名を…よかろう、希望するなら、昔話を語ろうぞ。
多少長くなるが…覚悟するがいいぞ」
こうして、竜は少しずつ過去の出来事を語り始めた。
<伝説>
現在レナーディアと呼ばれる地域の遥か東方に、マニマニと呼ばれる霊峰があった。
この山は四体の竜によって守護され、また竜もこの聖域から流れ出るマナによって力を
得た。北方を守る黒き氷竜ジィを筆頭として、東方の雷竜ディルツ、南方の聖竜ドーラ、
そして西方の炎竜バスラ。
彼らは長きに渡って、マニマニ山と中心とする一帯に大自然が導くままの秩序と安定を
もたらしてきた。
パイネー、というアンギスの女魔導師がいた。彼女は霊峰マニマニの魔力を欲し、共に
旅をしていたヒトの三姉妹と共にその頂を目指した。三姉妹は亡国の姫君で、パイネーの
協力を仰ぎ、王国の再興を目指していた。パイネーは霊峰マニマニの頂で儀式を行えば、
三姉妹に大いなる力が宿ると語った。
しかし、これは偽りだった。
彼女達は守護竜の監視を掻い潜り、霊峰マニマニの頂に座して、儀式を行うことに成功
した。しかし、大いなる力を得たのは禁術を以って三姉妹を己の中に取り込んだパイネー
だった。彼女は黄金に輝く三つ首竜ケイジーとして変貌を遂げた。
霊峰マニマニの力を完全に枯渇するまで吸い上げたその莫大な力は、守護竜を凌駕して
いた。激しい戦いの末、守護竜は無残な敗北を遂げた。
聖竜ドーラは翼をもがれ、土竜となり果てた。炎竜バスラも力を使い果たし、ケイジー
の猛攻により致命傷を受けた。しかし、彼らも強大な力を誇る守護竜。二体は互いに融合
することで更なる力を引き出そうとした。だが、秘術を行う際にケイジーの追撃を受け、
融合は不完全に終わった。二体は大地を腐らせ、死者の王として君臨する負の磁場を身に
まとう腐竜となった。その際、バスラの精神がドーラに勝り、竜はバスラを名乗った。
腐竜バスラはケイジーに挑んだが、あえなく敗れてしまった。
不完全な融合は不完全な力しか引き出せなかったのだ。
バスラは西へ西へと逃れ、不死身のゼノン、ドワーフの勇者パズー、魔導師ジークなど
当時の協力者達の力を借り、自らを封印して傷を癒しながら力を蓄えることとした。
ケイジーや他の守護竜の運命については、バスラは知らない。
<ゼノンによる補足>
残された雷竜ディルツと氷竜ジィもケイジーに追い詰められていたが、バスラやドーラ
と同様に融合を試み、これに成功、暗黒竜ジィを名乗りケイジーと戦い続けた。そして、
遂にはケイジーの封印に成功するが、自らも相打ちのような形で封印された。
こうして歴史は伝説となり、伝説は神話として人々の記憶から薄れて行った、、、
<ゼノンの依頼>
「それでは」
竜とゼノンの話を聞き終えたライノスが言った。
「竜王教の語る伝説は、事実と異なるではないか!」
「竜王教、か」
ゼノンが言った。
「ずいぶん自分たちに都合が良いよう事実を捻じ曲げてるみたいだな。ケイジーの復活
を目論む連中がやりそうなことよ」
「竜王教について、何かご存知なのですか?」
「確たるものは、そこまでは」
ヴォルフの質問に対し、ゼノンの答えは曖昧だった。
「ともあれ、冒険者数人に簡単に拠点を潰されるような彼らがケイジーの復活を本当に
成し遂げられるとは思っていない」
「知っていたのですか」
「ライノス、だったな。俺は広く歩き、多くを見聞する者なのだ。だが、それでも下手
な断定は出来ないものだ。もしあの教団がケイジー復活をたくらむ更に大きな力を背後に
付けているとしたら?そうなると、事態はもう少し厄介となる。ともあれ、今の段階では
判らないことの方が多すぎる、な。ここにこうしてバスラが地上に出てきたこと自体が、
非常に不思議なのだから」
「…なんにせよ、ケイジー復活は断固として阻止せねばならない、な」
ライノスは決意を秘めた表情で呟いた。
「我々にできることはないでしょうか?」
ヴォルフが尋ねた。
「ない」と竜が言うと同時に、ゼノンが「ある」と語った。
驚いて凝視してくる竜を尻目にゼノンが続けた言葉、それを聞いた一行は仰天した。
「ナスターシャ、というネクロマンサーを知っているか」
ライノスが吹き出して、ヴォルフが目を白黒させた。ローザは複雑な表情で頭を掻き、
リミナシアはぶつぶつと何かを小さく呟いた。ヴァリーが明後日の方向を向いて遠い目を
して、レイチェルが嬉しそうに「わは〜」と両手を水平に伸ばしてくるくる回った。
ゼノンはそれを見て、楽しそうに笑った。
「どうやら、大変親しいようだな。ああ、そういえば、聞いたなぁ。近頃レナーディア
に愉快な冒険者達が増えてきた、と」
「愉快…?と、ともかく、ナスターシャ様でしたら、存じておりますとも」
ヴォルフがどうにか言葉を返した。
「ならば、会って伝えて欲しい。どうかここまでご足労願えないだろうか、と」
「お言葉ですが、ナスターシャ様一人にあの危険な領域を渡らせるなど…」
「様、とな?ははぁ〜ん、その鎧の紋章…シェリー王家ゆかりの者か。ならば尚更この
伝言を伝えて欲しい。シェリー王家に取って、非常に大事な事態だとな」
「…判りました。伝えます。ですが、それにしてもあの危険な領域を…」
「知らないのかな?東から来たら、割と安全だぞ?北や西、南の丘陵地帯には、危険な
バジリスクがうようよしているが、東の方の林など、散歩気分で来られる。沼地からは、
さすがにヒドラどもが巣くっているが…そこから先は、このゼノンが道案内をするよ」
「ゼノン殿、あなたは一体…」
「俺は不死身だ。遠くまで歩いて、多くを見た。そして、これからも見続ける。ただ、
それだけなのさ、ライノス」
そう言うと、ゼノンは少し寂しそうな表情をした。
<護送>
一行は竜の様子を魔法の筒で“撮影”し、暫し会話を交わすなどしたが、遂に山を去る
決心をした。すると、竜は驚くべき提案を出した。
「どれ…我が領域の境まで送ってやろう」
それを聞いて、ゼノンも言った。
「なら、俺も付いていくか。一人でここで待つってのも退屈だからな」
こうして、全長五十メートルの巨大な竜に護られながら、一行は沼地を安全とされる東
の方角へ進んで行った。
道中、竜の背中に乗っていたゼノンが呼びかけた。
「多少ぐちゃぐちゃするかも知れないが、乗ってみないか?」
これにはライノスが大喜びし、即座に腐肉の上によじ登った。また、ヴァリーも好奇心
に駆られて後に続いた。
「竜の背にのるなど、一生に一度あるかないか、否、普通は無いような体験だ。こんな
光栄、私は忘れない」
ライノスは感極まってそう漏らした。
だが、ヴァリーは耐え難い腐臭とまとわりつく腐肉の気色悪い感覚、そして絶えず揺れ
動く背中に酔ってしまった。
「う゛、、、ぎぼぢわりゅひ…」
そうしているうちにも、ヴォルフやローザ、レイチェル、リミナシアはリアカーを引き
ながら複雑な表情で時折竜の背の方を見上げるなどして、その横を歩くのであった。
<別れ>
腐竜の領域、東端の林。
ここで、竜とゼノンは一行と別れることとなった。
「ここから林を抜ければ、レナーディアの東の国境を守る関所へ出る。それじゃあ達者
でな。ナスターシャによろしく伝えて欲しい。それと…」
ゼノンがレイチェルと向かい合った。
「アンタ、良く見たら、あの奇妙な旅人が説明した姿と符合するなぁ」
「え゛ッ…ま、まさか…」
「甲冑を着込んだメイドなのだが、、、」
「アーアー、ナニモキコエナーイ」
「ははっ、わけありのようだな。何にせよ、ここでお別れだ。この先も幸運がみんなを
お守りしますように。良き風と共に、正しい道を歩まんことを」
「ならば、そちらも、豊かな大地が確かな歩みをもたらしますように。さらば」
「ふむ、騎士殿は礼儀をわきまえておられるな」
竜が満足そうに頷いた。
「だが、我が腐っている限り、豊かな大地を踏みしめることは、二度と無いだろう」
「いや、未来のことなど解らないものさ、友よ。それじゃあな。また会おう」
こうして彼らは別れを告げ、それぞれの道を歩みだした。
<ここは、お子様にはお勧め出来ません>
林を抜けると、そこは青々と茂る野原だった。この先に、レナーディアの関所があるの
だろう。しかし、一行はその日、この場所で野営をすることに決めた。
その晩、リミナシアはやはり不眠症で寝られなかった。
ふと、リアカーの方から水の音がして、彼女はテントの外に出た。
そこにはリアカーに積まれた水樽から水をたっぷり取り、それを頭から被るようにして
腐竜の背に乗った際の汚れを洗い落とす全裸のヴァリーの姿があった。
エルフ社会におけるヴァリーは本来、その肉体を以って快楽の奉仕を行う性奴だった。
それだけに、アランジファロッド・オルファスらしく14、5歳相応の外見とはいえ、
その肌はリミナシアが思わず見とれるほど艶かしい光沢を放ち、非の打ち所が無い、均整
の取れた女性的なプロポーション、年齢相応にいささか小ぶりではあるが形の美しい胸の
双丘など、多くの女性が嫉妬するほどの芸術的なまでに見事な肢体がそこにあった。
それが気持ちよさそうに水を浴びる姿、その微妙な仕草の連続と、蠱惑的な表情。飛び
散る水滴に月光が反射し、暗いシルエットをきらきらと包んでは消えていく。
その佇まいは、ただそれだけで身体の奥底から官能的な感覚を呼び覚ますような、瑞々
しく妖美な雰囲気をまとっていた。
「どうせリミたんは幼児体形なの…」
思わずついた溜め息が聞こえたのか、ヴァリーがリミナシアの方を向いた。
すると、本来あるべきでない物体が、リミナシアの視界に飛び込む。
リミナシアは思わず赤面して、顔を背けた。
ヴァリーは、半陰陽(ふたなり)である。
禍々しいまでに天を衝く力強い怒張。
ヴァリーが、奴隷の中でも最も卑しいと蔑まれる、性奴たる所以である。
暫く、ヴァリーは無表情でリミナシアを見つめた。
対して、リミナシアも無表情となり、ヴァリーを見つめ返した。
それは、長く奴隷である宿命を背負った二人が互いに向けた、理解の視線。森の生命の
円環が織り成す血の共鳴。美と叡智と罪を背負ったエルフ族の最下層が声に出さずに押し
殺す深淵の記憶と魂の慟哭。
ヴァリーの唇が、婉然と弧を描いた。
そして、軽く手招きをした。
リミナシアは微笑みを返し、首を振って立ち去った。
ヴァリーは突き出された自分の手を見つめた。
「カマトトぶってんじゃないよ、雌犬…か。私は別に…」
その表情は、しかし、優しかった。
…これでいいんだ、そうでもしないと中学生の時の癖でえr小説を書いちまうw
<ギスライ>
関所の兵士達は、腐竜の領域のある方角から歩き出た冒険者達の姿に驚愕した。
すぐにそれは賞賛のまなざしに変わる。
一行は関所で少量の補給を受け、北へ、城塞都市ギスライを目指した。
こうして一行はドレンから出て十三日目の昼、ギスライに到着した。
ギスライでは、以前ドレンであったような人攫い事件が多発し、調査依頼が出ていたの
だが、疲れ果てていた一行がその依頼を受けることは無かった。しかし、彼らは竜王教に
ついて知るところをギルドマスターに話し、警戒を促した。
彼らはギスライに二泊し、旅の疲れを取ることに努めた。
当然夜な夜なローザの泊まっている部屋からは相変わらず妖しい嬌声が響いたのだが、
それはまた別の話。
ああもう、お約束だから、書いちゃいますか。
「うふふ、リリィ…」
「らめぇ、お姉様ぁ」
「私も混ぜて→(*=ω=)」
<旅の終わり>
15日目にギスライを発った一行は紅街道を西進。
こうして彼らは18日目、遂に出発の地でもあるドレンにたどり着いたのだった。
彼らの帰還は非常に喜ばれ、暫くドレンでは彼らの話題で持ちきりだったと云う。
しかし、それを聞きつけた某甲冑メイドが本格的にあちらこちら探し回るようになり、
レイチェルは以前知り合ったエルフ商人のエンスウェと共に急いでギスライを目指し遁走
するのだが、それはまた別の話。
冒険者達に対する成功報酬には十万が上乗せされ、前金とあわせて一人三十万が支払わ
れることとなった。これは、彼らにとって七ヶ月余りの生活費相当であり、依頼の報酬と
しては破格だったが、東岸守備体長ミーナ・ベルザレスは「これでも本当は少ないよ」と
長く言い続けた。
こうして、一つの冒険が終わった。
しかし、それは新たなる冒険の序曲でもある。
だがひとまずここで幕として、冒険者達の勇気に賛辞を送りたい。
そして、運命が冒険者達を導くのなら。
…また、アイグリスでお会いしよう。
〜FIN〜
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データセクション
バジリスク
体力:15 瞬発:15 身体:15 瞬発移動力:5.4
敏捷:12 感覚:12 反応:12 継続移動力:3.375
知力: 3 精神:16 頭脳:10 基本致傷力
HP: 150 MP: − FP: − 振り:2D+1 突き:1D+1
よけ: 6 耐斬り:10 受動防御:1
うけ: − 耐刺し:10 大きさ:横1HEX、縦3HEX
とめ: − 耐叩き:10 重さ:150kg
その他(特性、攻撃手段、装備など)
石化視線、レベル16 噛み付き、切り/1D+1、レベル12
組み付き:反応即決 倒し:瞬発即決 押さえ込み:瞬発即決、体重+5ごとに+1修正
→振りほどき:瞬発即決 両手組み付き:ペナ−5 両手押さえ込み:ペナ−10
恐ろしい顔とトサカを持つ、体長3メートル、体重150kgのオオトカゲ。
睨み付けることで相手を石化する能力を持つ。バジリスクはあらゆる呪文に完全な耐性
を持つ。「睨み」を行うには、得物を見ることが出来る状態でないといけない。そして、
1ターン集中(視線が合っていた場合は集中不要)して呪文を発動するように技能判定を
行う(技能16)。得物までの距離1mごとに−1判定。判定に成功するとキャラクター
は瞬時に石化する。視線は大型盾で「止め」られるが、そうすると盾が石化して使えなく
なってしまう。
ヒドラ(標準サイズ)
体力:20 瞬発:20 身体:20 瞬発移動力:6.4
敏捷:12 感覚:12 反応:12 継続移動力:4
知力: 3 精神:16 頭脳:10 基本致傷力
HP: 300 MP: − FP: − 振り:3D+2 突き:2D−1
よけ: 6 耐斬り:30 受動防御:2
うけ: − 耐刺し:30 大きさ:横3HEX、縦4HEX
とめ: − 耐叩き:30 重さ:300kg
その他(特性、攻撃手段、装備など)
それぞれの頭(狙うには−4修正):受動防御1、防護点10、HP60
→ダメージ影響が他の頭や胴体に及ばない
水に漬かっていてもスピードが変わらない。
噛み付き、切り/2D−1、レベル12 尻尾、叩き/3D+2、レベル12
前脚キックまたは踏みつけ、叩き/3D+2、レベル12
組み付き:反応即決 倒し:瞬発即決 押さえ込み:瞬発即決、体重+5ごとに+1修正
→振りほどき:瞬発即決 両手組み付き:ペナ−5 両手押さえ込み:ペナ−10
→ヒドラの組付&踏付を食らうと鉄製までの鎧が破壊される(鋼製も11以上で破壊)
9つの頭と4本の脚、2本の尻尾を持つ爬虫類です。ヒドラは決して朦朧としたり気絶
したりしません。全ての頭が死ぬと本体も死にます。胴体を先に殺しても良いのですが、
この場合頭はしばらく活動を続けます(1時間ごとにHP−10)。死んだ頭は3ターン
で再生、7ターンから攻撃に使えるような大きさに戻ります。この間に傷口を炎で60点
のダメージを与えると再生を止めることが出来ます。
野生の狼
体力:10 瞬発:10 身体:10 瞬発移動力:10
敏捷:14 感覚:14 反応:14 継続移動力:5
知力: 4 精神:12 頭脳: 8 基本致傷力
HP: 120 MP: − FP: − 振り:1D 突き:1D−2
よけ: 7 耐斬り:10 受動防御:1
うけ: − 耐刺し:10 大きさ:1
とめ: − 耐叩き:10 重さ:50kg
その他(特性、攻撃手段、装備など)
噛み付き、切り/1D−2、レベル14
組み付き:反応即決 倒し:瞬発即決 押さえ込み:瞬発即決、体重+5ごとに+1修正
→振りほどき:瞬発即決 両手組み付き:ペナ−5 両手押さえ込み:ペナ−1
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あとがき。
ふぃ〜。
あのね。
正直、やりすぎたwwwwwww
でも、後悔はしてない。
やっぱり、俺も好きなんだねぇ。
しっかし書いてるとね、段々と、こう…。
レイチェル:伊織+美希
ローザ:ゼノグラ千早
リリィ:ゼノグラ雪歩
リミナシア:雪歩+美希
ヴァリー:えr同人のフタナリこなた(;=ω=)
…という風に思えてくるから不思議だねぇ(最低)www
あとがき、以上ッ!
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