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キモヲタ☆ノーガード! #11

 8月17日、土曜日。
 俺がマリサに告白してから、5日間が過ぎた。
 この5日間、俺たちは両親が見ていない隙を狙い、繰り返し
互いの気持ちを確かめあった。彼女は全てにおいて俺の想像を
遥かに超え、その魅力を余すところなく俺の精神奥深くに焼き
付けるようにして刻み込んで行った。
 また、当然ながら限られた日数、忍ぶような恋、通常まるで
考えつかないような非現実的状況も大きく関与し、日を重ねる
ごとに互いの気持ちは急速に、限りなく燃え上がって行った。
 この間、彼女の俺への呼び方が少し変化した。
 それは、15日の木曜日、一緒にアキバに行った際だった。
 彼女は戯れに、俺を日本語で「お兄ちゃん」と呼んだのだ。
 その瞬間、俺は官能的なまでの興奮を覚えた。
 初めての感覚だった。
 それを伝えると、以来俺は日本語で「お兄ちゃん」と呼ばれ
続けることとなった。全く以って、悪い気はしないどころか、
とても喜ばしいことだ。
 時として控え目に、時として熱く、時として俺に纏わりつく
ようにして「お兄ちゃん」を連呼する我が恋人。
 ヲタとして妹属性は嗜む程度には好んでいたが、まさか現実
に享受する妹属性というのがここまで破壊力の強いものだとは
思わなかった。
 また、彼女には年齢の離れた弟が居たからか、マリサは時折
お姉さん属性的な側面も見せていた。
 例えば、俺がこの先の長く苦しい道を思って溜息をついたり
すると、包容・受容的な態度で俺に微笑みかけて、ただ優しく
抱きしめてくれたりもした。
 これは、まさに俺が長年「理想のタイプ」として挙げて来た
「年下かつ、姉と妹、両属性がリバーシブル」な人格だった。
 また、彼女はどちらかと言うとスローなペースを好み、俺を
あらゆる場面で癒し、落ち着かせてくれたりもしていた。
 「理想の女性像」として俺が長年想像の中で思い描いてきた
多くの人格的要素を、彼女は高い精度で兼ね備えていた。
 一緒に過ごす時間が長くなれば長くなるほど、俺に取って、
彼女という存在は奇跡であると確信するようになって行った。
 彼女を、大事にしたい。
 その想いは、ますます急速に募って行った。
 告白してから5日目のこの日、俺は両親に報告すべしと意思
を固めた。偶々、スパークリングワインとチーズを買って家で
少しだけ呑もうということになっていたので、酒の勢いも少し
借りられるだろうと俺は踏んでいた。
 このまま両親公認にしてしまえば、両親の前でコソコソする
必要もなくなるだろうと俺は思った。
 しかし、俺は少し怖かった。相手の両親ともども互いに子を
紹介し合うことで合意はあっただろうが、僅か10日間で告白
したというのは、彼らの価値観からすれば如何なものか?
 時期尚早ではないのか?
 しかし、カンの鋭いおふくろ様相手に一体どこまでこの関係
を隠し通せるのか。ならばいっそのこと、カミングアウトして
しまった方がお互い楽では無いのか。
 それに、交際が認められれば、我が両親は一層彼女に対して
大事に接してくれるだろうと俺は考えていた。俺が滋賀へ行き
彼女が一人で東京に残った際、今まで以上に家族同然に扱って
頂けるのなら、彼女は今までより一層安心して滞在して貰える
のではと俺は考えた。
 だから俺は、お酒が少し進んだ頃、意を決して言った。
 「親父。おふくろ。言いたいことがあるんだ」
 俺はマリサの肩を軽く抱き寄せ、ゆっくりと宣言した。
 「俺達、実はもう付き合っているんだ」
 両親は、驚いた。
 だが、すぐに歓迎ムードとなった。
 「これはめでたい、お祝いしないと」と、そう言って親父様
は冷蔵庫に眠らせてあった日本酒を取り出した。
 「本当、乾杯しないと。これからも息子をよろしくね」
 おふくろはそう言って、皆がグラスを重ねた。
 小気味良い乾杯の音色。
 それは、とても幸せな瞬間だった。
 しかし、暫くして唐突に、おふくろは言った。
 「相手の父親にも御報告しないと」
 俺は少し焦った。
 相手の親への報告は想定すべき事態だったが、この時の俺は
とにかく自分の親に報告することで頭が一杯だったのだ。
 しかし、事態はあれよあれよと進み、俺は何を言おうか決め
られない状況のまま、手に受話器を握らされた。
 「どうしよう、俺中国語でなんて言っていいか解らないよ」
 そう言う俺に、マリサも困惑顔だった。彼女も、事態の進行
の速さに付いて行けない様子だった。
 それほど、親の対応は迅速だった。
 「もしもし」
 受話器の向こうで、親父の義兄弟、俺が叔父と呼ばねばなら
ない彼女の父親が、イケメンボイスで出てきた。
 「叔父さん」
 その時、俺はとにかく感謝を伝えようと決心した。
 「叔父さん、マリサを日本に送ってきて本当にありがとう」
 その瞬間、叔父さんは豪快に笑いだした。
 そうか。全部最初っから解ってたんだな。
 叔父さんも、俺の両親も。
 「マリサを俺のもとに送って来てくれて本当にありがとう」
 叔父さんは、とにかく豪快に笑い続けていた。
 「言葉でこの感謝の気持ちをどう伝えたら良いのか解らない
けど、とっても嬉しいです。ありがとうございます」
 「そうかそうか。いいぞ。これからしっかり頑張りな」
 叔父はそのようなことを言った。一体何をしっかり頑張れと
発破を掛けられたのか、一瞬理解出来なかった。だが、きっと
俺が医師国家試験を控えた身で、そうした将来の事を含めての
エールだったのだろう。
 「はい、本当に感謝してます。それでは、電話代わります」
 俺の様子を見ていた彼女は、ずっとにこにこしていた。
 後は、親同士が話をする番となった。
 「後は若いモン同士に任せるしかなかろう」みたいなことを
親父様が言ったような気がするが、あまりよく覚えていない。
 ただ、一つ肩の荷が下りたような気分で、ホッとした。
 「ははは」
 「ははははは」
 気が付けば俺とマリサは見つめ合い、笑っていた。
 それは、とっても幸せな瞬間だった。
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