アイマスSS #01
2010.12.26 Sunday
冬空の下、炬燵(こたつ)の中
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雪降る都会の繁華街。
12月24日。
肌を射抜くような冷たい風、商店から漏れるジングルベルの
音色、楽しそうに語らいながら互いの指を絡め合って道を往く
数多のカップル。
アイドル、三浦あずさには、まだ恋人がいない。
いつもなら、幸せそうなカップルたちを物憂げな表情で眺め
ながら、今年も運命の人が現れなかったと嘆いていただろう。
その気持ちが億劫で、外に出たがらないときもあった。
しかし、この日の彼女は違っていた。
見事に手入れされた、艶のある美しい黒髪を揺らしながら、
あずさは足早に繁華街の中心を歩いていた。
常にきょろきょろと周りを見回している。
表情には、不安と焦り。
普段の、のんびりおっとりした性格の彼女には珍しい。
「何処かしら・・・あの有名パティシエのお店」
あずさは、店を探していた。
事前に念入りに場所を調べて地図まで持ってきたのに、もう
何時間も探し回っている。
この日の仕事は、あずラジの収録だけだった。それが早目に
終わり、別の仕事に向かった仲間を見送ると即座にスタジオを
飛び出してお店探しを始めたのだ。
「早く見つけないと、夜になってしまうわ」
あずさには、迷子癖がある。
気が付けば遠く離れた見知らぬ土地に迷い込んでしまうなど
ザラで、あるとき電車の乗り間違いに気付くのが致命的に遅れ
数百キロ離れた別の地方に流れ着いたことすらあるくらいだ。
事務所の仲間は、日本が島国で無かったら国境またいで外国
まで行ってしまうかも知れないと、半分本気の冗談を飛ばす。
勿論彼女自身もそれを自覚しているため、周囲に迷惑を掛け
ないように、近頃は極力一人で外を出歩こうとはしなかった。
だが、今日は別だった。
現在話題の、有名パティシエのお店。
前日、電話で予約は済ませてある。あとは今日、店を訪れ、
ケーキを受け取るだけだ。
何としても今日中に目的の店を見つけて、ケーキを事務所に
持ち帰るのだ。
これは自分がやらねばならないと心に決めた、使命。
失敗するわけにはいかない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あずさを始め、様々なアイドルやアイドル候補生が所属する
765プロダクションの事務所。
いくつかの事務机に古いテレビ、そして何故か、炬燵。
殺風景なようで、どこかアットホームな雰囲気である。
だが暖房が壊れているのか、室内は凍えるように寒かった。
事務所の中には、誰もいない。
ただ一人、炬燵に包まるようにして暖を取る所属アイドル、
萩原雪歩を除いては。
「はぁぁ、この炬燵と熱いお茶が無かったら、私きっと明日
の朝には、凍死体となってみんなに発見されていますぅ」
心細さから、不安が口をついて独りごちる。
「でも、仕方ないよね。クリスマスイブなのに仕事を一つも
取ってこられない私が悪いのだから」
若い芸能人に取って12月末とは何かと忙しい時期であり、
また忙しい時期でなければならないものだ。
事実、他のアイドルたちは全員仕事で出ていた。
当然、アイドルたちのプロデューサーも居ない。
いつもは事務所にいる事務員の音無小鳥や社長の高木までも
この日はアイドルたちのサポートを始め、様々な用事や事情で
事務所を空けていた。
しかし、事務所に誰も居ないというのは何かとまずいので、
留守番として、オフの雪歩が呼ばれたのだ。
「あ〜あ、私はダメダメなアイドル、ダメドルなんですぅ。
こんな私は、炬燵の下におっきな穴掘って埋まってますぅ〜」
本当は雪歩も他の所属アイドルたちと大差無い人気を持って
おり、翌日は朝早くから仕事が目一杯入っている。そのため、
この晩は事務所で泊まり込むことにしているのだ。この日仕事
が入っていないのは偶々に過ぎない。
しかし、雪歩は臆病で後ろ向きになりやすいところがあり、
必要以上に自罰的な考えに陥ってしまいがちなのだ。それが、
一層寂しい気持ちを掻き立てる。
「どうせみんな、仕事終わったら帰っちゃうんだろうなぁ。
早く明日にならないかなぁ」
雪歩はぼんやりとテレビ画面を見つめながら溜息をついた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あらぁ〜?ここは何処かしら・・・?」
また、見慣れぬ場所だ。
これで何回目だろうか。
つい携帯を取り出して、ハッと動きを止める。
「そういえば、みんな仕事でした〜」
これも何回目だろうか。
見慣れぬ場所に出ること自体は、そう嫌いではない。散歩の
ついでに道に迷うというのは、様々な新しい発見が出来るのが
楽しいとすら思ったりもする。それに、いよいよ帰り道が全く
見当付かなくなっても、いつもであれば助けてくれる人が必ず
誰かしら居てくれる。心配なのは迷惑を掛け過ぎてしまうこと
だが、あずさの周りの人たちはみんな優しく、いけないと知り
つつも、ついついそれに甘えてしまうのだった。
だが、今日は違う。
仲間たちも、プロデューサーも、みんな仕事。
親友の友美も、今夜は外せない用事があるらしい。
「イブだけにね」と、友美は昨夜の電話で笑った。
・・・ともかくとして、みんな今夜は忙しいのだ。
さすがに、そんなときに迷惑を掛けることは出来ない。
事務所にいる、雪歩は?
それでは、意味がない。
雪歩を驚かせるために、喜んで貰うために、あずさは今こう
して寒い冬空の下を歩き回っているのだ。
事務所で一人留守番している雪歩に、誕生日兼クリスマスの
お祝いとして、絶品と評判のケーキを買うのだ。
事前にバレてしまっては、駄目。
なんとしても、一人でやり遂げなければ!
しかし、そう思えば思うほど、目的の店から遠ざかっている
みたいで、焦りは募り、不安は増していく。
あずさはとうとう、歩を止めてしまった。
「・・・仕方ないわ・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
事務所の電話が鳴った。
雪歩は震える手を伸ばし、おずおずと受話器に触れた。
事務所に居るのは、雪歩ただ一人だった。
電話に出るのは、事務員の仕事。
でも、一体何の電話だろう?
アイドルたちの仕事の連絡や伝言だったら、大した問題では
ない。仲間たちの声が聞けたら、少しは寂しさも紛れる。
だけど、クレームだったら、どうしよう?
当然、クレーム処理も事務員の仕事。
雪歩はクレームにも対応せねばならない。
だが、彼女は知らぬ人間と会話することが極端に苦手だ。
そこには物凄いストレスとプレッシャーが付きまとう。
しかし、彼女は言われたことを極力忠実に全うしようとする
タイプの、従順な女の子だ。
意を決して、雪歩は受話器を取った。
「もしもし、雪歩ちゃん?」
あずささんの声だ!
「あ、あずささん!?お仕事、お疲れ様ですぅ」
「いえいえ、雪歩ちゃんもご苦労様。事務所、寒くない?」
「あ、はい、ちょっと。でも、炬燵があるから・・・。あ、
あの、あずささん、もしかして事務所に?」
つい、期待がそのまま言葉として出てしまった。
「え?あ、や、その・・・ちょっと聞きたいことがあって」
相手は、道を尋ねてきた。
どうやらケーキを買うお店を探しているようだ。
「ああ、その店なら知っています。今、何処にいますか?」
他にすることもないので、雪歩は道順をひとつひとつ、手を
取り足を取りの要領でナビゲーターを務めた。本当に指示した
通りにあずささんが歩いているのか怪しいものだったが、暫く
奮闘した後、相手が目的の店を見つけたと喜びの声をあげた。
良かった、喜んで貰えて。
そう思ったのと同時に、受話器から蛍の光が聞こえてきた。
「大変!閉まっちゃう!雪歩ちゃんありがとう、じゃあね」
「あ、いえいえ・・・切れちゃった」
・・・それにしても、こんな遅くにケーキを買って、一体、
あずささんは何処へ行くのだろう?
そう思うと、暫く忘れていた寂しさが途端に大きさを増して
雪歩に圧し掛かるように襲い掛かってきた。
いいな、あずささん。
ケーキだなんて。
私は、ここで、一人。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これでいい。
あずさはケーキを買って、嬉しそうに頷いた。
これを事務所へ持っていく、雪歩と一緒にお祝いするなんて
言わなければ、まだまだサプライズになりえる。
後はこのケーキを持って、事務所へ帰られればいい。
・・・そう、帰られれば。
夜は更け、外気は一層寒くなって行く。
ホワイト・クリスマス。特別な日に街を彩る、綿雪の化粧。
幻想的な雰囲気に包まれた辺りの様子は、しかしこのとき、
白く湯気立つ吐息のもやにぼかされて、漠然とした不安として
あずさの胸中を緩く締め付けた。
もう、誰にも頼ることが出来ない。
ここから私は、本当に、一人。
知ってか知らずか、彼女は軽く身震いをした。
短く息を吐いて、事務所に帰る第一歩を踏み出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
光の明滅が、暗い事務所の壁に淡く反射する。
電気は付けていない。その方が、心が落ち着くのだ。
今、光源はテレビだけである。
「あ、出演している」
歌番組に、事務所の仲間が出ていた。
「やっぱり、上手いなぁ」
羨望のまなざし。
本当は雪歩も負けないくらい実力を付けてきている。
しかし本人はそれを自覚出来ず、自己の過小評価に囚われ、
賞賛の声すら素直に聞き入れることが出来ないでいた。
「ステージの後で疲れているだろうし、多分終わったらすぐ
家に帰っちゃうんだろうな。むしろこっちからお疲れ様でした
って電話入れるべきかな。でも、打ち上げとかあったら、突然
電話かけても迷惑だろうな」
引っ込み思案というのは、それだけ色々な配慮をしていると
いうことである。配慮しすぎて堂々巡りになり、それが自分を
苦しめることすらあるのだ。
「私が悪いんだ。無理にでも事務所に戻って来て欲しいって
思うから、こんなこと考えるんだ。もうやめよう」
雪歩は再び、ぼんやりとテレビの画面を眺めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「やっぱり・・・何故なの?何故、私は、こうも道に迷って
しまうのかしら?」
案の定、である。
周りの景色に、見覚えがない。
心細い。
途中、思い切って知らない人に道を尋ねたりもした。
だが、説明された内容は耳から耳へすりぬけるようで、説明
された通りに歩いたつもりでも、結局また迷ってしまうのだ。
先程雪歩がしてくれたみたいに、つきっきりで説明してくれ
ないと駄目なのだ。そしてそれは、さすがに知らない人相手に
お願いするのは気が引ける。
いつもであれば、誰かに電話して助けて貰わねばならない、
そんな状態だ。
しかし、この日のあずさは、一人なのだ。
そして、使命を帯びている状態でもある。
不安、焦燥、心細さ、無力感、情けなさ、そして、悲しみ。
今日は、雪歩ちゃんのために動いているのに。
道に迷っている場合では、ないのに。
どうして、私はこうなの?
どうして、道に迷いやすいんだろう?どうして、必ず誰かに
付き添って貰わないと、すぐ迷ってしまうのだろう?そもそも
何をするにしても、どうして一人じゃ何も出来ないのだろう?
結局今までも、友美、プロデューサーさん、周りのみんなが、
私を支えてくれたから、なんとかここまで来られたのだ。周囲
に甘えて、迷惑を掛けて、おんぶにだっこ。
当の私は、雪歩ちゃんの誕生日を祝いたい、ケーキを買って
事務所まで持っていきたい、それすらも出来ない、誰の役にも
立てない、本当に情けない。
雪の舞い降る夜空を見上げる。
ああ、なんて寒い。
きっと、一人で留守番している雪歩も、寒いだろう。
・・・だから今日、せめて今日だけでも、私はこのケーキを
雪歩ちゃんのもとへ持っていかなければならないのだ。
あずさは目を閉じて、大きく息を吸った。
よし、まだ、がんばれる。
再び開いた視線の先に、高層のホテルがそびえ立っていた。
「高いところから見れば、事務所の場所が解るかしら」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつのまにか、まどろんでしまったようだ。
テレビの音に目を覚ますと、辺りは、相変わらずの薄暗さ。
気だるいが、眠気は何処かへ消え去ろうとしていた。
「もうすぐ、真夜中なんだ」
やっぱり、誰も帰って来なかった。
事務所の炬燵の中で微動だにしない雪歩。
ここは、深い穴の中も同然。
誰も穴の中の雪歩のことなんて気に掛けてくれない。
孤独感、憂鬱、不安、無力感、情けなさ、そして、悲しみ。
価値がない人間だから。
この苦しみは、きっとクリスマスイブに仕事が取れなかった
私への罰なんだ。
私が悪いんだ。
加速していく後ろ向きな思考、短く速い呼吸、軽い吐き気。
普段安心感を覚えていたはずの暗さが、冷たい外気のせいか
逆に不安感を煽るようになっていた。
しかしそれでも、雪歩は電灯を点けようとせず、ずっと同じ
体勢のままうずくまっていた。
いつしか雪歩は、軽く肩を震わせていた。
「サンタさん、もしいるのなら。プレゼントは、要らない。
代わりに、この寂しさを、なんとかして欲しいですぅ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
高い場所から見下ろしても、結局方向感覚が更に狂うだけで
何の収穫も無いことに気付いたあずさは、結局再び寒い道路を
ふらふらと彷徨っていた。
時刻は、既に真夜中を回っていた。
「もう仕事が終わっている仲間もいるわね・・・」
あずさは、携帯に手を伸ばしたが、すぐに考え直した。
「いいえ、今日ばかりは、一人で頑張ろう」
意地になっていたのかもしれない。
今日ここで決めたことをやり遂げないと、一生このまま何も
変わらず駄目になってしまう、そのような思いが生じていた。
あるいは、冷え込みが一段と厳しくなった真夜中、思考まで
凍ってしまっていたのかもしれない。
その証拠に、ずっと雪歩と、雪歩にケーキを持っていくこと
以外考えられなくなっていた。
夜通し歩きっ放しで、本格的に疲れてきたのもあるだろう。
あずさは、弱々しく溜息をついた。
今日、何度目の溜息だろう。
そして、つぶやいた。
「サンタさん、もしいらっしゃるのでしたら。プレゼントは
要りません。ただただ、正しい道を、教えて下さい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
眠れない、午前2時。
「お腹、すいたな」
そういえば、もうずっと何も食べていない。
事務所にはお菓子や保存食の類が置いてあったが、炬燵から
出て取ってくる気が起きない。
お腹がすけばすくほど、眠れなくというのに。
眠れば、明日がすぐ来るといのに。
それでも、起き上ること自体がしんどいのだ。
だから、雪歩は相変わらず死人のような目でテレビの画面を
ただただ眺めるばかりだった。
どれくらい時間が経っただろうか。
突然、事務所の入り口のドアがガタンと大きな音を立てた。
続けて、ドスン、と、鈍い音がした。
このような夜中に、突然、大きな音。
尋常ではない。
「ひぃっ・・・!」
雪歩は急な事態に思わず息を呑んだ。
全身を強張らせ、金縛りにあったようにすくみあがる。
・・・怖い!
暫く息を潜めるようにして、耳を澄ませる。
すると、すすり泣くような声が聞こえてきた。
ますますもって、怪しい。
「な、何?何なの?」
どんなに待っても、すすり泣きは止まらない。
やはり、ただごとではない。
どうしよう?
怖いのは、何が起きているのか解らないから。
ならば、確かめればいい。
だけど、それも怖い。
どうしよう?
暫しの逡巡。
「落ち着いて、雪歩。怖くない」
雪歩はそうつぶやくと、ゆっくり立ち上がった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
眠ることを知らない、都会の午前2時。
あずさの体力は限界に来ていた。
そういえば、ずっと何も食べていない。
ただひたすらに事務所を目指して歩く、それ以外頭に無い。
しかし、ここにきて、ようやく身体中が自我に警告を発して
きていた。その信号は、無視出来ないほど強烈な苦痛を伴って
あずさの精神をずたずたに引き裂こうとしていた。
「でも、私は、雪歩ちゃんのもとへ行かなければならない」
手足の感覚がなくなってから、もうどれだけ経っただろう。
それでも、彼女の意志は決して揺らがなかった。
自分自身の身の回りに関しては割と抜けているところがある
あずさだが、他人のためとなると必死になることが多い。
自分より、まず他人を気遣う。
それが、彼女の基本的な性格だからだ。
その代わり自己主張が弱いため、それが裏目に出て損をする
ことがあるが、それで他人のためになっているのなら、それは
それで良いのかも知れない。そう漠然と思うこともある。
しかし、ケーキを事務所へ持っていくことが出来なければ、
他人のためになっているとは言い難い。ただの空回りとなる。
それだけは、嫌!
鉛のようにまとわりつく疲労感を振り払うように、あずさは
ケーキの包みを握り締め、両目を強く閉じた。
深呼吸して、目を開ける。
「・・・嘘」
目の前には、懐かしい光景があった。
事務所の入った、ビルだ。
「ああ、良かった・・・」
最後の力を振り絞って、近づく。
吹きさらしで雪に覆われた階段を、ゆっくり登っていく。
「でも、雪歩ちゃん、もう寝ているわよね・・・」
だけど、ここまで来たのだから、ひとまず様子だけでも見て
いきたい。ドアをノックして、反応が無かったら、折角だけど
仕方がないから、帰るしかない。
しかし、出来れば・・・起きていて欲しい。
最後の段を登り、万感の思いを込めてドアに手を伸ばした。
・・・あまりに気が急いたのか。
それとも、遂に踏ん張る力を失ったのか。
階段の雪に足を取られ、あずさは前のめりにドアに激突し、
糸が切れた操り人形のように力なく地面に倒れ伏した。
ケーキの包みの上に。
一瞬後、あずさは頭の痛みも忘れて急いで包みの上から身体
を離した。必死の形相で包みを手に取る。
しかし、後の祭りだった。
あずさは踊り場の壁にもたれかかり、包みを胸に抱いた。
口を半分開けた、呆けたような顔。
暫くして、涙がとめどなくあふれ出た。
表情を全く変えず、ただただ静かに泣いた。
頭の中は、真っ白になっていた。
ただただ悲しかった。
雪歩ちゃんに、申し訳ない。
ふと、そんな考えが頭をよぎった。
すると、一層涙があふれた。
鼻が詰まり、喉が詰まり、息が苦しくなって、むせた。
無表情での、すすり泣きに変わった。
吹きさらしの凍える寒さが身に噛み付いても、あずさは全く
動かなかった。
動けなかった。
どれくらい泣いただろう。
突然、ドアが開いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目の前には、見慣れた人物の、変わり果てた姿があった。
「あ、あずささん!?」
雪歩は急いで駆け寄った。
どうしてあずささんが、こんな時間に、ここで、疲れ切った
様子で泣いているの?
混乱。
とにかく、呼びかける。
「どうしたんですか!大丈夫ですか!?」
相手はぼんやりと虚空を見つめているような表情で、すすり
泣きを止めようとしない。
「あずささん!あずささん!」
肩を大きく揺さぶる。
相手の目の焦点が合ったような気がした。
視線と視線が絡み合う。
瞬間、あずさが目を大きく見開いた。
「雪歩ちゃん!」
「大丈夫なんですか?立てますか」
「雪歩ちゃん、ごめんなさい!」
「え?」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
あずさは壊れたテープのように「ごめんなさい」を繰り返す
ばかりである。
「どうしたんですか、何があったんですか」
「ごめんなさい・・・雪歩ちゃん、ごめんなさい」
「と、とにかく、中へ」
雪歩は無理矢理あずさ、事務所の中へ引っ張り込んだ。
「今、熱いお茶をいれますから。炬燵に入って下さい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
二人は、隣り合わせで炬燵に入っていた。
「落ち着きましたか」
「雪歩ちゃん・・・ごめんなさい」
「それはもういいですから、何があったかを教えて下さい」
催促され、あずさはゆっくり語りだした。
炬燵の中で、冬空の下の話を。
あずさは自身の空回りを、愚かな行動を聞いて、雪歩に呆れ
られるならまだしも、怒らせてしまうかも知れないと思った。
余計なお世話。
いい迷惑。
それが、自分のしたことだと思った。
一人じゃ何も出来ないくせに、下手に出しゃばって面倒事を
巻き起こすのが一番タチが悪い、始末に負えない。
こんな夜中に、雪歩に心配を掛けるようなことをした。
責められて当然である。
そう思っていた。
しかし、ここまで来たらもう全部話すしかない。
仕事を終えて、雪歩の誕生日とクリスマスを一緒に祝おうと
思い至ったこと。サプライズにしようと考えたこと。ケーキを
買おうとして、いきなり道に迷ったこと。結局たどりつけず、
雪歩のナビゲーションに頼ったこと。その後、一人で帰ろうと
決めて、更に迷ってしまったこと。ようやくたどりついたら、
ドアの前で転んでケーキを潰してしまったこと。
話しながら、どんどん情けない気持ちになってくる。
最後は再びあふれる涙をこらえきれず、むせびつつたどたど
しく語るのがやっとだった。
雪歩の反応は、あずさの予想とは異なった。
彼女は、途中から一緒に涙を流していた。
その反応に戸惑いながら、あずさは話を終えた。
すると、雪歩はぼそりと言った。
「全部、私の、ために?」
あずさはその言葉の真意が理解出来ず、曖昧に頷いた。
「え・・・ええ」
突然、雪歩が詰め寄った。
「あずささん、謝るのは私の方です!」
「え?何を言ってるの、雪歩ちゃん?」
「悪いのは私です!私が、サンタさんに、寂しさをなんとか
して欲しいってお願いしたから」
「そんな、だってこれは私が勝手に・・・」
「でも、あずささんが本当に来てくれて」
雪歩は涙を流しながら、微笑みかけた。
「ここまで、こんなにボロボロになってまで、してくれて」
「ゆ、雪歩ちゃん!?」
あずさは、突然しなだれかかってきた雪歩を受け止めながら
戸惑いの声をあげた。
「私、とっても寂しかった。一人でとっても心細かった」
そう言いながら、あずさの胸に頭を沈めてゆく。
そして、消え入りそうな声で言葉を紡いだ。
「だから私、とても嬉しい・・・」
「・・・雪歩ちゃん」
雪歩が顔を上げ、可愛らしい笑顔を見せた。
「あずささん、ありがとう。こんなに嬉しいプレゼントは、
無いです。本当に、本当に嬉しいですぅ」
それを聞いてあずさは胸がいっぱいになった。
思わず、雪歩を強く抱きしめる。
ぬくもりが、伝わる。
今までの不安や悲しみがとけていくような感覚を覚えた。
「そう言ってもらえると、私も、とっても嬉しい。お礼を
言うのは私の方よ。雪歩ちゃん、ありがとう・・・」
「ううん、私こそ」
二人は顔を見合わせて、くしゃくしゃの笑顔で「ふふっ」と
笑い合った。そして、どちらからともなく、言った。
「メリー、クリスマス」
そこに、あずさが続けた。
「誕生日おめでとう、雪歩ちゃん」
「ありがとうございますぅ。なんだか今までで一番不思議な
誕生日になっちゃいましたけど、でも、とっても嬉しいです」
そのまま、暫く見詰め合う。
すると。
二人のお腹が、同時に鳴った。
「あら、いやだわ」
「あずささん、お腹空いているんですか?」
「雪歩ちゃんも?」
「はい、もうずっと、何も食べてません」
「実は、私もよ。ああ、本当に不思議ね」
「え?何がですか?」
「私は迷子、雪歩ちゃんはお留守番。だけど、一緒なのね。
一人ぼっちで、心細くて。おまけに、お腹を空かせているのも
一緒だなんて」
「ああ、本当ですぅ」
軽く笑うと、雪歩が立ち上がった。
「あずささん、ケーキ、折角だから、まだ無事な部分を食べ
ませんか?形は悪くなっても、味が変わるわけじゃないと思い
ますぅ。あと、事務所にお菓子もたくさんありますよ」
二人だけのささやかなパーティーが、はじまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日、早朝。
事務所のドアが、そっと開いた。
765プロダクションの事務員、音無小鳥は、忍び足で中に
入った。背後には、所属アイドルたちが控えている。
昨日は例年類を見ないような忙しさで、どうしても事務所に
戻ることが出来なかった。雪歩に悪いことをした、そう思った
小鳥はアイドルたちと連絡を取り合い、お詫びの意味も込め、
朝、雪歩が仕事へ行く前にサプライズの誕生お祝いパーティー
を開こうと提案したのだ。
何故か、あずさとだけは連絡が付かなかったのだが・・・。
そのあずさが、どういうわけか、雪歩と抱き合うようにして
炬燵に包まり、眠っていた。
この光景を理解出来ず、小鳥は首を傾げた。
その後どう尋ねても、あずさは「また、道に迷っちゃって。
あ、でも、今回はサンタさんが正しい道を教えてくださったと
言うべきかしら〜」と意味の解らないことを言ってはぐらかす
ばかりで、雪歩もただただ笑うだけで答えようとしなかった。
おわり
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(至極余計な)あとがき
え〜と。今回のSSは以上です。
以下、下手すると物語の雰囲気ぶち壊しになりかねない俺の
駄文が続きますので、そういうのが嫌な方は回れ右を。
・・・では(こほん)。
まずは、山も谷も無いSSにお付き合い頂き、まことにあり
がとうございます!
え〜と、あずゆきSSです。俺が妄想するとどうしても百合
入っちゃいます。あやうく18禁モード突入しようとして思い
止まりました(ぉぃ
そして、中盤以降鬱成分入りまくりです。書き始めたとき、
こんなに後ろ向きな文章が連発されるとは思いませんでした。
思いつくがまま書き進めた結果なので、やはり俺の中には、
ああいう鬱屈した何かが潜んでいるのでしょう。普段どんなに
パゥワーパゥワー言っていてもw
構成そのものは、両アイドルの視点を切り替えながら進めて
いくもので、以前夏久尽未来さんとネット上であずまこ18禁
百合SSを一緒に創り上げたときのノリにヒントを得ているの
かも知れません(そちらでは相手が真、俺があずささんを担当
して、相手が先に進め、俺があずささんの視点でそれを書く、
というものだったので、構成そのものは違いますね)。
この話を書いてみて、案外あずささんと雪歩って似てる部分
も結構あるかもしれない、と思いました。っていうか、昔から
そう思っていたのが偶々形になったと言うべきですね。
それを、片方は冬空の下、もう片方は炬燵の中という対照的
な立場で表現出来れば、と、思いました。
うん、まだまだ文章力が青いですね〜w
で、話全体のテーマについて、ですが。
俺の尊敬するトールキン先生は物語に寓意性を含むのを避け
ようとしたので、俺もそれにあやかり・・・。
あいや、今回に関しては、一つだけあったw
それは。
結構あずささん=迷子キャラって考えで、公式・同人問わず
様々な作品で迷子にさせられていますけど、あずささんだって
好きで迷子になってるわけじゃねぇんだずぇ!不安や心細さを
感じて泣きそうになることだってあるんだ!あんま安直に道に
迷わせてるんじゃねぇ!面白ければ許す!(ぇ
・・・ってことです(何様
まぁ二次創作だし別に迷子になってもニコニコ笑って戻って
くるあずささんも俺は好きだし良いと思いますが、たまには、
あずささんが迷子中にどんな気持ちで居るのかも考えてよね、
ってなわけなのですよぅ☆
え?雪歩に関しては何かないのかって?
う、俺雪歩に関して語れるほどディープな雪歩Pじゃないw
そりゃアケ時代から長い付き合いだけどね。
とりえあず、穴掘って埋まってるときの雪歩の気持ちって、
一体どんななのかな〜って思ってみたり。その辺は正直考察が
足りてないので、あまりうまく表現出来なかったかも。今回は
完全にお城で待ってるお姫様役でした。
・・・さて、今のアケマスユニットが完走したら、お次は、
あずゆきで作ろうかしらね♪
ではでは、俺でした。
皆様、1日遅れましたが、メリークリスマス。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雪降る都会の繁華街。
12月24日。
肌を射抜くような冷たい風、商店から漏れるジングルベルの
音色、楽しそうに語らいながら互いの指を絡め合って道を往く
数多のカップル。
アイドル、三浦あずさには、まだ恋人がいない。
いつもなら、幸せそうなカップルたちを物憂げな表情で眺め
ながら、今年も運命の人が現れなかったと嘆いていただろう。
その気持ちが億劫で、外に出たがらないときもあった。
しかし、この日の彼女は違っていた。
見事に手入れされた、艶のある美しい黒髪を揺らしながら、
あずさは足早に繁華街の中心を歩いていた。
常にきょろきょろと周りを見回している。
表情には、不安と焦り。
普段の、のんびりおっとりした性格の彼女には珍しい。
「何処かしら・・・あの有名パティシエのお店」
あずさは、店を探していた。
事前に念入りに場所を調べて地図まで持ってきたのに、もう
何時間も探し回っている。
この日の仕事は、あずラジの収録だけだった。それが早目に
終わり、別の仕事に向かった仲間を見送ると即座にスタジオを
飛び出してお店探しを始めたのだ。
「早く見つけないと、夜になってしまうわ」
あずさには、迷子癖がある。
気が付けば遠く離れた見知らぬ土地に迷い込んでしまうなど
ザラで、あるとき電車の乗り間違いに気付くのが致命的に遅れ
数百キロ離れた別の地方に流れ着いたことすらあるくらいだ。
事務所の仲間は、日本が島国で無かったら国境またいで外国
まで行ってしまうかも知れないと、半分本気の冗談を飛ばす。
勿論彼女自身もそれを自覚しているため、周囲に迷惑を掛け
ないように、近頃は極力一人で外を出歩こうとはしなかった。
だが、今日は別だった。
現在話題の、有名パティシエのお店。
前日、電話で予約は済ませてある。あとは今日、店を訪れ、
ケーキを受け取るだけだ。
何としても今日中に目的の店を見つけて、ケーキを事務所に
持ち帰るのだ。
これは自分がやらねばならないと心に決めた、使命。
失敗するわけにはいかない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あずさを始め、様々なアイドルやアイドル候補生が所属する
765プロダクションの事務所。
いくつかの事務机に古いテレビ、そして何故か、炬燵。
殺風景なようで、どこかアットホームな雰囲気である。
だが暖房が壊れているのか、室内は凍えるように寒かった。
事務所の中には、誰もいない。
ただ一人、炬燵に包まるようにして暖を取る所属アイドル、
萩原雪歩を除いては。
「はぁぁ、この炬燵と熱いお茶が無かったら、私きっと明日
の朝には、凍死体となってみんなに発見されていますぅ」
心細さから、不安が口をついて独りごちる。
「でも、仕方ないよね。クリスマスイブなのに仕事を一つも
取ってこられない私が悪いのだから」
若い芸能人に取って12月末とは何かと忙しい時期であり、
また忙しい時期でなければならないものだ。
事実、他のアイドルたちは全員仕事で出ていた。
当然、アイドルたちのプロデューサーも居ない。
いつもは事務所にいる事務員の音無小鳥や社長の高木までも
この日はアイドルたちのサポートを始め、様々な用事や事情で
事務所を空けていた。
しかし、事務所に誰も居ないというのは何かとまずいので、
留守番として、オフの雪歩が呼ばれたのだ。
「あ〜あ、私はダメダメなアイドル、ダメドルなんですぅ。
こんな私は、炬燵の下におっきな穴掘って埋まってますぅ〜」
本当は雪歩も他の所属アイドルたちと大差無い人気を持って
おり、翌日は朝早くから仕事が目一杯入っている。そのため、
この晩は事務所で泊まり込むことにしているのだ。この日仕事
が入っていないのは偶々に過ぎない。
しかし、雪歩は臆病で後ろ向きになりやすいところがあり、
必要以上に自罰的な考えに陥ってしまいがちなのだ。それが、
一層寂しい気持ちを掻き立てる。
「どうせみんな、仕事終わったら帰っちゃうんだろうなぁ。
早く明日にならないかなぁ」
雪歩はぼんやりとテレビ画面を見つめながら溜息をついた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あらぁ〜?ここは何処かしら・・・?」
また、見慣れぬ場所だ。
これで何回目だろうか。
つい携帯を取り出して、ハッと動きを止める。
「そういえば、みんな仕事でした〜」
これも何回目だろうか。
見慣れぬ場所に出ること自体は、そう嫌いではない。散歩の
ついでに道に迷うというのは、様々な新しい発見が出来るのが
楽しいとすら思ったりもする。それに、いよいよ帰り道が全く
見当付かなくなっても、いつもであれば助けてくれる人が必ず
誰かしら居てくれる。心配なのは迷惑を掛け過ぎてしまうこと
だが、あずさの周りの人たちはみんな優しく、いけないと知り
つつも、ついついそれに甘えてしまうのだった。
だが、今日は違う。
仲間たちも、プロデューサーも、みんな仕事。
親友の友美も、今夜は外せない用事があるらしい。
「イブだけにね」と、友美は昨夜の電話で笑った。
・・・ともかくとして、みんな今夜は忙しいのだ。
さすがに、そんなときに迷惑を掛けることは出来ない。
事務所にいる、雪歩は?
それでは、意味がない。
雪歩を驚かせるために、喜んで貰うために、あずさは今こう
して寒い冬空の下を歩き回っているのだ。
事務所で一人留守番している雪歩に、誕生日兼クリスマスの
お祝いとして、絶品と評判のケーキを買うのだ。
事前にバレてしまっては、駄目。
なんとしても、一人でやり遂げなければ!
しかし、そう思えば思うほど、目的の店から遠ざかっている
みたいで、焦りは募り、不安は増していく。
あずさはとうとう、歩を止めてしまった。
「・・・仕方ないわ・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
事務所の電話が鳴った。
雪歩は震える手を伸ばし、おずおずと受話器に触れた。
事務所に居るのは、雪歩ただ一人だった。
電話に出るのは、事務員の仕事。
でも、一体何の電話だろう?
アイドルたちの仕事の連絡や伝言だったら、大した問題では
ない。仲間たちの声が聞けたら、少しは寂しさも紛れる。
だけど、クレームだったら、どうしよう?
当然、クレーム処理も事務員の仕事。
雪歩はクレームにも対応せねばならない。
だが、彼女は知らぬ人間と会話することが極端に苦手だ。
そこには物凄いストレスとプレッシャーが付きまとう。
しかし、彼女は言われたことを極力忠実に全うしようとする
タイプの、従順な女の子だ。
意を決して、雪歩は受話器を取った。
「もしもし、雪歩ちゃん?」
あずささんの声だ!
「あ、あずささん!?お仕事、お疲れ様ですぅ」
「いえいえ、雪歩ちゃんもご苦労様。事務所、寒くない?」
「あ、はい、ちょっと。でも、炬燵があるから・・・。あ、
あの、あずささん、もしかして事務所に?」
つい、期待がそのまま言葉として出てしまった。
「え?あ、や、その・・・ちょっと聞きたいことがあって」
相手は、道を尋ねてきた。
どうやらケーキを買うお店を探しているようだ。
「ああ、その店なら知っています。今、何処にいますか?」
他にすることもないので、雪歩は道順をひとつひとつ、手を
取り足を取りの要領でナビゲーターを務めた。本当に指示した
通りにあずささんが歩いているのか怪しいものだったが、暫く
奮闘した後、相手が目的の店を見つけたと喜びの声をあげた。
良かった、喜んで貰えて。
そう思ったのと同時に、受話器から蛍の光が聞こえてきた。
「大変!閉まっちゃう!雪歩ちゃんありがとう、じゃあね」
「あ、いえいえ・・・切れちゃった」
・・・それにしても、こんな遅くにケーキを買って、一体、
あずささんは何処へ行くのだろう?
そう思うと、暫く忘れていた寂しさが途端に大きさを増して
雪歩に圧し掛かるように襲い掛かってきた。
いいな、あずささん。
ケーキだなんて。
私は、ここで、一人。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これでいい。
あずさはケーキを買って、嬉しそうに頷いた。
これを事務所へ持っていく、雪歩と一緒にお祝いするなんて
言わなければ、まだまだサプライズになりえる。
後はこのケーキを持って、事務所へ帰られればいい。
・・・そう、帰られれば。
夜は更け、外気は一層寒くなって行く。
ホワイト・クリスマス。特別な日に街を彩る、綿雪の化粧。
幻想的な雰囲気に包まれた辺りの様子は、しかしこのとき、
白く湯気立つ吐息のもやにぼかされて、漠然とした不安として
あずさの胸中を緩く締め付けた。
もう、誰にも頼ることが出来ない。
ここから私は、本当に、一人。
知ってか知らずか、彼女は軽く身震いをした。
短く息を吐いて、事務所に帰る第一歩を踏み出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
光の明滅が、暗い事務所の壁に淡く反射する。
電気は付けていない。その方が、心が落ち着くのだ。
今、光源はテレビだけである。
「あ、出演している」
歌番組に、事務所の仲間が出ていた。
「やっぱり、上手いなぁ」
羨望のまなざし。
本当は雪歩も負けないくらい実力を付けてきている。
しかし本人はそれを自覚出来ず、自己の過小評価に囚われ、
賞賛の声すら素直に聞き入れることが出来ないでいた。
「ステージの後で疲れているだろうし、多分終わったらすぐ
家に帰っちゃうんだろうな。むしろこっちからお疲れ様でした
って電話入れるべきかな。でも、打ち上げとかあったら、突然
電話かけても迷惑だろうな」
引っ込み思案というのは、それだけ色々な配慮をしていると
いうことである。配慮しすぎて堂々巡りになり、それが自分を
苦しめることすらあるのだ。
「私が悪いんだ。無理にでも事務所に戻って来て欲しいって
思うから、こんなこと考えるんだ。もうやめよう」
雪歩は再び、ぼんやりとテレビの画面を眺めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「やっぱり・・・何故なの?何故、私は、こうも道に迷って
しまうのかしら?」
案の定、である。
周りの景色に、見覚えがない。
心細い。
途中、思い切って知らない人に道を尋ねたりもした。
だが、説明された内容は耳から耳へすりぬけるようで、説明
された通りに歩いたつもりでも、結局また迷ってしまうのだ。
先程雪歩がしてくれたみたいに、つきっきりで説明してくれ
ないと駄目なのだ。そしてそれは、さすがに知らない人相手に
お願いするのは気が引ける。
いつもであれば、誰かに電話して助けて貰わねばならない、
そんな状態だ。
しかし、この日のあずさは、一人なのだ。
そして、使命を帯びている状態でもある。
不安、焦燥、心細さ、無力感、情けなさ、そして、悲しみ。
今日は、雪歩ちゃんのために動いているのに。
道に迷っている場合では、ないのに。
どうして、私はこうなの?
どうして、道に迷いやすいんだろう?どうして、必ず誰かに
付き添って貰わないと、すぐ迷ってしまうのだろう?そもそも
何をするにしても、どうして一人じゃ何も出来ないのだろう?
結局今までも、友美、プロデューサーさん、周りのみんなが、
私を支えてくれたから、なんとかここまで来られたのだ。周囲
に甘えて、迷惑を掛けて、おんぶにだっこ。
当の私は、雪歩ちゃんの誕生日を祝いたい、ケーキを買って
事務所まで持っていきたい、それすらも出来ない、誰の役にも
立てない、本当に情けない。
雪の舞い降る夜空を見上げる。
ああ、なんて寒い。
きっと、一人で留守番している雪歩も、寒いだろう。
・・・だから今日、せめて今日だけでも、私はこのケーキを
雪歩ちゃんのもとへ持っていかなければならないのだ。
あずさは目を閉じて、大きく息を吸った。
よし、まだ、がんばれる。
再び開いた視線の先に、高層のホテルがそびえ立っていた。
「高いところから見れば、事務所の場所が解るかしら」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつのまにか、まどろんでしまったようだ。
テレビの音に目を覚ますと、辺りは、相変わらずの薄暗さ。
気だるいが、眠気は何処かへ消え去ろうとしていた。
「もうすぐ、真夜中なんだ」
やっぱり、誰も帰って来なかった。
事務所の炬燵の中で微動だにしない雪歩。
ここは、深い穴の中も同然。
誰も穴の中の雪歩のことなんて気に掛けてくれない。
孤独感、憂鬱、不安、無力感、情けなさ、そして、悲しみ。
価値がない人間だから。
この苦しみは、きっとクリスマスイブに仕事が取れなかった
私への罰なんだ。
私が悪いんだ。
加速していく後ろ向きな思考、短く速い呼吸、軽い吐き気。
普段安心感を覚えていたはずの暗さが、冷たい外気のせいか
逆に不安感を煽るようになっていた。
しかしそれでも、雪歩は電灯を点けようとせず、ずっと同じ
体勢のままうずくまっていた。
いつしか雪歩は、軽く肩を震わせていた。
「サンタさん、もしいるのなら。プレゼントは、要らない。
代わりに、この寂しさを、なんとかして欲しいですぅ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
高い場所から見下ろしても、結局方向感覚が更に狂うだけで
何の収穫も無いことに気付いたあずさは、結局再び寒い道路を
ふらふらと彷徨っていた。
時刻は、既に真夜中を回っていた。
「もう仕事が終わっている仲間もいるわね・・・」
あずさは、携帯に手を伸ばしたが、すぐに考え直した。
「いいえ、今日ばかりは、一人で頑張ろう」
意地になっていたのかもしれない。
今日ここで決めたことをやり遂げないと、一生このまま何も
変わらず駄目になってしまう、そのような思いが生じていた。
あるいは、冷え込みが一段と厳しくなった真夜中、思考まで
凍ってしまっていたのかもしれない。
その証拠に、ずっと雪歩と、雪歩にケーキを持っていくこと
以外考えられなくなっていた。
夜通し歩きっ放しで、本格的に疲れてきたのもあるだろう。
あずさは、弱々しく溜息をついた。
今日、何度目の溜息だろう。
そして、つぶやいた。
「サンタさん、もしいらっしゃるのでしたら。プレゼントは
要りません。ただただ、正しい道を、教えて下さい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
眠れない、午前2時。
「お腹、すいたな」
そういえば、もうずっと何も食べていない。
事務所にはお菓子や保存食の類が置いてあったが、炬燵から
出て取ってくる気が起きない。
お腹がすけばすくほど、眠れなくというのに。
眠れば、明日がすぐ来るといのに。
それでも、起き上ること自体がしんどいのだ。
だから、雪歩は相変わらず死人のような目でテレビの画面を
ただただ眺めるばかりだった。
どれくらい時間が経っただろうか。
突然、事務所の入り口のドアがガタンと大きな音を立てた。
続けて、ドスン、と、鈍い音がした。
このような夜中に、突然、大きな音。
尋常ではない。
「ひぃっ・・・!」
雪歩は急な事態に思わず息を呑んだ。
全身を強張らせ、金縛りにあったようにすくみあがる。
・・・怖い!
暫く息を潜めるようにして、耳を澄ませる。
すると、すすり泣くような声が聞こえてきた。
ますますもって、怪しい。
「な、何?何なの?」
どんなに待っても、すすり泣きは止まらない。
やはり、ただごとではない。
どうしよう?
怖いのは、何が起きているのか解らないから。
ならば、確かめればいい。
だけど、それも怖い。
どうしよう?
暫しの逡巡。
「落ち着いて、雪歩。怖くない」
雪歩はそうつぶやくと、ゆっくり立ち上がった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
眠ることを知らない、都会の午前2時。
あずさの体力は限界に来ていた。
そういえば、ずっと何も食べていない。
ただひたすらに事務所を目指して歩く、それ以外頭に無い。
しかし、ここにきて、ようやく身体中が自我に警告を発して
きていた。その信号は、無視出来ないほど強烈な苦痛を伴って
あずさの精神をずたずたに引き裂こうとしていた。
「でも、私は、雪歩ちゃんのもとへ行かなければならない」
手足の感覚がなくなってから、もうどれだけ経っただろう。
それでも、彼女の意志は決して揺らがなかった。
自分自身の身の回りに関しては割と抜けているところがある
あずさだが、他人のためとなると必死になることが多い。
自分より、まず他人を気遣う。
それが、彼女の基本的な性格だからだ。
その代わり自己主張が弱いため、それが裏目に出て損をする
ことがあるが、それで他人のためになっているのなら、それは
それで良いのかも知れない。そう漠然と思うこともある。
しかし、ケーキを事務所へ持っていくことが出来なければ、
他人のためになっているとは言い難い。ただの空回りとなる。
それだけは、嫌!
鉛のようにまとわりつく疲労感を振り払うように、あずさは
ケーキの包みを握り締め、両目を強く閉じた。
深呼吸して、目を開ける。
「・・・嘘」
目の前には、懐かしい光景があった。
事務所の入った、ビルだ。
「ああ、良かった・・・」
最後の力を振り絞って、近づく。
吹きさらしで雪に覆われた階段を、ゆっくり登っていく。
「でも、雪歩ちゃん、もう寝ているわよね・・・」
だけど、ここまで来たのだから、ひとまず様子だけでも見て
いきたい。ドアをノックして、反応が無かったら、折角だけど
仕方がないから、帰るしかない。
しかし、出来れば・・・起きていて欲しい。
最後の段を登り、万感の思いを込めてドアに手を伸ばした。
・・・あまりに気が急いたのか。
それとも、遂に踏ん張る力を失ったのか。
階段の雪に足を取られ、あずさは前のめりにドアに激突し、
糸が切れた操り人形のように力なく地面に倒れ伏した。
ケーキの包みの上に。
一瞬後、あずさは頭の痛みも忘れて急いで包みの上から身体
を離した。必死の形相で包みを手に取る。
しかし、後の祭りだった。
あずさは踊り場の壁にもたれかかり、包みを胸に抱いた。
口を半分開けた、呆けたような顔。
暫くして、涙がとめどなくあふれ出た。
表情を全く変えず、ただただ静かに泣いた。
頭の中は、真っ白になっていた。
ただただ悲しかった。
雪歩ちゃんに、申し訳ない。
ふと、そんな考えが頭をよぎった。
すると、一層涙があふれた。
鼻が詰まり、喉が詰まり、息が苦しくなって、むせた。
無表情での、すすり泣きに変わった。
吹きさらしの凍える寒さが身に噛み付いても、あずさは全く
動かなかった。
動けなかった。
どれくらい泣いただろう。
突然、ドアが開いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目の前には、見慣れた人物の、変わり果てた姿があった。
「あ、あずささん!?」
雪歩は急いで駆け寄った。
どうしてあずささんが、こんな時間に、ここで、疲れ切った
様子で泣いているの?
混乱。
とにかく、呼びかける。
「どうしたんですか!大丈夫ですか!?」
相手はぼんやりと虚空を見つめているような表情で、すすり
泣きを止めようとしない。
「あずささん!あずささん!」
肩を大きく揺さぶる。
相手の目の焦点が合ったような気がした。
視線と視線が絡み合う。
瞬間、あずさが目を大きく見開いた。
「雪歩ちゃん!」
「大丈夫なんですか?立てますか」
「雪歩ちゃん、ごめんなさい!」
「え?」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
あずさは壊れたテープのように「ごめんなさい」を繰り返す
ばかりである。
「どうしたんですか、何があったんですか」
「ごめんなさい・・・雪歩ちゃん、ごめんなさい」
「と、とにかく、中へ」
雪歩は無理矢理あずさ、事務所の中へ引っ張り込んだ。
「今、熱いお茶をいれますから。炬燵に入って下さい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
二人は、隣り合わせで炬燵に入っていた。
「落ち着きましたか」
「雪歩ちゃん・・・ごめんなさい」
「それはもういいですから、何があったかを教えて下さい」
催促され、あずさはゆっくり語りだした。
炬燵の中で、冬空の下の話を。
あずさは自身の空回りを、愚かな行動を聞いて、雪歩に呆れ
られるならまだしも、怒らせてしまうかも知れないと思った。
余計なお世話。
いい迷惑。
それが、自分のしたことだと思った。
一人じゃ何も出来ないくせに、下手に出しゃばって面倒事を
巻き起こすのが一番タチが悪い、始末に負えない。
こんな夜中に、雪歩に心配を掛けるようなことをした。
責められて当然である。
そう思っていた。
しかし、ここまで来たらもう全部話すしかない。
仕事を終えて、雪歩の誕生日とクリスマスを一緒に祝おうと
思い至ったこと。サプライズにしようと考えたこと。ケーキを
買おうとして、いきなり道に迷ったこと。結局たどりつけず、
雪歩のナビゲーションに頼ったこと。その後、一人で帰ろうと
決めて、更に迷ってしまったこと。ようやくたどりついたら、
ドアの前で転んでケーキを潰してしまったこと。
話しながら、どんどん情けない気持ちになってくる。
最後は再びあふれる涙をこらえきれず、むせびつつたどたど
しく語るのがやっとだった。
雪歩の反応は、あずさの予想とは異なった。
彼女は、途中から一緒に涙を流していた。
その反応に戸惑いながら、あずさは話を終えた。
すると、雪歩はぼそりと言った。
「全部、私の、ために?」
あずさはその言葉の真意が理解出来ず、曖昧に頷いた。
「え・・・ええ」
突然、雪歩が詰め寄った。
「あずささん、謝るのは私の方です!」
「え?何を言ってるの、雪歩ちゃん?」
「悪いのは私です!私が、サンタさんに、寂しさをなんとか
して欲しいってお願いしたから」
「そんな、だってこれは私が勝手に・・・」
「でも、あずささんが本当に来てくれて」
雪歩は涙を流しながら、微笑みかけた。
「ここまで、こんなにボロボロになってまで、してくれて」
「ゆ、雪歩ちゃん!?」
あずさは、突然しなだれかかってきた雪歩を受け止めながら
戸惑いの声をあげた。
「私、とっても寂しかった。一人でとっても心細かった」
そう言いながら、あずさの胸に頭を沈めてゆく。
そして、消え入りそうな声で言葉を紡いだ。
「だから私、とても嬉しい・・・」
「・・・雪歩ちゃん」
雪歩が顔を上げ、可愛らしい笑顔を見せた。
「あずささん、ありがとう。こんなに嬉しいプレゼントは、
無いです。本当に、本当に嬉しいですぅ」
それを聞いてあずさは胸がいっぱいになった。
思わず、雪歩を強く抱きしめる。
ぬくもりが、伝わる。
今までの不安や悲しみがとけていくような感覚を覚えた。
「そう言ってもらえると、私も、とっても嬉しい。お礼を
言うのは私の方よ。雪歩ちゃん、ありがとう・・・」
「ううん、私こそ」
二人は顔を見合わせて、くしゃくしゃの笑顔で「ふふっ」と
笑い合った。そして、どちらからともなく、言った。
「メリー、クリスマス」
そこに、あずさが続けた。
「誕生日おめでとう、雪歩ちゃん」
「ありがとうございますぅ。なんだか今までで一番不思議な
誕生日になっちゃいましたけど、でも、とっても嬉しいです」
そのまま、暫く見詰め合う。
すると。
二人のお腹が、同時に鳴った。
「あら、いやだわ」
「あずささん、お腹空いているんですか?」
「雪歩ちゃんも?」
「はい、もうずっと、何も食べてません」
「実は、私もよ。ああ、本当に不思議ね」
「え?何がですか?」
「私は迷子、雪歩ちゃんはお留守番。だけど、一緒なのね。
一人ぼっちで、心細くて。おまけに、お腹を空かせているのも
一緒だなんて」
「ああ、本当ですぅ」
軽く笑うと、雪歩が立ち上がった。
「あずささん、ケーキ、折角だから、まだ無事な部分を食べ
ませんか?形は悪くなっても、味が変わるわけじゃないと思い
ますぅ。あと、事務所にお菓子もたくさんありますよ」
二人だけのささやかなパーティーが、はじまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日、早朝。
事務所のドアが、そっと開いた。
765プロダクションの事務員、音無小鳥は、忍び足で中に
入った。背後には、所属アイドルたちが控えている。
昨日は例年類を見ないような忙しさで、どうしても事務所に
戻ることが出来なかった。雪歩に悪いことをした、そう思った
小鳥はアイドルたちと連絡を取り合い、お詫びの意味も込め、
朝、雪歩が仕事へ行く前にサプライズの誕生お祝いパーティー
を開こうと提案したのだ。
何故か、あずさとだけは連絡が付かなかったのだが・・・。
そのあずさが、どういうわけか、雪歩と抱き合うようにして
炬燵に包まり、眠っていた。
この光景を理解出来ず、小鳥は首を傾げた。
その後どう尋ねても、あずさは「また、道に迷っちゃって。
あ、でも、今回はサンタさんが正しい道を教えてくださったと
言うべきかしら〜」と意味の解らないことを言ってはぐらかす
ばかりで、雪歩もただただ笑うだけで答えようとしなかった。
おわり
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(至極余計な)あとがき
え〜と。今回のSSは以上です。
以下、下手すると物語の雰囲気ぶち壊しになりかねない俺の
駄文が続きますので、そういうのが嫌な方は回れ右を。
・・・では(こほん)。
まずは、山も谷も無いSSにお付き合い頂き、まことにあり
がとうございます!
え〜と、あずゆきSSです。俺が妄想するとどうしても百合
入っちゃいます。あやうく18禁モード突入しようとして思い
止まりました(ぉぃ
そして、中盤以降鬱成分入りまくりです。書き始めたとき、
こんなに後ろ向きな文章が連発されるとは思いませんでした。
思いつくがまま書き進めた結果なので、やはり俺の中には、
ああいう鬱屈した何かが潜んでいるのでしょう。普段どんなに
パゥワーパゥワー言っていてもw
構成そのものは、両アイドルの視点を切り替えながら進めて
いくもので、以前夏久尽未来さんとネット上であずまこ18禁
百合SSを一緒に創り上げたときのノリにヒントを得ているの
かも知れません(そちらでは相手が真、俺があずささんを担当
して、相手が先に進め、俺があずささんの視点でそれを書く、
というものだったので、構成そのものは違いますね)。
この話を書いてみて、案外あずささんと雪歩って似てる部分
も結構あるかもしれない、と思いました。っていうか、昔から
そう思っていたのが偶々形になったと言うべきですね。
それを、片方は冬空の下、もう片方は炬燵の中という対照的
な立場で表現出来れば、と、思いました。
うん、まだまだ文章力が青いですね〜w
で、話全体のテーマについて、ですが。
俺の尊敬するトールキン先生は物語に寓意性を含むのを避け
ようとしたので、俺もそれにあやかり・・・。
あいや、今回に関しては、一つだけあったw
それは。
結構あずささん=迷子キャラって考えで、公式・同人問わず
様々な作品で迷子にさせられていますけど、あずささんだって
好きで迷子になってるわけじゃねぇんだずぇ!不安や心細さを
感じて泣きそうになることだってあるんだ!あんま安直に道に
迷わせてるんじゃねぇ!面白ければ許す!(ぇ
・・・ってことです(何様
まぁ二次創作だし別に迷子になってもニコニコ笑って戻って
くるあずささんも俺は好きだし良いと思いますが、たまには、
あずささんが迷子中にどんな気持ちで居るのかも考えてよね、
ってなわけなのですよぅ☆
え?雪歩に関しては何かないのかって?
う、俺雪歩に関して語れるほどディープな雪歩Pじゃないw
そりゃアケ時代から長い付き合いだけどね。
とりえあず、穴掘って埋まってるときの雪歩の気持ちって、
一体どんななのかな〜って思ってみたり。その辺は正直考察が
足りてないので、あまりうまく表現出来なかったかも。今回は
完全にお城で待ってるお姫様役でした。
・・・さて、今のアケマスユニットが完走したら、お次は、
あずゆきで作ろうかしらね♪
ではでは、俺でした。
皆様、1日遅れましたが、メリークリスマス。