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THE CHAMP 最終回「伝承」

レッスルエンジェルスサバイバー2 SS
THE CHAMP

第20回(最終回)
「伝承」


 ワン......ツー......
 ............スリー!
 スリーカウントが入り、決着を告げるゴングが鳴り響く。
 「勝者!“サバンナの黒豹”ディアナ・ライアル!遂に!
遂にソニック女王陥落!ソニックキャット、61回目の防衛
なりませんでした!防衛戦不敗伝説、ここに終止符!」
 アナウンサーが興奮状態でまくしたてる。
 遂に、ソニックがベルトを失う時が来た。
 ディアナとの死闘を制し、55回目の防衛を果たした試合
から1年が過ぎていた。この間、ソニックは更に5度の防衛
を果たしていた。しかしそれは、鬼気迫るソニックが薄氷を
渡るようなかつての勝ち方ではなく、どの試合も本来持ち前
の明るく楽しく激しいソニックらしいプロレスを展開しての
防衛成功であり、ソニック復活を印象付けるような勝ち方で
会場を沸かせていた。そんな中で、再び組まれたディアナの
ベルト挑戦。ソニックは最後まで健闘しながらも力及ばず、
遂に屈したのだった。
 防衛戦に相応しい、観客の心に残る、激しい試合だった。
 両者とも力尽きて、決着してからも暫く大の字となった。
 歓声と拍手の中、先に立ち上がったのはソニックだった。
 微笑みと共に、ディアナに手を差し伸べて立たせた。
 「ディアナ、おめでとう」
 「ミカさん…私…」
 破顔一笑、ソニックはディアナを抱きしめた。
 「これからは、ディアナがCHAMPだお!」
 大声での宣言に、怒涛のような歓声が沸いた。
 ディアナは真剣な表情で、それを受け止めた。
 「…はい!やっとミカさんを苦しみから解放出来ましタ。
ソフィアさんが言ってましタ。このベルトは、ミカさんなん
だって。この偉大なベルトを今度は私が、今後ずっと守って
行きまス。絶対負けません」
 ソニックは首を振った。
 「ううん、それは違うの」
 「…ミカさん?」
 「あたしね。もう解放されていたんだお。前回、ディアナ
との防衛戦で。あたし、あれから戦い方変わったお?」
 「…はい。変わったと言うより、良い意味で昔に戻ったと
感じていました。防衛戦の相手はみんな戸惑ってたみたいで
翻弄されていたようですが、あれはミカさんの作戦と思って
いました」
 「あたしそんな頭いいキャラじゃないお。違うの。あたし
純粋にね、プロレスが楽しいって、そんな風に心から思える
ようになったの。そのベルトのおかげでね」
 「どういうことですか?」
 「ベルトは守るものじゃないの。伝えるものなんだって、
それに気付いたの」
 「伝える、もの?」
 「ソフィアは、このベルトはあたしだって言ったの。でも
それも少し違うの。やっぱり、このベルトはソフィアなの。
そして、あたしでもあるの。更にこれからは、ディアナでも
あるのさね」
 「…このベルトは、私…?」
 「そう。あたしは最初、このベルトはソフィアが頑張った
証だから、このベルトはソフィアだから守ろうって思って、
必死になって、そしてとても苦しんだお。だけど本当は全然
見当違いのことをしていたの。ソフィアからあたしへ、また
あたしからディアナへ。ベルトは、未来に続く物語を伝えて
いくもので、防衛できたかどうかではなく、どう防衛して、
また、どう失ったか、またはどう獲ったか。そのストーリー
自体がベルトの価値なんだって、それに気付いたの。だから
勝っても、負けても、大事なのはそれに関わった人達が何を
伝えて、それを見た人達が何を感じたのかってことなの」
 「…ミカさん、私…」
 「だからディアナ」
 「はい」
 「このベルトの伝説をこれから紡ぐのは、ディアナさね。
しっかり、伝えて行くんだお」
 「…わかりましタ!」
 「出来れば、あたしよりもう少しハッピーなストーリーで
お願いしたいお」
 「…はい!しっかり頑張りまス!」
 「ディアナは真面目すぎるから心配だお」
 「もう、ミカさん人のこと言えないでス」
 それは勝者も敗者も笑いあう、女王交代劇だった。
 そして、それから。
 女王陥落後も、ソニックはリングに明るく楽しく激しい、
ソニック流プロレスを展開して行った。一方で、ディアナは
TWWAジュニアベルト奪取後もソニックをあくまでも目上
として扱い、そんな二人のタッグは華麗なファイトスタイル
でファンを魅了し、団体の人気を支え続けた。
 数年後に訪れる引退の日まで、ソニックは後々にまで語り
継がれるような名勝負を更に数多く演じ、名実ともに伝説の
女子レスラーとして引退後も人気者として様々な方面で活躍
するのだが、それはまた別のお話である。

〜おわり〜


ーーーーー

【予告】

 ひとつの物語が、ここに終結した。
 その背後に秘められていたものが、遂に公開される。

 おまけ:THE CHAMP あとがき
 どうぞ宜しくお願いします!

 …もうちょっとだけ、続くんじゃ。

ーーーーー

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THE CHAMP 第19回「解放」

レッスルエンジェルスサバイバー2 SS
THE CHAMP

第19回
「解放」


 「ワン!」
 会場全体が絶叫した。
 「ツー!」
 レフェリーが手を高く掲げる。
 このとき、観客の誰もが、その手が振り下ろされるまでの
時間を長く長く感じた。
 永遠にも思えた、須臾。
 そしてレフェリーの手が、マットを、叩いた!
 「スリーーーーー!!!」
 カンカンカン!と、鳴らされるゴング!
 試合が、終わった。
 「おおおおおおおおおおおおおおおおーーーーー!!!」
 足を踏み鳴らす者、手を叩いて喜ぶ者、脇目も振らずひた
すら絶叫する者、爆音と激震に揺れる会場。
 そして、勝利者が高らかにアナウンスされた。
 「勝者ッ!“音速ヒロイン”ソニックキャット!TWWA
ジュニアベルトの防衛回数は、驚天動地の55回目に到達!
一体この記録はどこまで続くのでしょうか!」
 「...モウイイヨ」
 ソフィアは、呟いた。そして、未だリング上で重なり合う
ようにして倒れているソニックとディアナに歩み寄った。
 二人は、肩で大きく息をしながら、ぐったりとしていた。
 いつしか会場に再び静寂が戻り、全員が、突然リング上に
上がったソフィアに視線を注いだ。
 「苦シカッタダロウ」
 そう言いながら、ソフィアは二人の腕を自分の両肩に巻き
つけて、同時に立たせた。
 「辛カッタダロウ」
 「...ソフィア」
 ようやく、ソニックの口から言葉が紡がれた。
 「私、約束を守ってるお。ソフィアを、ずっとずっと今日
まで守り続けてきたんだお。そして、これからも」
 その言葉を受けて、突然ディアナが「おおおお」と嗚咽を
漏らした。とめどなく涙が溢れた。
 「ごめんなさい。ごめんなさい。私、ミカさんを止められ
なかったでス...ミカさんを解放できなかった」
 「...ッ!イイカゲンニシロ!」
 ソフィアの目からも涙が流れていた。
 ソニックは、怪訝そうな表情を浮かべた。
 「ソフィア?まだまだ頑張るお。それがソフィアの...」
 「モウイイ!モウイインダヨ!」
 ソフィアは語気を強めた。
 「モウ、十分ナンダヨ!」
 ソフィアは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら言った。
 「オマエハ、CHAMPダ!オマエガCHAMPナンダ。
ワタシジャナインダ。ダカラ、モウイインダ」
 「だって、このベルトはソフィアなんだお。だから私は」
 「違ウヨ。サァディアナ、ソノベルトヲCHAMPノ腰ニ
巻クンダ」
 「...は、はい。ミカさん、これ、ミカさんのベルトでス」
 「...私の、ベルト?」
 「ソウサ。ソニック選手。ワタシジャナイ」
 「ソフィアさん、初めてミカさんをソニック選手と...!」
 「ソニック選手。コノベルトハ」
 ソフィアは、ソニックを抱き寄せた。
 「コノベルトハ、オマエナンダヨ」
 「...!」
 呆けたように口をぽかんと開いたソニックの目から、大粒
の涙がポロポロとこぼれ落ちた。
 「あ...ああああ...あーーーーーーーーーー」
 やがてソニックは立ち尽くしたまま、大観衆の見守る中、
ただ口を開けて子供のように泣いた。泣き続けた。そして、
ソフィアは優しくソニックとディアナをグッと引き寄せた。
 3人の抱擁。
 それはソニックが長年の呪縛から解放された瞬間だった。
 いつしか、拍手が3人を包んでいた。

ーーーーー

【次回予告】

 時は流れ、新たなる運命の瞬間が訪れる。
 次の世代、次の時代、時空を超え伝わっていくもの。

 最終回:THE CHAMP 第20回「伝承」
 どうぞ宜しくお願いします!

 …破顔一笑、ソニックはディアナを抱きしめた。

ーーーーー

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THE CHAMP 第18回「天使」

レッスルエンジェルスサバイバー2 SS
THE CHAMP

第18回
「天使」


 「ワン!」
 観衆は、レフェリーと共にカウントを叫んでいた。
 ソニックの大逆転劇だ。
 「ツー!」
 音速ヒロインの不敗伝説は続くのだ。
 あれだけ頭突きの乱打を喰らい、顎にも掌打を入れられた
ディアナにプラズマソニックボムを返せる筈が無いだろう。
 「ス……………ッ!!わああああああああああ!?」
 大観衆の絶叫、そして地面が怒涛の如く踏み鳴らされる。
 ディアナが、返したのだ。
 観客の誰もが戦慄し、そして興奮した。
 今まで、ジュニアヘビー級の選手でプラズマソニックボム
を返した選手は居なかった。
 流石に二人とも動けないだろうと、誰もが思った。
 現に、二人とも大の字のままピクリとも動かない。
 静寂。
 それをすぐに破る者が居た。
 「糞猫ォォォーーーーー!起キロ!起キロヨ!」
 リングサイドを叩きながら甲高いソフィアの絶叫が響く。
 ゆらり、とソニックが先に立ち上がった。
 「ソフィア」と、その口から小さく呟きが漏れた。
 「ぉ…ォォォオオオアアアアアーーーーーッ!」
 雄叫びとともにディアナも猛然と立ち上がった。そして、
エルボーを構えて突進した。
 特攻然と放たれた正面からの攻撃。
 それを、ソニックは寸前で身を屈めてかわした。
 踏鞴を踏むディアナの首に、ソニックの右腕が巻き付く。
同時に左手がディアナの片足を捕まえていた。
 反り投げの要領で持ち上げ、頂点で垂直落下させる。
 大技、フィッシャマンバスターが炸裂した。
 衝撃、それは却ってディアナの意識をより明瞭にした。
 (フォールが来る)
 そう思って身構えるディアナだったが、しかしフォールは
すぐには来なかった。
 「!?」
 ディアナはカッと目を見開いた。
 視界に、黄白色に光る天井のライトが映った。
 そこに、人影が光を遮るように割り込んだ。
 そこから、全てがスローモーションに見えた。
 人影は向かい合わせの状態から大きく優雅に舞い上がり、
空中で後方回転を加えながら、両腕を翼のように広げて空を
ゆったり舞うかのような姿勢で迫ってきた。
 コーナーポストから前方跳躍しながら後方に身体を一回転
させて胴体から身体を浴びせる流星のような美技。
 即ち、シューティングスタープレス。
 「de anjo(天使)」
 ディアナは、ふと呟いた。
 「綺麗」
 その瞬間、遠心力の加わった大きな衝撃がディアナの身体
を抜けて、リングを大きく揺るがした!
 ...フォール!

ーーーーー

【次回予告】

 永遠にも思えた、須臾、そして遂に決着の時。
 そして、勝利者が高らかにアナウンスされた。

 次回:THE CHAMP 第19回「解放」
 どうぞ宜しくお願いします!

 …ダカラ、モウイインダ。

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THE CHAMP 第17回「安堵」

レッスルエンジェルスサバイバー2 SS
THE CHAMP

第17回
「安堵」


 ワン…!
 レフェリーがカウントを始めた。
 「ソニック!立てーーーーーー!」
 観客席で、誰かが叫んだ。
 「ソニック!ソニック!ソニック!ソニック!」
 同時に、大「ソニック」コールが巻き起こった。
 ツー…!
 ここで、あの声がソニックの耳朶を打った。
 「糞猫!負ケルナト言ッタダロ!」
 ソニックの視界の片隅に、涙を流しながらリングサイドを
バンバン叩くソフィアの姿が映った。
 「ソフィア」
 …………スr…ッ!
 「うああああああああああああああああああ!!!!!」
 絶叫と共に、ソニックは身をよじった。
 ドラゴンスープレックスホールドが崩れた。二人はすぐに
転がるようにして距離を離し、ほぼ同時に立ち上がった。
 「あああああああああああああああああああ!!!!!」
 ソニックは絶叫を続けていた。右の掌底を構え、ディアナ
に向かって突撃した。普段のディアナであれば、十分躱せる
タイミングだった。しかしディアナは迫り来る掌ではなく、
ソニックの眼を見ていた。
 「ミカさん、まさか…」
 「ディアナァァァァァ!!!!!」
 吠えながらソニックが右腕を後ろに引いた。
 「…嗚呼、良かった」
 ディアナはソニックの眼から視線を離さないまま呟いた。
 (狂気では、無いでス)
 ディアナがそう考えたのと同時に、ソニックが掌底を振り
抜いた。それは、安堵の笑顔を浮かべたディアナの顎に吸い
込まれ、乾いた音を響かせた。
 脳を揺らされたディアナは、ゆっくりと、やや前のめりに
腰を折るようにしてソニックの胸に倒れ込んだ。
 ソニックは、ディアナの上から覆い被さるような形で腹部
に腕を回した。そして、そのまま両手をロックした。
 もはや誰もが知る、この態勢。
 ソニックは顔を上に向けて叫んだ。
 「いっくおーーーーーー!」
 「おおおおおおおおおお!」
 大歓声が応える。
 その歓声に後押しされて、ソニックはディアナを高く抱え
上げた。そして、回旋しながらの跳躍。開脚着地と同時に、
両腕を思いっきり振り下ろす。ディアナの後頭部に、衝撃。
揺れるリング。
 プラズマソニックボム。
 これまで幾度となく難敵を屠ってきた、一撃必倒にして、
完全無欠の必殺技である。

ーーーーー

【次回予告】

 ソニックの必殺技が爆発し、沸き立つ客席。
 そして、天使が美しく舞った。

 次回:THE CHAMP 第18回「天使」
 どうぞ宜しくお願いします!

 …de anjo(天使)。

ーーーーー

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THE CHAMP 第16回「追撃」

レッスルエンジェルスサバイバー2 SS
THE CHAMP

第16回
「追撃」


 一気に弾けた観客席から力を貰ったかのようだった。
 ソニックとディアナはリング狭しと激しく動き回るような
プロレスを、益々生き生きと展開していった。
 立体的なスワンダイブ式ドロップキック、ダイナミックな
ニールキック、助走をつけてのフライングボディアタック、
場外へと飛び出すトペ・スイシーダやラ・ケプラーダなど、
二人は美技の数々を万華鏡のように散らばせて行った。
 予測のつかない試合展開に、観客席は興奮の坩堝と化す。
 そして、誰もが知っていた。この輝きは、一瞬でしかない
ものだと。二人とも消耗しきっており、限界点を超えたら、
一気に勝負が決まるだろうと。だからこそ、誰もがリング上
から目を離さず、会場全体が繰り出される一つ一つの動きに
シンクロしているかのようだった。
 そして遂に、地力に劣るソニックの動きが鈍った。
 一瞬の停滞を見逃さず、ディアナは素早くソニックの背後
に組み付いた。間髪入れず、急角度で反り投げが放たれた。
 ジャーマンスープレックス。
 ブリッジを維持したまま、ガッチリとホールド。
 レフェリーがカウントに入る。
 ワン…!
 ツー…ッ!!
 辛うじて肩を上げるソニック。
 「放しませン!」
 ディアナは腕のロックを外していなかった。
 そのまま引き起こして、再びジャーマンスープレックス。
 ワン…!
 ツー…!
 …………スッ!!
 再び肩を上げる。そして、ロックを外し、ソニックは立ち
上がって、吠えた。
 「まだまだぁーーーーーーッ!!」
 追撃に次ぐ追撃を凌ぐソニックの咆哮に、会場が沸いた。
 しかし、ディアナはすでにソニックの背後に回っていた。
 ソニックの両脇から腕を回し、首の後ろでホールド。
 フルネルソンの体勢。
 「…コレで…終わりでス!」
 ディアナが宣言した。
 反り投げ。ソニックが脳天から地面に突き刺さる。
 受け身の取れない、フルネルソンからのスープレックス。
 ディアナ・ライアル、ダブルムーンサルトプレスに続く、
もう一つのフィニッシャー。
 ドラゴンスープレックスである。

ーーーーー

【次回予告】

 涙を流しながらリングサイドをバンバン叩くソフィア。
 その瞬間、ディアナは笑顔を浮かべた。

 次回:THE CHAMP 第17回「安堵」
 どうぞ宜しくお願いします!

 …糞猫!負ケルナト言ッタダロ!

ーーーーー

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THE CHAMP 第15回「万雷」

レッスルエンジェルスサバイバー2 SS
THE CHAMP

第15回
「万雷」


 そして、試合が再び動き出した。
 抱擁していた二人は、突如として弾けるように両対角線の
コーナーへと分かれ、まるで示し合わせたかのようにポスト
をトンっと軽く踏み付けると、真っ直ぐに駆け寄ってリング
の中央で激突した。
 手四つから目まぐるしいグラウンドの攻防を経て、流れる
ようなロープワーク、そして技の読みあい、出し合い、最後
はディアナがソニックをアームホイップで投げ、ソニックが
前転で無傷の着地、両者向かい合ってリング中央を挟み対峙
したまま構えを取るような仕草で見栄を切った。
 いつしか困惑のざわめきは収まり、そこに静寂が訪れた。
 プロレス試合の序盤で見られるような一連の展開。
 しかしその実、両選手とも血汗を滴らせ、大きく肩で息を
して、明らかにダメージが深い様子。それが却って、本来は
序盤に見られるような至ってありきたりな応酬に、普段とは
一味違った凄絶な輝きを与えていた。
 「15分経過、15分経過。フィフティーン・ミニッツ・
ゴーン、フィフティーン・ミニッツ・ゴーン」
 場内アナウンスが、静まり返った会場内に響き渡る。
 (ミカさん…やっぱりこういうのが、楽しいでス!)
 ディアナは嬉しそうにソニックに頷きかけた。
 (ディアナ、ここから弾けるよ!)
 いつしかソニックの表情には、ディアナと出会った頃常に
浮かべていた、いたずらっ子めいた笑みが浮かんでいた。
 「今からが、試合開始さね!」
 「はい!負けませン!」
 思いは言葉となり、言葉は声となり、声は叫びとなった。
 そして二人の叫びを、歓声の爆発と万雷の拍手が迎えた。

ーーーーー

【次回予告】

 予測つかない試合展開、観客席は興奮の坩堝と化す。
 美技の数々、それは万華鏡のよう。

 次回:THE CHAMP 第16回「追撃」
 どうぞ宜しくお願いします!

 …コレで…終わりでス!

ーーーーー

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THE CHAMP 第14回「本分」

レッスルエンジェルスサバイバー2 SS
THE CHAMP

第14回
「本分」


 「……スリー!……フォー!」
 危険と判断し、ソニックをディアナから引き剥がして間に
入ったレフェリーが、ダウンカウントを進めていた。
 引き剥がされたソニックは暫く、ただそこに立ち尽くして
いた。困惑の表情で呆然と、大の字で倒れるディアナに視線
を向けるばかりだった。
 ディアナは、全く動かない。
 「…ファーイブ!」
 そのカウントを聞いた直後、ソニックに表情が変わった。
困惑から、恐慌の表情に。そして両掌で貌を覆った。
 「あたし…何を…」
 「…シーックス!…」
 ここまでカウントを進めたところで、レフェリーは試合の
続行はもはや不可能と判断したのか、試合を止めようと両
腕を大きく振ろうと構えた。
 その瞬間、横たわるディアナに向かって、ソニックが突如
弾かれたように駆け寄った。当然レフェリーは身体を入れて
それを阻んだ。
 「ディアナ!ディアナー!」
 ソニックはあらん限りの力で腕をディアナに伸ばし、悲鳴
に近い声で呼びかけた。
 死なせてしまったかもしれない。
 最も愛する自慢の一番弟子、ディアナを。
 恐怖、後悔、自責、焦燥、様々な思いがソニックの脳裏で
交錯し、その目から涙がとめどなくあふれ出した。
 「ディアナーーーーーッ!」
 絶叫。
 …その瞬間、大きな歓声があがった。
 「…はい…ミカ…さんッ!」
 息を吹き返したディアナが、力を振り絞って四つん這いに
なろうとしていたのだ。
 それを見て、レフェリーはダウンカウントを継続した。
 「…セーブン!ほらソニック、戻れ!」
 ソニックは押し戻され、力なく数歩後ずさった。
 「…エーイト!ディアナ、ファイッ?」
 「私は…まだッ…やれまス…!」
 ディアナは震えてしまう両膝を奮い立たせるようにして、
全身を使って身体を起こしに掛かった。
 「…ナーインッ!ディアナ!?」
 「…私は、立ちま…ス!」
 「テ…………ッ」
 カウントが、試合終了を決定付ける寸前で止まった。
 ディアナが、立ち上がったのだ。
 レフェリーはディアナに駆け寄り、その両手を握った。
 「ディアナ、ファイッ?」
 ディアナは震える両腕でファイティングポーズを取った。
 ゆっくりと2度、頷く。
 「ファイッ!」
 試合が再開された。
 しかし、ソニックは立ち尽くしたまま動かない。
 そんなソニックに、ディアナは重い全身を引きずるように
一歩、また一歩とゆっくり歩み寄って行った。
 そして、抱擁。
 会場全体が困惑のざわめきに包まれた。
 「ミカさん」
 か細い声で、ディアナは囁いた。
 ハッとソニックが目を見開いた。
 「ディアナ、ディアナ、ごめんなさい」
 ソニックは震えながら唸るような低い声で話しかけた。
 そんなソニックの様子に、ディアナは微笑みを浮かべた。
 「ようやく、元のミカさんに戻ってくれましタ。優しい、
とても優しいミカさん」
 「…ディアナ…あたし大変なことを…」
 「いいえ、大変なのは、これからでス」
 「…何を…」
 「ミカさん…こんなところで終わったら、お客さんに申し
訳ないでス」
 「!」
 ソニックは息を呑んだ。
 「忘れたのですか?ミカさんが、教えてくれたんですよ?
私が入門したその日から、いつもいつも言い続けて下さった
じゃないですか。そう…プロレスラーの本分」
 「プロレスラーの、本分。ディアナ…!」
 ソニックはディアナの目を見つめた。
 「はい、ミカさん。プロレスラーは、いつだって」
 ディアナが力強く頷くと、ソニックも頷いた。
 ディアナの震えがピタッと止まった。
 ソニックの瞳から狂気が完全に去った。
 続きの言葉は、二人の口から同時に紡がれた。
 「みんなの期待に応え、夢と希望と感動を与える」
 二人は互いの目を見て、同時に、微笑んだ。

ーーーーー

【次回予告】

 再び動き出した試合。
 凄絶な輝きを放つ攻防に、会場全体が応える。

 次回:THE CHAMP 第15回「万雷」
 どうぞ宜しくお願いします!

 …今からが、試合開始さね!

ーーーーー

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THE CHAMP 第13回「狂乱」

レッスルエンジェルスサバイバー2 SS
THE CHAMP

第13回
「狂乱」


 本来明るく楽しいプロレスを身上としていたソニックは、
その絶頂期に於いては決してマイナスの感情をリングの上で
表現することは無かった。しかし、実力の衰えたキャリアの
後半期では、ここ一番という試合で劣勢に立たされたとき、
狂乱モードとでも言うべき苛烈な性格を身に纏う。
 そのとき、決まって耳をつんざくようなような大絶叫が、
そのスイッチが入った合図となる。
 だが、この日のソニックはいつにも増して狂乱の度合いが
異常なまでに際立っていた。
 ソニックを長年応援してきた、とあるファンは後に「これ
ほどぞくぞくするような怖さと、そして危うさを感じさせる
ソニックは、後にも先にも見たことが無い」と述懐する。
 完全に固められていたクロスアーム・カベルナリアの体勢
から抜けるのは、不可能と思われた。しかも場所は、リング
の中央である。
 だが、ソニックはそこから脱出して見せた。
 手をよじり、手首を掴むディアナの腕に爪を突き立て喰い
込ませ、人並み外れたその握力で肉も削げよ、骨も砕けよと
ばかりに渾身の力で握り絞めたのだ。
 桁外れのパワーで爪を立てながら握り込まれたのである。
皮は裂け、血はにじみ、激痛が走り、ディアナは思わず両手
を離してしまった。
 ソニックは間髪入れず身体を反転し、まだ仰向けになって
いるディアナに覆い被さった。
 直後、ゴツ、と骨同士がぶつかり合う音が響いた。
 それは、頭突き。
 頭突き。
 頭突き。
 頭突き。
 頭突きの連打である。
 「GRRRRRRRR!!!!!」
 喉を鳴らすような獣性の唸り声を挙げながら、ソニックは
ひたすら頭を振り上げ、振り降ろし続けていった。
 頭突き。
 頭突き。
 頭突き。
 頭突き。
 頭突き。
 いつしか両者の額は切れ、鮮血の紅い花が咲いていた。
 凄惨な光景に、会場は静まり返った。いつまでも、こんな
無謀な攻撃が続くはずがないと、誰もが思っていた。しかし
頭突きは益々激しく、エグさを増しながら速度と重さを際限
なく上げて行くばかりだった。
 相手を地面に組み伏せての頭突きは、組み敷かれて喰らう
方は額だけでなく接地面である後頭部にも衝撃を受ける。
 しかし、そんな中でもディアナは冷静を保っていた。一度
相手の勢いを止めてしまえば、反撃の機会は必ず来る、と。
ソニックの暴威を受けながら、ディアナはどうにか間に左腕
を捻じり入れるように割り込ませて防御の体勢を取った。
 すると、観客の予想を更に超える事態が起きた。
 ソニックが、防御するディアナの腕に噛み付いたのだ。
 予期せぬ反則行為に、会場内に大きなどよめきが走る。
 「…!!」
 激痛に耐えながら、ディアナは背筋が凍るのを感じた。
 しかし、それでもディアナは冷静だった。
 (これが、剥き出しのミカさん…怖いでス…でもッ!)
 キッと眼光を鋭く走らせると、ディアナは腕をソニックの
口に預けたまま素早く身体を入れ替えた。今度は、ディアナ
が上である。
 沸き上がる歓声を背に上体を無理矢理起こし、痛みを無視
してソニックの口から腕を引きはがす。
 ディアナはあくまで冷静に、マウントポジションから相手
の顔面目掛けて一発、二発と左右の掌底を打ち下ろした。
 今のディアナには、狂乱モードとなったソニックをも跳ね
退けるほどの地力が備わっていた。シビアに、そして的確に
ソニックを追い詰めようとする姿勢に観客は驚嘆した。
 しかしソニックは、更に激しく狂乱の度合いを増大させて
行った。その眼には、もはや理性が宿っていなかった。
 ディアナが三発目の右掌底を打ち下ろした、その時。
 ゴシャッ、と、鈍い音が響いた。
 ソニックが、掌底に対して頭突きを合わせたのだ。そして
身を捻じり、反対側の左腕に勢いよく噛みついた!
 「いっ…!」
 既に一度噛まれている左腕に、再度の噛撃。それは、肉も
千切れんばかりの激痛だった。
 ディアナが思わず噛まれた腕に意識を向けた、その瞬間。
 反対側の右から、ソニックの掌底が顎に突き刺さった。
 (あ、、、まずい、でス)
 激しく多方向に揺らされたディアナの脳は、あらゆる感覚
を狂わせた。
 力なくソニックに覆い被さるディアナ。
 「GRRRRRRRR!!!!!」
 身体が再び入れ替わる。
 そして、頭突き。
 頭突き。
 頭突き。
 頭突き。
 頭突き。
 頭突き。
 頭突き。
 一体誰が、試合前にこの光景を想像しただろうか。
 まるで愛弟子のディアナを殺そうとしているかのような、
鬼気迫るソニックの形相に静まり返る観客席。
 そんな執拗極まる頭突き地獄の中でーーーーー。
 −−−−−ディアナが、ピクリとも動かなくなった。

ーーーーー

【次回予告】

 恐怖、後悔、自責、焦燥、様々な思いが交錯する。
 そして、レスラー達が心に秘めた真摯な願いとは。

 次回:THE CHAMP 第14回「本分」
 どうぞ宜しくお願いします!

 …ディアナ、ディアナ、ごめんなさい。

ーーーーー

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THE CHAMP 第12回「屈辱」

レッスルエンジェルスサバイバー2 SS
THE CHAMP

第12回
「屈辱」


 ディアナのダブルムーンサルトプレスをまともに喰らった
ソニックは、目を閉じて静かにカウントを待った。
 ソニックは、このフォールを返さないと決めていた。
 愛弟子ディアナの成長を目の当たりにした喜び、そして、
これまでベルト防衛のため激闘を続けてきた疲れ。何より、
今回はベルトの本来の主たるソフィアが来日してまでベルト
の移動を望んでいるということ。
 この全てが、ソニックから闘争心を奪い去っていた。
 育てた弟子の、最高の技で葬られる。師として、こんなに
嬉しいこともない。さぁ、スリーカウントをーーーーー。
 しかし、カウントはいつまで経っても始まらなかった。
 ソニックの耳に入るのは観客のざわめきだけ。
 突如、ソニックは髪を掴まれ、地面を引きずられた。
 「!?」
 ソニックがゆっくり目を開けると、すぐ目の前に無表情で
立つソフィアの顔があった。
 ディアナがソニックの髪を掴んで、ソフィアの前まで引き
連れて来ていたのだ。
 ソフィアが、トーンの低い小声で話しかけた。
 「糞猫。今、諦メタダロ」
 「…あたし…」
 「そうでス。今、ミカさん諦めてました、無様でス」
 「ドウナンダ、糞猫」
 「…どうして、終わらせなかったお」
 絞り出すような、ソニックの小声。
 「フザケルナ!」
 ぱぁん、と乾いた音が鳴り響いた。
 ソフィアの張り手が、ソニックの頬をはたいていた。
 同時に、レフェリーが割り込んで三者を引き離した。
 場内からは、ブーイング。
 ディアナとソフィアが結託しソニックを嬲り者にしている
ような光景ではあった。
 「お客さんは、ミカさんが反撃するのを期待していまス」
 ディアナはうつ伏せのソニックの脚を掴んでリングの中央
まで引きずりながら言った。
 「でも、その時は永遠に来ません」
 ソニックの背後に圧し掛かり、動きを封じる。
 「どうして終わらせないか、と聞きましたね」
 両脚同士を巧みに絡めた上で両手首を取り、首の前で交差
させて極限まで弓なりに反らせる。
 「まるで試合にならない相手に、スリーカウントだなんて
甘すぎますから。ミカさんが情けなく自分から負けを認める
ことでファンを失望させて下さい」
 「ぎゅっ…」
 ソニックは、両膝が地面についた状態で自分の両腕で首を
締められ、更に額が地面につきそうなくらいエビ反りの状態
に絡め取られていた。
 クロスアーム・カベルナリア。
 別名、ブラディーEXとしても知られる。
 身体の前面を前方に大きく突き出す格好で、苦悶に歪んだ
表情までも観客に見せつける、屈辱の晒し技である。
 「この技、覚えていますか?」
 因縁の技だった。
 かつて、まだ経験が浅かった頃のディアナを嬲り者にし、
酷い怪我をさせてしまったレスラーが居た。
 その報復として、後日怒りに燃えるソニックが相手を非情
な攻撃で失神まで追い込み、無様な姿を晒させた技、それが
このクロスアーム・カベルナリアである。
 「昔、私のために使ったこの技で、今日ミカさんは負けを
認めるのでス。今、どんな気分ですか?」
 「か…ひゅ…」
 「ああ、そうでした、気管が締まりますものね。ほら早く
タップして下さい、楽になれまス。あら?涙ですか?まさか
ミカさん泣いているのですか?」
 場内は静まり返っていた。
 皆が注視する中、確かに、ソニックの両眼から液体が頬を
伝って零れ落ちていた。
 ソニックはゆっくりと右の掌を背屈させた。
 観客席から漏れる、失望の溜息。 
 …タップするのか。誰かがそう呟いた。
 その時、ソニックの視界にソフィアの姿が映った。
 ソフィアは、真っ直ぐソニックを睨みつけていた。
 恨めしそうに。
 (…ソフィア…!!)
 ソニックはカッと目を大きく見開いた。
 (ベルトを奪いに来たわけでは、ない?)
 瞬時、かつての誓いがソニックの脳裏を渦巻いた。
 (…わかったの!ずっとずっと守り続ける!約束だお!)
 (このベルトをソフィアだと思って守り続けるの!)
 (絶対、“ソフィア”は、誰にも渡さないの!)
 (ソフィアは、ずっとここにいるお。忘れないお)
 思考が、弾ける。
 ソニックは歯を食いしばった。両腕に最後の力を込めて、
ディアナのホールドをを引き剥がそうと前に押した。
 怪力のソニックと言えど、前に押す力では後ろから手首を
引っ張る力に勝つことは困難である。しかし、僅かな空隙を
生じさせることには成功した。そして、それは新鮮な空気を
気管から肺へ送り込むことを意味する。
 その一呼吸で、新たな力が生じる。
 ソニックは、大きく息を吸った。
 「うああああああああああああああああああ!!!!!」
 悲鳴に近い、甲高い絶叫が響いた。

ーーーーー

【次回予告】

 一体誰が、試合前にこの光景を想像しただろうか。
 暴威降り注ぐリングに鮮血の紅い花が咲く。

 次回:THE CHAMP 第13回「狂乱」
 どうぞ宜しくお願いします!

 …ゴシャッ、と、鈍い音が響いた。

ーーーーー

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THE CHAMP 第11回「実力」

レッスルエンジェルスサバイバー2 SS
THE CHAMP

第11回
「実力」


 荒々しい、ごつごつした打撃戦が展開されていた。
 普段華麗なルチャ・スタイルで魅せるソニックやディアナ
からは想像出来ないような、脚を完全に止めての打ち合い、
骨と肉の削り合い。
 ソニックは一切の雑音を遮断するべく、怒りを以って身を
奮い立たせていた。
 それが、身のこなしを粗雑にする。
 ソニックが1つ2つ技を出す度に、ディアナは冷静に対処
しながら倍以上を以って返してくる。
 実力の差、格の差は歴然だった。
 とうにピークの過ぎたソニックに対し、ディアナは完全に
成熟しきったレスラーとしてその実力を発揮していた。
 動作の緻密さ・キレ・虚実・躍動感、攻撃の鋭さ、相手の
攻撃への対処、気力の充実、漲る闘志。
 戦士として、全てにおいてソニックを凌駕していた。
 自分が格下として格上にあしらわれている、そんな感覚を
ソニックは感じていた。
 幾度となく跳ね返され、お返しに痛撃を受けていく内に、
いつしかソニックの狂気は収まっていた。
 (...何しても、通じない。こんなに強くなったのかお)
 そこに芽生えたのは、師としてディアナの成長を喜ぶ感情
だった。しかし試合中においてそれは、戦う意志の揺らぎを
意味した。そして意志の揺らぎは、動きに現れる。
 劣勢を打開するため放った助走を付けての掌底を躱された
ソニックは足元が覚束無くなり、たたらを踏んだ。
 そんな大きな隙を見逃すディアナでは無かった。
 「甘い!頂きまス!」
 ふわりと跳躍し、両脚をソニックの首に絡める。
 そして、振り子のようにディアナがソニックの股をくぐる
勢いで身体を反らし、両者が反転。
 フランケンシュタイナー。大技である。
 ソニックは脳天から地面に叩き付けられた。一拍置いて、
ディアナが両腿で顔を挟み込むようにしてソニックの上半身
に圧し掛かる。
 フォール!
 ワン......ツー......!
 「ッ!」 
 フォールされたら無意識でも身体がそれを返そうともがく
レスラーの本能、それが最後の「みっつめ」が叩かれる寸前
でソニックに肩を挙げさせていた。
 しかしフォールが返されるのを予測していたかのように、
ディアナは即座に身を離して動き出した。
 (もう離れたお?どこへ…)
 直後、大きな歓声。
 (...上!)
 仰向けの視界に、黄白色に光る天井のライトが映る。
 そこに、人影がさっと割り込んで光を遮った。
 人影は美しいフォルムで後方宙返りを高速で行いながら、
空高く舞い上がっていた。
 一回転、二回転。それを見つめながら、ソニックはふと、
ディアナの二つ名を口にした。
 「サバンナの、黒豹」
 そして、安堵したような笑みをこぼす。
 (なんて綺麗…)
 ソニックは、全身の力が抜けるのを感じた。
 ディアナの身体能力を最大限に発揮した大技だった。即ち
コーナーポストの上から高く跳躍し後方宙返りを2回決め、
その勢いで相手に覆い被さる、ダブルムーンサルトプレス。
 自らの教え子が放つ、極上の絶技を受ける。そんな思いが
脳裏をよぎった瞬間、ソニックは喜びすら感じていた。
 ディアナの全身が接近し、段々大きくなってーーー。
 ソニックは、自ら目を閉じた。
 …そして、衝撃。
 回転力を巧く加えたディアナの全身が、ソニックに浴びせ
かけられた。ズドーーーン!という豪快な音と同時にリング
全体がバウンドするように揺れた。

ーーーーー

【次回予告】

 晒し者にされ、嬲られるソニック。
 かつての誓いがソニックの脳裏を渦巻いて弾けた。

 次回:THE CHAMP 第12回「屈辱」
 どうぞ宜しくお願いします!

 …今、どんな気分ですか?

ーーーーー

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