冒険世界の舞台設定
2015.03.31 Tuesday
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レヴォラコント第弐期/TOP(http://zenon.jugem.cc/?eid=5761)
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レヴォラコント第弐期の、スタート時点における冒険世界の舞台設定を略説する記事です。現時点では第壱期との相関は不明です。
地図データはゲーム「Age Of Wonders 2」の地図作成ツールを用いてデザインされています。
地域地図は、こちら:
地域地図
地球で言えば南半球に相当する位置付けの、東西2000km強、南北1400km強の地域が今回用意された冒険の舞台となります。人々が南方の地(フェラゾザイン ナセロンド)、または単純に南方(フェラズ、またはゾ フェラズ)と呼ぶこの地域は山岳地帯が比較的多く、東西400km程の草原、東西600km程の砂漠、南へ行けば永久の冬に閉ざされた豪雪地帯なども存在します。
世界全体の地図は現在のところ完全設定する予定は無く、地球と同じような1日24時間の惑星上の世界ということにしていますが、この辺りの設定は現状未定です。
上記地図の記号解説は、こちら:
記号解説
1)首都、都市、町(白塔が描かれているものは首都を表します)
2)村(人口500人以下)
3)鉱山
4)防衛施設(塔とは限らず、砦や城塞、常設陣地等を含みます)
5)根源の樹(オルファス=エルフの森であることを指します)
6)ラケルタ(蜥蜴人)部族の本拠地
7)ブーカ(妖精)の生息地
8)アンギス(四腕蛇人)部族の本拠地
9)遺跡、廃墟
10)龍の所在地
次に、設定されている国や地域の略説が、こちら:
世界地図(地域番号付)
1)クーランギム(虹)共和国
首都ザリス=クーランギム(虹の都)を頂点とした新興国です。
種族や民族の融和を唱えるクーランギムと名乗る魔法使いを指導者とし、ヒト、オルファス、アンギス、ラケルタ、ブーラーラ、ジャナクス、ガイザス アイクだけでなく、本来なら人間に敵対的なはずのコボル、ゴブ、ヴォルク、トロルをも含んだ多種族からなる民衆は彼を「神の使者」と呼んで崇め奉っています。
この国家は共和国を名乗っており、名目上ではクーランギムが絶対君主というわけではありません。民衆により選ばれた各都市や村の長(地位レベル3〜6)がそれぞれの意向と信任を託した代表議員たち(地位レベル2、都市の定住人口によって送れる人数が決まる)を首都に 送り、その代表議員たちで形成された国家議会によって国家運営が為されています。そして5年に1回、首長選任式で代表議員たちによる投票が行われ、指導者・国家元首としての総議長(地位レベル7〜8)が代表議員の中から選ばれます。クーランギムは首都ザリス クーランギムの代表議員として常に満場一致で国家元首に選ばれ続けているのです。
人口は国家全体で約40万人、首都以外の主要な人口集積地は港湾の町スナグワ、ヴォルクの女王が治める城塞都市ジンジーク、緑の染物で有名なウグスダの町で、他にも多数の村々が点在しています。また、ラケルタの“虹の部族”や“自由を愛する部族”、オルファスの森であるマエズロス ガイク ネナシア(熊谷の森)も共和国の傘下に入っており、それぞれ代表議員を首都に送っています。マエズロス ガイク ネナシアの北方に位置するグレヴァスの都市国家、カヴェプ チャロプ(鉄槌)はこの連合に加わっておらず、防備を固めながら静観を続けているようです。
本来、ザリス クーランギムはア・ギーバという民主議会制の都市国家でした。スタート時点より40年ほど前、非常に強力なゴブ王が現れて南にある都市国家ランバートを瞬時に滅ぼし、余勢を駆ってア・ギーバに迫りました。この危機に際し、突如現れたクーランギムは大勢が見ている前でゴブ王を魔法の力で屈服させ、一躍救国の英雄となりました。当時ア・ギーバを治めていた時の総議長メッサンノ・ラディカイはクーランギムを最高の礼で迎え入れ、数年後にはクーランギムが総議長に選ばれることとなりました。その後まもなく、クーランギムは少ない例外を除き、ほぼ平和裏に近隣の都市国家を次々と傘下に組み入れ併合することに成功し、ア・ギーバの版図を非常に広く大きく拡大した上で現在の政治体制に移行させました。そして遂には、かつて西の都市国家ジンジークを滅ぼして占拠したヴォルクの女王をも参加に引き込むことに成功したのです。この奇跡的な所業は圧倒的熱狂を以って民衆に称えられ、その人気に後押しされて国家議会は国家名をクーランギム共和国、首都の名前をザリス クーランギム、そして年号をもクーランギム暦に改めることを承認したのです。
クーランギム暦元年、クーランギムは魔法の力で首都の空にずっと消えない巨大な虹を顕現 させ、その虹のふもとで全ての種族や民族の融和を唱える大演説を行い、民衆の絶大な支持を得て「神の使者」と言われるようになりました。民衆の中にオークやゴブリンが混じるようになったのは、その後のことです。以来、クーランギムは30年以上もの間、共和国の指導者として指導的立場に座り続けているのです。
クーランギム共和国では、宗教組織の存在が許されていません。神殿など宗教的な建造物は存在しますが、それらは国家によって歴史的建造物など観光施設として運営されており、参拝する者もいますが、教団などが存在しないため祭祀など宗教的活動は行われていません。かつて都市国家ア・ギーバの時代は様々な宗教組織が混在していましたが、クーランギム共和国が成立して以降、いつのまにかそれら組織は消滅しています。これまで、宗教組織の消失に関して何らかの抗議活動などの動きは表面上起きていません。宗教そのものが禁止されているわけではなく、人々はそれぞれの信仰を思い思いに続けている状況ですが、そうし人々の信仰をまとめ導けるような宗教的人物や組織などは現在のところクーランギム共和国には現れておれず、またそれを必要とする声もあまり聞かれていません。
スタート時点の年号はクーランギム暦32年、即ちクーランギムの総議長としての第6期。この国家が現在の形態になって、未だ30年ほどしか経っていません。
2)シャズディース女王国
女王都シャズディースと鉱山都市チョラン ケファッ(双連)を中心とした、人口約25万人ほどの尚武の国です。もともと主要都市は女王都シャズディースのみでしたが、緑川紛争に関連してチョラン ケファッを併合したのを契機に(後述)、近年領土拡大を目論んでいると噂されています。
女王シャズディースはアンギスですが、ヒトやドワーフが主要な構成種族である(ブーラーラも少数だが根付いている)この国で絶対的とも言えるカリスマを以って君臨しています。それも当然、彼女は優れた戦士揃いのアンギスの中でも桁外れに強大無比な戦闘能力を誇り、かつてたった一人でヴァルジェディラ(煉獄)に入り紅龍“炎王”サティナロを屠ったという伝説級の偉業を成し遂げたのが世に知られ、フェラズ最強の個体と呼ばれているのです。尚武の国を率いるにこれほど相応しい人物は居ないでしょう。
シャズディース女王国では信教の自由が保証されています。人々の中にはフレグラス アズ王国で崇められている闘神ギルシャムなどの乳白天の神々(後述)を崇拝する者、乳白天の神々から派生したダイワ神群(後述)を信仰する者、ウィナスラス リアナイラル王国で盛んな四神教(後述)に従う者、確固たる教団や教義の無い先祖崇拝を行う者、独自の神を祀る者、特に宗教的素地を持たない者など様々な宗教的価値観が混在・共存しています。女王シャズディース自身は「数多の神が存在し、万物それぞれに神が宿る」という自然崇拝に近い思想を持っており、そのためすべての宗教を容認出来る寛大さを持つのだと言われています。
スタート時点の年号は徳王暦315年であり、シャズディースによる統治は現在115年続いています。
−−−緑川紛争について−−−
クーランギム歴27年、徳王歴310年、クーランギム共和国とシャズディース女王国およびその同盟国のマエズロス ファイ オルファス(海エルフの森)との間で緑川紛争と呼ばれる争いが勃発しました(米軍の紛争分類で「中強度紛争」の状態)。その原因はクーランギム共和国領のウグスダの町と鉱山都市チョラン ケファッおよび海エルフの森との間の、川の汚染を巡る確執にあります。
争いの更に5年前、ウグスダ湖の湖岸に群生する猛毒を持った植物を原料とした、鮮やかな緑色の染料が発見されました。この染料で染められた布類は光の下ではキラキラ光り、夜闇でもうっすら発光する特性があり、瞬く間に大流行して近隣諸国からウグスダ染めの衣料を求め商人が殺到するほどでした。しかし問題は、この染料を使った後に発生する大量の廃液が町の側を通る川へ捨てられていたことです。染料は川の色を緑色に変化させ、このため、川は緑川と呼ばれるようになりました。そして、廃液を投下された緑川の水は飲み水にも農業用水にも使えない、両岸の草木を枯らしてしまうほどの毒の川となったのです。
緑川は、ウグスダからチョラン ケファッの側へと流れて行きます。更にその下流は海エルフの森の外縁に隣接しています。このためチョラン ケファッと海エルフの森はウグスダに対し、廃液を川に捨てないよう求めました。しかし、せっかく新たな大収入源となった染物文化が易々と放棄される道理がありません。交渉は延々と平行線をたどり、遂にはチョラン ケファッと海エルフの森からの武力行使という形に行きついてしまいました。
チョラン ケファッは元々どの勢力にも属さない独立都市でしたが、海エルフの森による加勢を受けてなお緒戦の旗色が悪く、敗北を重ねて逆に追い込まれてしまいました。そこでチョラン ケファッは海エルフの森の同盟国であるシャズディース女王国の支援を望みました。これに対し、最終的にチョラン ケファッは自治権を保ちつつもシャズディースを宗主国と仰ぐことを条件として援軍を得ることに成功しました。こうなるとウグスダとしては多勢に無勢、一時はその 命運もこれまでかというところまで行きましたが、ここでクーランギム共和国がウグスダの併合を宣言し、町の保護に軍を送りました。結果、紛争は泥沼の長期戦となり、一進一退の攻防の果てに双方作戦能力の限界を迎え、現在戦場ヶ原を挟み両軍が睨み合う膠着状態となっています。
−−−乳白天の神々について−−−
乳白天の神々
乳白天の神々とは、遥か大昔にゾ フェラズ中央部に存在したミッダース王国で崇められていた十二柱の神々です。ミッダース王国はすでに滅亡しておりますが、その遺跡は現在もシャズディース女王国とクーランギム共和国が対峙する戦場ヶ原の北部に存在します。
十二柱の神々について、簡単に記します:
祖神3柱
・大空神シュナン
男神。霊の相。東北東の方角。大空と生命を司ります。神々の父で、大地神ムーサと交わり、ダオカ、アゴア、マイア、イチョルカ、ミューロクの大神5柱を残しました。主神であり、自由奔放な乳白天の王とされます。
・大地神ムーサ
女神。地の相。北北東の方角。大地と婚姻を司ります。神々の母で、大空神シュナンとの間に5人の子を設けました。シュナンとは争いが絶えないものの、力を合わせて滅の方角(東北)を鎮護しています。一部の人々の間では、本当の主神はムーサとされることもあります。
・海神ダイワ
女神。水の相。北北西の方角。海と収穫を司ります。姪であるアゴタと共に陰の方角(北西)を鎮護しています。子は居ないとされますが、リゲスケールの信仰(後述)では、甥であるミューロクとの間に数多の神々を産み、乳白天の神々が去った世界でダイワ神族の頂点に君臨する主神とされています。
大神5柱
・太陽神ダオカ
女神。天の相。東南東の方角。太陽と炎を司ります。最初に生まれた長女で、マイアと交わり、火炉神コングァを産みました。甥のギルシャムと共に光の方角(東南)を鎮護しています。
・月神アゴタ
女神。天の相。西北西の方角。二つの月と氷を司ります。次女。マイアと交わり、軍神ヒェイアを産みました。マイアに最も気に入られており、追い掛けられることが多いとされます。そして月の満ち欠けは、アゴタがマイアから逃れるため二つの月を行ったり来たりしているからだと言われています。
・性愛神マイア
両性具有の神。実の相。西の方角。愛と性を司ります。三女。2人の姉、1人の妹と交わって子を産ませている他、弟のミューロクとも交わり、自分自身も闘神ギルシャムを産んでいます。父親以上に自由奔放で、特に性愛に貪欲なため誰とも、何とでも交わり、神々だけでなく多くの種族の起源と言われています。
・豊穣神イチョルカ
女神。霊の相。東の方角。豊穣と成長を司ります。四女。マイアと交わり、鍛冶神ファルナムを産みました。父神に最も可愛がられており、そのため十二神の円陣における方角も父の隣を頂いています。
・夢神ミューロク
男神。水の相。北の方角。夢と詩歌(うた)を司ります。末弟。マイアと交わり、闘神ギルシャムの父となっています。母であるムーサや叔母のダイワに最も可愛がられているため、十二神の円陣ではその間に鎮座しています。リゲスケールの信仰では、その後叔母のダイワと互いに深い愛を抱くようになり、数多の子を設けることとなっていますが、しかしその過程で自らの神性を注ぎすぎてしまったため、最終的にすべてをダイワに託して霧散消滅したとされています。
孫神4柱
・火炉神コングァ
女神。火の相。南の方角。火炉と家庭を司ります。ダオカとマイアの子で、一家の安寧、心身の健康、温かさと癒しを与える神であり、医学の神とも言われています。鍛冶神ファルナムを愛しますが、二人の力を合わせて作ったものは度々ファルナムから軍神ヒェイアに贈られてしまいます。
・軍神ヒェイア
女神。実の相。西南西の方角。軍と規律を司ります。ファルナムと共に破の方角(南西)を鎮護しています。ファルナムに貢がれるのは、満更でもない様子です。
・鍛冶神ファルナム
男神。地の相。南南西の方角。鍛冶と創作を司ります。コングァ、ヒェイアとの三角関係の中で、愛するヒェイアに気に入られるためコングァの火炉を使って物作りに勤しんでいます。コングァの気持ちには、残念ながら気付いていない様子です。
・闘神ギルシャム
男神。火の相。南南東の方角。闘争と鍛錬を司ります。十二神の中では一番若いとされています。フレグラス アズのギルシャム信仰では、他の神々が少しずつ力を失って行く中で若く力のあるギルシャムに主神の座が譲られたとされています。
3)ミルファス ジェファノラン(狼の園)
クーランギム共和国とシャズディース女王国との間に存在する、緑豊かな高原地帯です。
ここには無数とも言える数の狼が高原各地に散らばって生息し、様々な規模の群れ単位でまとまっています。その中には数万匹を超える最大の群れの存在が知られていて、この群れは1年掛けて東北部にあるレラクス=ミルファス ワイマル(狼頭山)および三日月湖と南西部にある満月湖との間を8の字を描くように周回しています。
狼たちに交じって、狼から人間に姿を変えるライカンスロープの存在が知られています。しかし、彼ら全体としての目的など詳細は一切不明で、危険な地域として敬遠されています。
4)フレラグラス アズ(炎盛る氷)王国
最も南方に位置する、厳寒の高地国。
聖都メスギリアスを首都とする宗教国でもあり、人口のほとんど全てが乳白天の神々の一柱である闘神ギルシャムを信仰しています。ギルシャムは神剣ワイノラン フレル(天の炎)を持ち、背中に大楯と弓を背負った勇ましい戦士の出で立ちで知られます。
この国はギルシャム神殿の高位司祭12人からなる評議会によって運営され、このメンバーの中から最高位司祭を兼ねる王が彼ら同士の協議で決定されます。王以外の11人はそれぞれギルシャム以外の乳白天の神々の一柱が割り当てられ、その神をも合わせて祭祀を執り行います。また、ギルシャム神殿は祭祀を執り行う場所以外に戦技訓練所を兼ね、全国民は男女の別なくギルシャム神殿で子供の頃から戦士となれるよう徹底的に仕込まれます。
この国は資源に乏しいことで知られています。鉄鉱は採れますが年間産出量は少なく、港町ヤダバールでの漁業も収穫高は限られています。火山地帯であり地熱から出た天然の温泉はそれなりに有名ではありますが、好んでこの厳寒の国を訪れる旅人はそう多くはありません。そんなこの国の経済を最も支えている要素が、外国へ送り出される大勢の傭兵たちです。氷と炎の王国の傭兵は屈強剛勇かつ任務に忠実で、高値で取引されるのです。 現在の王はアイグロス・ザセラル(鷹の星)というオルファス語の名前を持つ傭兵隊長あがりの異邦人ですが、彼もまた度々自ら傭兵部隊を率いて外国の戦場で武勇を振るうことがあり、彼が不在の間は彼に絶対の忠誠を誓う評議会が代わりに政治を行います。現在はシャズディース女王国が一番の取引先ですが、ウィナスラス リアナイラル王国や淡水海の都市国家連合にも傭兵は送られています。なお、クーランギム共和国とは現在のところ取引がありません。
スタート時点の年号は戦神暦473年。幼少期をオルファスの森で過ごし育てられた初代英雄王エルデリオン・ガンドールが闘神の啓示を受けて建国してから473年が経ったことを意味し、フェラズで最も歴史の古い国です。なお、初代王自身がそうであったように、一夫多妻制の国でもあります。これは、外国へ送り出す傭兵が男性に限られているため、国内の男性が少ないという事情にも合致しています。その事情もあって、国を守備する兵の大部分が女性で構成されています。
5)“復讐を遂げる部族”勢力圏
クーランギム共和国南西に本拠を構えるラケルタ部族で、共和国とは敵対しています。
スタート時点から30年前、クーランギムは“自由を愛する部族”併合に動きましたが、その最中に当時の部族長“賢者”ゲシュタが謎の失踪を遂げました。その後、ナンバー2の“せっかち”なルッグが部族をまとめてクーランギムの傘下に入りましたが、ゲシュタが殺されたと信じる者たちが一族を半分に割る反乱を起こし、最終的には鎮圧されました。反乱分子の大部分は南西の荒れ地へと逃れ、ここでかつての族長の復讐を誓ったのです。彼らからすれば、クーランギムの傘下に入ることは自由を愛する部族という名前と誇りに対する裏切りであり、敬愛するゲシュタの殺害に等しいくらい許せないことなのです。
現在彼らは新たに族長となった“漆黒の翼”、ルガを中心にゲリラ戦を展開しながら機を窺い、なるべく数を増加させようとあらゆる手段を模索しています。
6)“北を睨む部族”勢力圏
ウィナスラス リアナイラル王国の南に本拠のあるラケルタ部族です。
クーランギム共和国とシャズディース女王国の間にある戦場ヶ原とウィナスラス リアナイラル王国に挟まれる一帯を勢力圏としており、領土拡大の野心にあふれています。ただし彼らは南方には目もくれず、もっぱら北へ攻め込もうとしており、何度失敗しても飽き足らずに挑み続けています。
7)淡水海の都市国家連合
淡水海と呼ばれるフェラズ最大の湖、その周囲にある都市国家群が相互防衛条約を互いに結んだもので、有事の際に軍隊を送り出すという盟約と淡水海を介した交易が活発である点を除けば政治的な連帯は薄く、独自にそれぞれ領地を治めている状況です。
現在はジラン ブェナスウェ(金咒符)、エナスゾラ(錬金術)、アナス ヴァセジャド ファイ(静海の島)の各都市国家、北部の山中にあるグレヴァスの町カファン キゴン(天弓)、そして更に北に位置するジャナディーのアンギス集落によって構成されています。かつては淡水海東北部にあるレスタルカの町も加わっていましたが、現在は淡水海沿岸の漁村フィアナともどもウィナスラス リアナイラル王国に編入されています。
淡水海は別名をヴァセジャド ファイ(静海)と称されるくらい水面が穏やかなことで知られ、周辺の国々の関係も同様に波風立たない穏やかなものです。ただし、そのすぐ北方に竜の狩場と魔龍の荒らし場があり、また淡水海周辺も魔物や魔族の住み着き易い地域であるため、各都市は常に備えを厳重にしています。そんな彼らに取ってグレヴァスの町カファン キゴンの武具職人たちの存在は非常に頼もしいもので、グレヴァスというだけで何かと優遇されることが知られています。
都市国家連合の人々は淡水海を治めるとする龍神ヴァセジャドと山神アッ・ダンを崇めていて、各神に関連する祭日が設定されています。それぞれの神殿も各都市にあり、教育機関を兼ねています。また、少数ながら四神教の信者も存在します。
龍神ヴァセジャドは善なる龍で、今も淡水海の底に佇むとされています。淡水海が静かなのは龍が慈悲深いからであり、もし祭祀を怠って逆鱗に触れたら淡水海は恩恵をもたらす現在の姿から一変、破壊と滅びを撒き散らすと言われています。龍神ヴァセジャドは、水龍“淡水”グラティネ・ブとも呼ばれています(逆にこちらが真の名であるべきですが、この地の人々は龍神ヴァセジャドとして呼ぶことに親しんでいます)。
山神アッ・ダンは狩人の出で立ちをしたグレヴァスの男神で、大弓とつるはしを持っています。グレヴァスの場合、弓と言えばクロスボウを選ぶ者が普通は多いのですが、カファン キゴンのグレヴァスは山神アッ・ダン信仰の影響で大弓を手に取る者が比較的多く見られます。
スタート時点の年号は同盟暦196年。レスタルカの脱退はこれより60年以上前のことで、現在レスタルカを同盟の一員と考える人間はもはやほとんど居ません。
8)ウィナスラス リアナイラル(聖槍)王国領
スタート時点現在、聖暦150年。
聖槍王ヴァネス・ディーパがその類稀な武力で以って王国を打ち立ててから、150年が過ぎました。フェラズより北方にある聖都ディーパ(地図では未表示)を中心にフェラズのどの国々より広大な版図を持つ大国に成長した王国はその勢力を更に南へ拡げるべく画策を続けていますが、現在は“北を睨む部族”にその南進を阻まれています。淡水海方面に関しては、レスタルカの町に対する大規模な魔物の襲撃があった際、都市国家同盟の援軍が到着する前に救援したことで町を傘下に引き込んだ過去がありますが、南方で“北を睨む部族”と戦っている状況で更に都市国家同盟と敵対する意思は王国にはなく、その後の外交努力で関係は改善しました。
ディーパ王家の紋章は、交差する二本の長槍です。これは聖槍王ヴァネスが同時に二本の長槍を自在に操った豪傑だったことを表します(王家に伝わる“聖槍”は二本存在します)。ヴァネスは“金剛身”の素質を持っていたことで知られていますが、聖槍王の没後、王家に“金剛身”を素質を持った者は未だ誕生していません。
王国の主な宗教は四神教です。これは魔法という超常の力を一番最初に発見ないし創造した伝説の大魔導神ノエルを主神とし、その3人の弟子とされる破壊神ロゥガ、創造神ヴェシャ、時間神ゼノンを副神としたもので、フェラズで信仰する者は多くありませんが、それより北の地域では信者の多い主要な宗教として知られています。
9)マエズロス フーラン ナサイブ(緑葉の森)
ウィナスラス リアナイラル王国南部に位置するオルファスの森です。王国とは建国以来の友邦であり、王国の関係する戦争で度々援軍を供出しています。
この森出身のオルファスには戦闘技術に長けた勇猛果敢な戦士が多く、現在の森の長であるナサイバも若かりし日のヴァーナス王の傍で戦い、彼が聖槍王と呼ばれるに至るまでの道のりを共に歩んだ建国の功労者でした。
10)マエズロス ファイ オルファス(海エルフの森)
シャズディース女王国の北部に位置するオルファスの森。森林と同時に海洋をも愛する一族が暮らしています。
女王国とは長年の同盟国で、ウグスダ、緑川を巡る紛争では共にクーランギム共和国と敵対し軍隊を派遣しています。この争いで、共和国に属する熊谷の森の軍勢とオルファス同士による殺し合いを演じてしまっています。
この森のオルファスたちの造船・操船技術や航法知識は卓越していて、リゲスケール湾内を巡る海上交易網の一翼を担って女王国に多大な恩恵をもたらしている一方、活動範囲を更なる外海に広げて遠洋航海に出ることでも知られています。
11)リゲスケール島国
リゲスケール湾の真ん中に位置する、リゲスケール島。
そこにある海洋都市リゲスケール、ラケルタの“大海の部族”、サナンドーラのアンギス集落、そして周辺二つの島を全部合わせてリゲスケール島国と呼びます。
リゲスケールとは、島を発見した女海賊ルーファ・リゲスケールから来ています。海洋都市は彼女の子孫、“大海の部族”は彼女の一番の部下だった“海王”ビゼの子孫が代々治め、アンギス集落は彼女の盟友サナンドーラが未だ長として生きています。この三者は最年長のサナンドーラが一歩引く形で、原則的に互いに対等として島を共同統治しているのです。
元々紅玉諸島の海賊だったルーファは島に移住後海賊業から足を洗い、以後海洋貿易で富を成すようになりました。その過程で彼女は貿易の妨げとなる紅玉諸島の他の海賊の根絶に力を尽くし、彼女の孫の代に目的は完遂されたと宣言されています。
リゲスケールの民は「乳白天の神々」の一柱である海神ダイワを崇めています。海神ダイワは、他の地域では見られない三連装の巨大なヘヴィ・クロスボウを左手に持ちトライデント(三叉の槍)を右手に持ったヒト型の女神で、赤と白を基調とした衣裳と深茶色の腰まで垂れる長い髪を後ろで結わえた出で立ちで知られます。即ち、彼女は海洋での狩猟を司る女神でもあるのです。なお、リゲスケールにおけるダイワ信仰は独自の発展を遂げており、ほかの地方で見られるものとかなり異なるところがあります。ここでのダイワは甥である夢神ミカッソとの間に数多の子孫を作ったとされており、その子孫達と共に「ダイワ神族」と呼ばれる神群を形成し、信仰を集めています。
スタート時点の年号は海神暦189年。紅玉諸島の海賊壊滅宣言から100年が過ぎましたが、近年再び紅玉諸島を根城とする海賊が出てきたという噂が人々に不安の影を落として居ます。
12)ブーラーラ・ヴァレケマラフ(妖精の楽園)
フェラズ最大のブーラーラの居住地。現在はマグラス ブーラーラである真夏の夜のティタが治めています。
妖精の楽園には様々な地方からブーラーラ以外の種族も多数移住し、ティタに忠誠を誓っています。そして、楽園を外敵から守るために防衛軍を結成しています。
妖精の楽園はウィナスラス リアナイラル王国領、海エルフの森、都市国家リゲスケールなどと海洋貿易を行っています。魔力の強い妖精たちの中には道具や武具に魔法を付与する力を持つ者も多く、そうした品々は諸外国に高値で取引されています。
妖精の楽園に年号という概念はありません。そうした国家のしがらみから解放される場所だからこそ、楽園と呼ばれるのです。
13)ヴァルジェディラ(煉獄)
かつて、紅龍“炎王”サティナ・ロが本拠とした広大な火山地帯です。その中心部に龍の名を冠したサティナ・ロ三連山が絶えず大規模な噴火を続けており、煉獄の範囲は年々僅かずつ拡大しています。
サティナ・ロは様々な魔族や魔物を従え、また“龍を崇める部族”というラケルタの部族も支配下に置いていました。彼は西へ勢力を拡大しようとしていましたが、200年前、その野望はたった一人の無謀な挑戦により潰えました。アンギスの女勇者シャズディースが単身煉獄に乗り込み、自らも瀕死の重傷を負いながらサティナ・ロの打倒に成功したのです。
シャズディースはサティナ・ロを殺した後、なんとか自力で山中を文字通り這うようにして抜け出し、火山灰に覆われた平地まで出た所で完全に動けなくなるほど消耗しきってしまいました。そこへ、サティナ・ロに従っていた残党が大挙して襲来しました。もはやこれまでか、とシャズディースが覚悟を決めたその時、彼女の後を追跡していた都市国家サグラス マスラニエ(徳王)当時の王子が軍勢と共に救出に現れ、これを恩義に感じたシャズディースは以降この王子に忠誠を誓うようになり、最初は将として、そして王子が王となった後には王妃として国に尽くすようになり、終に夫王の寿命が尽きた後に、国民の圧倒的支持を得て女王として即位したのです。
サティナ・ロ亡き後、煉獄からの脅威は無くなったものと思われていました。しかし近年、東方に展開する女王国の野伏たちの報告によると、魔物や敵対的ラケルタの活動が活発になってきているそうです。また、新たな龍が煉獄に君臨したとの恐ろしい噂が囁かれています。
実は200年前、煉獄にはサティナ・ロ以外に、その配偶者として共に子を為したもう一体の雌龍、“煌炎”クジャロサ・ティが棲んで居ました。偶然にもシャズディースが襲来したその日はクジャロサ・ティが子を出産した直後で、消耗し動けなくなっていっていました。そのため、クジャロサ・ティは為す術なくシャズディースに瞬殺されました。しかし、その子に関してはアンギスの特性として「生まれたばかりの無垢な存在を殺せない」ため、その場に放置することになりました。この子龍が200年の間に成長し、虎視眈眈と機会を窺っているのです。両親を殺されたことを、この若き龍、“烈炎”デジョサ・ティは“龍を崇める部族”の守護神として君臨し、シャズディースを決して忘れず、決して赦さずに復讐を狙っているのでしょう。
世間一般では、クジャロサ・ティやデジョサ・ティの存在は知られていません。また、“龍を崇める部族”のラケルタ達の間でもクジャロサ・ティの運命については知られておらず、サティナ・ロの死と同時期に姿を消したという認識しかありません。そして、デジョサ・ティも自らがサティナ・ロとクジャロサ・ティの子であるということを未だに周知させていません。そのため、クジャロサ・ティに関してはサティナ・ロと共にシャズディースに殺された説、デジョサ・ティを産んだ際に亡くなった説、元々サティナ・ロと違って全く活動的ではなかったため実はまだひっそり生きている説など、様々な説が彼らの間でささやかれています。また、シャズディースも無防備な雌龍を殺したこと名誉な行いとし、ごく僅かな者を除いて口外していません(実際は如何なる手段や状況でも龍殺しという時点で不名誉でもなんでも無いのですが)。
なお、煉獄という言葉には「燃え盛る炎の中で死んだ魂が浄化されるための場所」という意味があります。これは600年前まで近隣一帯を治めていた宗教都市国家マラナラン フレル(神炎)の葬式慣習で、死人を火口に投げ込むことで生前の罪が清められ、たとえ罪人でも神の国に至ることが出来ると信じられていたことに由来します。宗教都市国家マラナラン フレルは600年前にサティナ・ロによって滅ぼされ、その独特な宗教も殺された人々と共に消え去りましたが、煉獄という土地名だけが残ったのです。
14)岩山砂漠
一年中乾燥していて、不毛な岩山が多数乱立する砂漠で、“龍に抗う部族”というラケルタ部族の本拠地があります。彼らは煉獄の“龍を崇める部族”と長年の仇敵同士で、数百年間、果てしなく戦い続けています。
“龍に抗う部族”は総数や繁殖力では“龍を崇める部族”に勝るのですが、サティナ・ロの存在がパワーバランスを煉獄側の圧倒的な優勢に傾けて来ていました。
シャズディースの活躍により龍が不在と思われていた間は砂漠側が有利に戦いを進め、あわや“龍を崇める部族”全滅かと思われるところまで行ったのですが、近年龍が復活したとの噂が流れるようになり、戦いは小康状態を保ったまま煉獄で睨み合いが続いている状況です。
“龍に抗う部族”は人間に対し友好的ではありませんが、彼らは全力を煉獄に傾けているため、“龍を崇める部族”を滅亡させない限りは基本的に西進して人間と事を構えることはないと近隣の多くの者は考えています。
15)旧都市国家ランバート領:ゴブの遊び場
スタート時点の40年前に滅んだ都市国家およびその支配領域です。
突如非常に強力なゴブ王が誕生し、あっと言う間に十万以上のゴブが集結、都市国家ランバートになだれ込み、瞬時に滅亡させてしまいました。
これを知った周辺諸国の人々はゴブ達がそのままランバート跡地に彼らの王国を打ち立てるものと考えていました。ゴブは自ら生産することを知らぬ種族なので、ゴブ王が誕生すると、占領した地域からの略奪と住民の奴隷化(生産人口の確保)が後に続くことが知られているのです。
しかしこのゴブ王は定住することなく、配下のゴブ軍団を従えて北上し、都市国家ア・ギーバに向けて進撃を開始しました。途方もない数のゴブが襲来するという事態に際し、斥候たちによる敵進撃状況の逐一の報告を受けながら、ア・ギーバではでは慌ただしく防衛の準備が急がれました。
しかし、ゴブ軍団はア・ギーバの門にまで迫った時点で、急に止まりました。そこに魔法使いクーランギムが突如現れ、ゴブ王を引き寄せ、魔法の力で屈服させたのです。そしてこの軍団は南に戻り、忽然と姿を消してしまいました。この功績でクーランギムが大躍進を遂げたのは先述の通りです。
それから40年。
旧都市国家領は数多のゴブの小集団や魔物が闊歩する不毛の大地に変貌し、いつしか「ゴブの遊び場」と呼ばれるようになりました。因果関係は不明ですが、この土地では草木が減少し、岩肌が露出した険しい地形に覆われるようになっています。
周辺の国々ではゴブ王が実はランバート跡地に引き返して統治しているのだとか、新たなるダンジョンマスターが出現したのだとか、クーランギムが実はそのダンジョンマスターだろうとか、様々な憶測や噂が飛び交っていますが、事実は未だ闇の中です。
16)イートン砂漠
シャズディース女王国の南方にある、200km四方ほどの砂漠です。
この砂漠の海岸線には道が作られ、フレラグラス・アズ王国と女王国との間の交易路となっています。フレラグラス・アズ王国からは傭兵隊が、女王国の方はリゲスケール海から海エルフの森を介した貿易で流入した品々が運ばれます。道路が繋がっているとはいえ魔物も出没するので、商人は厳重な警備を雇い入れて対処しています。その中には冒険者の姿も勿論頻繁に見られます。
かつてはこの辺縁に都市国家イートンがありましたが、遥か昔に滅亡しています。その原因は不明ですが、都市跡地を訪れた冒険者たちの報告から、やはり魔物か敵対的ラケルタ部族の襲撃があったものと考えられています。
跡地は魔物の巣窟で、まだまだ人知れず価値のあるものが眠っていると言われています。そのため、女王国を活動拠点とする冒険者の名所となっています。近年では女王国による占領計画も囁かれています。
17)地蟲巣食う荒野
クーランギム共和国の西端、城塞都市ジンジークと淡水海の都市国家連合の南端、都市国家ジラン ブェナスウェとの間に位置する、ナセロンド ミスレン=地蟲が無数に生息している荒涼とした丘陵地帯です。地蟲というのは強靭な顎を持った、眼の無い巨大ミミズのような生物で、睡眠を取ることなく常時動き回り、土や岩を噛み砕きながら地中を移動し続ける不思議な特性で知られます。彼らは他の生物に全く興味が無く、とにかく岩や土を噛み砕き、呑み込んで行きます。そして数日に一度は地表に頭を出し、泥状に消化された土を尾部の排泄器官から大量に排出して行きます。こうして地蟲が通り過ぎた土地は良質で肥沃な農業好適地となることで知られ、地蟲の棲地が知られると駆除隊を送り込む国家もあるほどですが、この地蟲巣食う荒野では駆除し切れないほど大量に棲んでおり、あまりにも危険なため放置されているのです。ジンジークやジラン ブェナスウェもその辺縁に見張り塔を置き、地蟲の棲息範囲の拡大を警戒しながら予防的に直近の個体を(犠牲を払いながらも)駆除していくだけで精一杯という情勢が長年続いています。
なお、地蟲の体色は噛み砕いた大地の土質で変化するため、砂漠に棲むフェロンド ミスレン=砂蟲と全く同じ生物なのではないかとする説があります。ただし砂蟲は泥土ではなく砂を排出し、また他の生物を襲うという点で地蟲とは違います。学者の中には、砂蟲が生物を襲うのは砂漠の場合土中の養分が少ないため、それを得るための進化だと唱える人も居ますが、万人の共通認識となるには至っていません。
18)竜の狩場
多数の竜が棲息する危険な山岳地帯です。
ヴァネス=竜とヴァネジラン=龍の違いは、言葉を発する能力の有無にあります。いくつもの言語を操り、より知性の高い方が龍と呼ばれていますが、知性そのものは竜もある程度備えていて、人と心を通わせて騎乗を許す例もあります(大抵は凶暴そのもので手が付けられませんが)。
翼・肥厚能力の有無や身体の大小、ブレス(魔息)を吐く能力やブレスの種類などは竜も龍も様々なバリエーションがあり、一部の間では互いの親戚関係が推察されていますが、その真偽は明らかにされていません。竜が龍になると語る人もいれば、双方は全く関係の無い種族とする人もいるのです。
どちらにせよ大変危険で力強い種族とされている竜に関する余談として、戦士の多い家柄では偶に子を竜にちなんでヴァネス、あるいは女性でヴァネッサと名付ける場合があります。有名な例では、ウィナスラス リアナイラル王国を建国した聖槍王ヴァネスも、竜という意味での名付けです。
竜の狩場では、あまり大型の、非常に強力なタイプの竜は棲んでいないとされています。中から小型の竜が縄張り争いをし、あまり豊富と言えない餌資源を奪い合っています。それだけにこの地方の竜は非常に腹を空かせていることが多く、中には共食いまで行って命を繋ぐ個体も存在することが知られています。
この地方は、50kmほど南にある淡水海の都市国家連合所属、ジャナディーのアンギス集落から若いアンギスが腕試しに訪れる、修行と実践の場としても知られています。
即ち竜の狩場とは竜が狩られる場である、と語る人間もいます。
勿論易々と倒される竜ではありませんが、この命知らずな挑戦を生き延びた精強なアンギスが淡水海の都市国家連合に取って重要な戦力として周辺に知られ、侵略に対する抑止力となっていることは事実なのです。
19)魔龍の荒らし場
非常に邪悪で残忍と恐れられる、魔龍“深淵”ヴァティサ・ティのテリトリーです。約250年前に、ヴァティサ・ティはそれまでこの地に存在していた美しい都市国家ラシエ ナセス(青き湖)に突如襲いかかり、灰塵に帰してこの地を魔物の跳梁跋扈する荒らし場としました。周辺の国々に時々散発的な魔物の襲撃が発生するようになったのはこの後であるため、ここで組織された魔物の軍勢と推測されています。しかし、それを命じたであろうヴァティサ・ティが何を目的としているかは全く不明で、周囲一帯をこの得体の知れない恐れが包んでいます。
龍は生来のダンジョンマスターとしても広く知られていますが、ヴァティサ・ティは特に地中深いダンジョンを造り、その中で強大な魔物の軍勢を育て、ゆくゆくはより広大なテリトリーを占領し巨大な帝国を築き上げるのではないかと危惧されています。竜の狩場に棲む竜たちは、雌とされているヴァティサ・ティが生んだ子らではと推測する人もいます(竜と龍に親戚関係があるかは不明で、この説には否定派も多いのですが)。
かつてレスタルカを襲い、ウィナスラス リアナイラル王国の傘下に編入せしめた魔物の軍勢も、ほぼ間違いなくこの荒らし場からのものと考えられています。このヴァティサ・ティへの恐れのために、ウィナスラス リアナイラル王国および淡水海の都市国家連合は領土問題をこじらせること無く、共にこの脅威に備えるために手を取り合おうとしているのだと言えます。
20)紅玉群島
100年前まで海賊の楽園として知られていた、大変入り組んだ群島地帯です。しかし189年前にこの群島で最も力を持っていた女海賊ルーファ・リゲスケールがリゲスケール島に移住して国家を建設した後、リゲスケール島国は海路交易路の安全を確保するために動き、ルーファの孫ルーファスの代で紅玉群島の海賊は根絶されました。この功によって、ルーファスは周辺一帯の海に自分の家名を冠し、リゲスケール海として周辺諸国も受け入れたのです。
それから100年、リゲスケール海は安全な海上交易として周辺の国々に大きく寄与しました。しかし近年、再び海賊が増えてきたことが報告され、また紅玉群島に海賊が棲みついて来ているのではという危惧が大きくなって来ています。
リゲスケール島国は、今一度海路交易の安全を守るため紅玉群島への軍事行動を計画していると噂されています。しかし、別の噂がリゲスケール海で活動している人々の胸中に大きな疑惑の影を落としています。
近年、女海賊ルーファ・リゲスケールの旗を掲げている海賊船が紅玉群島近辺に出没していると言うのです。
レヴォラコント第弐期/TOP(http://zenon.jugem.cc/?eid=5761)
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レヴォラコント第弐期の、スタート時点における冒険世界の舞台設定を略説する記事です。現時点では第壱期との相関は不明です。
地図データはゲーム「Age Of Wonders 2」の地図作成ツールを用いてデザインされています。
地域地図は、こちら:
地域地図
地球で言えば南半球に相当する位置付けの、東西2000km強、南北1400km強の地域が今回用意された冒険の舞台となります。人々が南方の地(フェラゾザイン ナセロンド)、または単純に南方(フェラズ、またはゾ フェラズ)と呼ぶこの地域は山岳地帯が比較的多く、東西400km程の草原、東西600km程の砂漠、南へ行けば永久の冬に閉ざされた豪雪地帯なども存在します。
世界全体の地図は現在のところ完全設定する予定は無く、地球と同じような1日24時間の惑星上の世界ということにしていますが、この辺りの設定は現状未定です。
上記地図の記号解説は、こちら:
記号解説
1)首都、都市、町(白塔が描かれているものは首都を表します)
2)村(人口500人以下)
3)鉱山
4)防衛施設(塔とは限らず、砦や城塞、常設陣地等を含みます)
5)根源の樹(オルファス=エルフの森であることを指します)
6)ラケルタ(蜥蜴人)部族の本拠地
7)ブーカ(妖精)の生息地
8)アンギス(四腕蛇人)部族の本拠地
9)遺跡、廃墟
10)龍の所在地
次に、設定されている国や地域の略説が、こちら:
世界地図(地域番号付)
1)クーランギム(虹)共和国
首都ザリス=クーランギム(虹の都)を頂点とした新興国です。
種族や民族の融和を唱えるクーランギムと名乗る魔法使いを指導者とし、ヒト、オルファス、アンギス、ラケルタ、ブーラーラ、ジャナクス、ガイザス アイクだけでなく、本来なら人間に敵対的なはずのコボル、ゴブ、ヴォルク、トロルをも含んだ多種族からなる民衆は彼を「神の使者」と呼んで崇め奉っています。
この国家は共和国を名乗っており、名目上ではクーランギムが絶対君主というわけではありません。民衆により選ばれた各都市や村の長(地位レベル3〜6)がそれぞれの意向と信任を託した代表議員たち(地位レベル2、都市の定住人口によって送れる人数が決まる)を首都に 送り、その代表議員たちで形成された国家議会によって国家運営が為されています。そして5年に1回、首長選任式で代表議員たちによる投票が行われ、指導者・国家元首としての総議長(地位レベル7〜8)が代表議員の中から選ばれます。クーランギムは首都ザリス クーランギムの代表議員として常に満場一致で国家元首に選ばれ続けているのです。
人口は国家全体で約40万人、首都以外の主要な人口集積地は港湾の町スナグワ、ヴォルクの女王が治める城塞都市ジンジーク、緑の染物で有名なウグスダの町で、他にも多数の村々が点在しています。また、ラケルタの“虹の部族”や“自由を愛する部族”、オルファスの森であるマエズロス ガイク ネナシア(熊谷の森)も共和国の傘下に入っており、それぞれ代表議員を首都に送っています。マエズロス ガイク ネナシアの北方に位置するグレヴァスの都市国家、カヴェプ チャロプ(鉄槌)はこの連合に加わっておらず、防備を固めながら静観を続けているようです。
本来、ザリス クーランギムはア・ギーバという民主議会制の都市国家でした。スタート時点より40年ほど前、非常に強力なゴブ王が現れて南にある都市国家ランバートを瞬時に滅ぼし、余勢を駆ってア・ギーバに迫りました。この危機に際し、突如現れたクーランギムは大勢が見ている前でゴブ王を魔法の力で屈服させ、一躍救国の英雄となりました。当時ア・ギーバを治めていた時の総議長メッサンノ・ラディカイはクーランギムを最高の礼で迎え入れ、数年後にはクーランギムが総議長に選ばれることとなりました。その後まもなく、クーランギムは少ない例外を除き、ほぼ平和裏に近隣の都市国家を次々と傘下に組み入れ併合することに成功し、ア・ギーバの版図を非常に広く大きく拡大した上で現在の政治体制に移行させました。そして遂には、かつて西の都市国家ジンジークを滅ぼして占拠したヴォルクの女王をも参加に引き込むことに成功したのです。この奇跡的な所業は圧倒的熱狂を以って民衆に称えられ、その人気に後押しされて国家議会は国家名をクーランギム共和国、首都の名前をザリス クーランギム、そして年号をもクーランギム暦に改めることを承認したのです。
クーランギム暦元年、クーランギムは魔法の力で首都の空にずっと消えない巨大な虹を顕現 させ、その虹のふもとで全ての種族や民族の融和を唱える大演説を行い、民衆の絶大な支持を得て「神の使者」と言われるようになりました。民衆の中にオークやゴブリンが混じるようになったのは、その後のことです。以来、クーランギムは30年以上もの間、共和国の指導者として指導的立場に座り続けているのです。
クーランギム共和国では、宗教組織の存在が許されていません。神殿など宗教的な建造物は存在しますが、それらは国家によって歴史的建造物など観光施設として運営されており、参拝する者もいますが、教団などが存在しないため祭祀など宗教的活動は行われていません。かつて都市国家ア・ギーバの時代は様々な宗教組織が混在していましたが、クーランギム共和国が成立して以降、いつのまにかそれら組織は消滅しています。これまで、宗教組織の消失に関して何らかの抗議活動などの動きは表面上起きていません。宗教そのものが禁止されているわけではなく、人々はそれぞれの信仰を思い思いに続けている状況ですが、そうし人々の信仰をまとめ導けるような宗教的人物や組織などは現在のところクーランギム共和国には現れておれず、またそれを必要とする声もあまり聞かれていません。
スタート時点の年号はクーランギム暦32年、即ちクーランギムの総議長としての第6期。この国家が現在の形態になって、未だ30年ほどしか経っていません。
2)シャズディース女王国
女王都シャズディースと鉱山都市チョラン ケファッ(双連)を中心とした、人口約25万人ほどの尚武の国です。もともと主要都市は女王都シャズディースのみでしたが、緑川紛争に関連してチョラン ケファッを併合したのを契機に(後述)、近年領土拡大を目論んでいると噂されています。
女王シャズディースはアンギスですが、ヒトやドワーフが主要な構成種族である(ブーラーラも少数だが根付いている)この国で絶対的とも言えるカリスマを以って君臨しています。それも当然、彼女は優れた戦士揃いのアンギスの中でも桁外れに強大無比な戦闘能力を誇り、かつてたった一人でヴァルジェディラ(煉獄)に入り紅龍“炎王”サティナロを屠ったという伝説級の偉業を成し遂げたのが世に知られ、フェラズ最強の個体と呼ばれているのです。尚武の国を率いるにこれほど相応しい人物は居ないでしょう。
シャズディース女王国では信教の自由が保証されています。人々の中にはフレグラス アズ王国で崇められている闘神ギルシャムなどの乳白天の神々(後述)を崇拝する者、乳白天の神々から派生したダイワ神群(後述)を信仰する者、ウィナスラス リアナイラル王国で盛んな四神教(後述)に従う者、確固たる教団や教義の無い先祖崇拝を行う者、独自の神を祀る者、特に宗教的素地を持たない者など様々な宗教的価値観が混在・共存しています。女王シャズディース自身は「数多の神が存在し、万物それぞれに神が宿る」という自然崇拝に近い思想を持っており、そのためすべての宗教を容認出来る寛大さを持つのだと言われています。
スタート時点の年号は徳王暦315年であり、シャズディースによる統治は現在115年続いています。
−−−緑川紛争について−−−
クーランギム歴27年、徳王歴310年、クーランギム共和国とシャズディース女王国およびその同盟国のマエズロス ファイ オルファス(海エルフの森)との間で緑川紛争と呼ばれる争いが勃発しました(米軍の紛争分類で「中強度紛争」の状態)。その原因はクーランギム共和国領のウグスダの町と鉱山都市チョラン ケファッおよび海エルフの森との間の、川の汚染を巡る確執にあります。
争いの更に5年前、ウグスダ湖の湖岸に群生する猛毒を持った植物を原料とした、鮮やかな緑色の染料が発見されました。この染料で染められた布類は光の下ではキラキラ光り、夜闇でもうっすら発光する特性があり、瞬く間に大流行して近隣諸国からウグスダ染めの衣料を求め商人が殺到するほどでした。しかし問題は、この染料を使った後に発生する大量の廃液が町の側を通る川へ捨てられていたことです。染料は川の色を緑色に変化させ、このため、川は緑川と呼ばれるようになりました。そして、廃液を投下された緑川の水は飲み水にも農業用水にも使えない、両岸の草木を枯らしてしまうほどの毒の川となったのです。
緑川は、ウグスダからチョラン ケファッの側へと流れて行きます。更にその下流は海エルフの森の外縁に隣接しています。このためチョラン ケファッと海エルフの森はウグスダに対し、廃液を川に捨てないよう求めました。しかし、せっかく新たな大収入源となった染物文化が易々と放棄される道理がありません。交渉は延々と平行線をたどり、遂にはチョラン ケファッと海エルフの森からの武力行使という形に行きついてしまいました。
チョラン ケファッは元々どの勢力にも属さない独立都市でしたが、海エルフの森による加勢を受けてなお緒戦の旗色が悪く、敗北を重ねて逆に追い込まれてしまいました。そこでチョラン ケファッは海エルフの森の同盟国であるシャズディース女王国の支援を望みました。これに対し、最終的にチョラン ケファッは自治権を保ちつつもシャズディースを宗主国と仰ぐことを条件として援軍を得ることに成功しました。こうなるとウグスダとしては多勢に無勢、一時はその 命運もこれまでかというところまで行きましたが、ここでクーランギム共和国がウグスダの併合を宣言し、町の保護に軍を送りました。結果、紛争は泥沼の長期戦となり、一進一退の攻防の果てに双方作戦能力の限界を迎え、現在戦場ヶ原を挟み両軍が睨み合う膠着状態となっています。
−−−乳白天の神々について−−−
乳白天の神々
乳白天の神々とは、遥か大昔にゾ フェラズ中央部に存在したミッダース王国で崇められていた十二柱の神々です。ミッダース王国はすでに滅亡しておりますが、その遺跡は現在もシャズディース女王国とクーランギム共和国が対峙する戦場ヶ原の北部に存在します。
十二柱の神々について、簡単に記します:
祖神3柱
・大空神シュナン
男神。霊の相。東北東の方角。大空と生命を司ります。神々の父で、大地神ムーサと交わり、ダオカ、アゴア、マイア、イチョルカ、ミューロクの大神5柱を残しました。主神であり、自由奔放な乳白天の王とされます。
・大地神ムーサ
女神。地の相。北北東の方角。大地と婚姻を司ります。神々の母で、大空神シュナンとの間に5人の子を設けました。シュナンとは争いが絶えないものの、力を合わせて滅の方角(東北)を鎮護しています。一部の人々の間では、本当の主神はムーサとされることもあります。
・海神ダイワ
女神。水の相。北北西の方角。海と収穫を司ります。姪であるアゴタと共に陰の方角(北西)を鎮護しています。子は居ないとされますが、リゲスケールの信仰(後述)では、甥であるミューロクとの間に数多の神々を産み、乳白天の神々が去った世界でダイワ神族の頂点に君臨する主神とされています。
大神5柱
・太陽神ダオカ
女神。天の相。東南東の方角。太陽と炎を司ります。最初に生まれた長女で、マイアと交わり、火炉神コングァを産みました。甥のギルシャムと共に光の方角(東南)を鎮護しています。
・月神アゴタ
女神。天の相。西北西の方角。二つの月と氷を司ります。次女。マイアと交わり、軍神ヒェイアを産みました。マイアに最も気に入られており、追い掛けられることが多いとされます。そして月の満ち欠けは、アゴタがマイアから逃れるため二つの月を行ったり来たりしているからだと言われています。
・性愛神マイア
両性具有の神。実の相。西の方角。愛と性を司ります。三女。2人の姉、1人の妹と交わって子を産ませている他、弟のミューロクとも交わり、自分自身も闘神ギルシャムを産んでいます。父親以上に自由奔放で、特に性愛に貪欲なため誰とも、何とでも交わり、神々だけでなく多くの種族の起源と言われています。
・豊穣神イチョルカ
女神。霊の相。東の方角。豊穣と成長を司ります。四女。マイアと交わり、鍛冶神ファルナムを産みました。父神に最も可愛がられており、そのため十二神の円陣における方角も父の隣を頂いています。
・夢神ミューロク
男神。水の相。北の方角。夢と詩歌(うた)を司ります。末弟。マイアと交わり、闘神ギルシャムの父となっています。母であるムーサや叔母のダイワに最も可愛がられているため、十二神の円陣ではその間に鎮座しています。リゲスケールの信仰では、その後叔母のダイワと互いに深い愛を抱くようになり、数多の子を設けることとなっていますが、しかしその過程で自らの神性を注ぎすぎてしまったため、最終的にすべてをダイワに託して霧散消滅したとされています。
孫神4柱
・火炉神コングァ
女神。火の相。南の方角。火炉と家庭を司ります。ダオカとマイアの子で、一家の安寧、心身の健康、温かさと癒しを与える神であり、医学の神とも言われています。鍛冶神ファルナムを愛しますが、二人の力を合わせて作ったものは度々ファルナムから軍神ヒェイアに贈られてしまいます。
・軍神ヒェイア
女神。実の相。西南西の方角。軍と規律を司ります。ファルナムと共に破の方角(南西)を鎮護しています。ファルナムに貢がれるのは、満更でもない様子です。
・鍛冶神ファルナム
男神。地の相。南南西の方角。鍛冶と創作を司ります。コングァ、ヒェイアとの三角関係の中で、愛するヒェイアに気に入られるためコングァの火炉を使って物作りに勤しんでいます。コングァの気持ちには、残念ながら気付いていない様子です。
・闘神ギルシャム
男神。火の相。南南東の方角。闘争と鍛錬を司ります。十二神の中では一番若いとされています。フレグラス アズのギルシャム信仰では、他の神々が少しずつ力を失って行く中で若く力のあるギルシャムに主神の座が譲られたとされています。
3)ミルファス ジェファノラン(狼の園)
クーランギム共和国とシャズディース女王国との間に存在する、緑豊かな高原地帯です。
ここには無数とも言える数の狼が高原各地に散らばって生息し、様々な規模の群れ単位でまとまっています。その中には数万匹を超える最大の群れの存在が知られていて、この群れは1年掛けて東北部にあるレラクス=ミルファス ワイマル(狼頭山)および三日月湖と南西部にある満月湖との間を8の字を描くように周回しています。
狼たちに交じって、狼から人間に姿を変えるライカンスロープの存在が知られています。しかし、彼ら全体としての目的など詳細は一切不明で、危険な地域として敬遠されています。
4)フレラグラス アズ(炎盛る氷)王国
最も南方に位置する、厳寒の高地国。
聖都メスギリアスを首都とする宗教国でもあり、人口のほとんど全てが乳白天の神々の一柱である闘神ギルシャムを信仰しています。ギルシャムは神剣ワイノラン フレル(天の炎)を持ち、背中に大楯と弓を背負った勇ましい戦士の出で立ちで知られます。
この国はギルシャム神殿の高位司祭12人からなる評議会によって運営され、このメンバーの中から最高位司祭を兼ねる王が彼ら同士の協議で決定されます。王以外の11人はそれぞれギルシャム以外の乳白天の神々の一柱が割り当てられ、その神をも合わせて祭祀を執り行います。また、ギルシャム神殿は祭祀を執り行う場所以外に戦技訓練所を兼ね、全国民は男女の別なくギルシャム神殿で子供の頃から戦士となれるよう徹底的に仕込まれます。
この国は資源に乏しいことで知られています。鉄鉱は採れますが年間産出量は少なく、港町ヤダバールでの漁業も収穫高は限られています。火山地帯であり地熱から出た天然の温泉はそれなりに有名ではありますが、好んでこの厳寒の国を訪れる旅人はそう多くはありません。そんなこの国の経済を最も支えている要素が、外国へ送り出される大勢の傭兵たちです。氷と炎の王国の傭兵は屈強剛勇かつ任務に忠実で、高値で取引されるのです。 現在の王はアイグロス・ザセラル(鷹の星)というオルファス語の名前を持つ傭兵隊長あがりの異邦人ですが、彼もまた度々自ら傭兵部隊を率いて外国の戦場で武勇を振るうことがあり、彼が不在の間は彼に絶対の忠誠を誓う評議会が代わりに政治を行います。現在はシャズディース女王国が一番の取引先ですが、ウィナスラス リアナイラル王国や淡水海の都市国家連合にも傭兵は送られています。なお、クーランギム共和国とは現在のところ取引がありません。
スタート時点の年号は戦神暦473年。幼少期をオルファスの森で過ごし育てられた初代英雄王エルデリオン・ガンドールが闘神の啓示を受けて建国してから473年が経ったことを意味し、フェラズで最も歴史の古い国です。なお、初代王自身がそうであったように、一夫多妻制の国でもあります。これは、外国へ送り出す傭兵が男性に限られているため、国内の男性が少ないという事情にも合致しています。その事情もあって、国を守備する兵の大部分が女性で構成されています。
5)“復讐を遂げる部族”勢力圏
クーランギム共和国南西に本拠を構えるラケルタ部族で、共和国とは敵対しています。
スタート時点から30年前、クーランギムは“自由を愛する部族”併合に動きましたが、その最中に当時の部族長“賢者”ゲシュタが謎の失踪を遂げました。その後、ナンバー2の“せっかち”なルッグが部族をまとめてクーランギムの傘下に入りましたが、ゲシュタが殺されたと信じる者たちが一族を半分に割る反乱を起こし、最終的には鎮圧されました。反乱分子の大部分は南西の荒れ地へと逃れ、ここでかつての族長の復讐を誓ったのです。彼らからすれば、クーランギムの傘下に入ることは自由を愛する部族という名前と誇りに対する裏切りであり、敬愛するゲシュタの殺害に等しいくらい許せないことなのです。
現在彼らは新たに族長となった“漆黒の翼”、ルガを中心にゲリラ戦を展開しながら機を窺い、なるべく数を増加させようとあらゆる手段を模索しています。
6)“北を睨む部族”勢力圏
ウィナスラス リアナイラル王国の南に本拠のあるラケルタ部族です。
クーランギム共和国とシャズディース女王国の間にある戦場ヶ原とウィナスラス リアナイラル王国に挟まれる一帯を勢力圏としており、領土拡大の野心にあふれています。ただし彼らは南方には目もくれず、もっぱら北へ攻め込もうとしており、何度失敗しても飽き足らずに挑み続けています。
7)淡水海の都市国家連合
淡水海と呼ばれるフェラズ最大の湖、その周囲にある都市国家群が相互防衛条約を互いに結んだもので、有事の際に軍隊を送り出すという盟約と淡水海を介した交易が活発である点を除けば政治的な連帯は薄く、独自にそれぞれ領地を治めている状況です。
現在はジラン ブェナスウェ(金咒符)、エナスゾラ(錬金術)、アナス ヴァセジャド ファイ(静海の島)の各都市国家、北部の山中にあるグレヴァスの町カファン キゴン(天弓)、そして更に北に位置するジャナディーのアンギス集落によって構成されています。かつては淡水海東北部にあるレスタルカの町も加わっていましたが、現在は淡水海沿岸の漁村フィアナともどもウィナスラス リアナイラル王国に編入されています。
淡水海は別名をヴァセジャド ファイ(静海)と称されるくらい水面が穏やかなことで知られ、周辺の国々の関係も同様に波風立たない穏やかなものです。ただし、そのすぐ北方に竜の狩場と魔龍の荒らし場があり、また淡水海周辺も魔物や魔族の住み着き易い地域であるため、各都市は常に備えを厳重にしています。そんな彼らに取ってグレヴァスの町カファン キゴンの武具職人たちの存在は非常に頼もしいもので、グレヴァスというだけで何かと優遇されることが知られています。
都市国家連合の人々は淡水海を治めるとする龍神ヴァセジャドと山神アッ・ダンを崇めていて、各神に関連する祭日が設定されています。それぞれの神殿も各都市にあり、教育機関を兼ねています。また、少数ながら四神教の信者も存在します。
龍神ヴァセジャドは善なる龍で、今も淡水海の底に佇むとされています。淡水海が静かなのは龍が慈悲深いからであり、もし祭祀を怠って逆鱗に触れたら淡水海は恩恵をもたらす現在の姿から一変、破壊と滅びを撒き散らすと言われています。龍神ヴァセジャドは、水龍“淡水”グラティネ・ブとも呼ばれています(逆にこちらが真の名であるべきですが、この地の人々は龍神ヴァセジャドとして呼ぶことに親しんでいます)。
山神アッ・ダンは狩人の出で立ちをしたグレヴァスの男神で、大弓とつるはしを持っています。グレヴァスの場合、弓と言えばクロスボウを選ぶ者が普通は多いのですが、カファン キゴンのグレヴァスは山神アッ・ダン信仰の影響で大弓を手に取る者が比較的多く見られます。
スタート時点の年号は同盟暦196年。レスタルカの脱退はこれより60年以上前のことで、現在レスタルカを同盟の一員と考える人間はもはやほとんど居ません。
8)ウィナスラス リアナイラル(聖槍)王国領
スタート時点現在、聖暦150年。
聖槍王ヴァネス・ディーパがその類稀な武力で以って王国を打ち立ててから、150年が過ぎました。フェラズより北方にある聖都ディーパ(地図では未表示)を中心にフェラズのどの国々より広大な版図を持つ大国に成長した王国はその勢力を更に南へ拡げるべく画策を続けていますが、現在は“北を睨む部族”にその南進を阻まれています。淡水海方面に関しては、レスタルカの町に対する大規模な魔物の襲撃があった際、都市国家同盟の援軍が到着する前に救援したことで町を傘下に引き込んだ過去がありますが、南方で“北を睨む部族”と戦っている状況で更に都市国家同盟と敵対する意思は王国にはなく、その後の外交努力で関係は改善しました。
ディーパ王家の紋章は、交差する二本の長槍です。これは聖槍王ヴァネスが同時に二本の長槍を自在に操った豪傑だったことを表します(王家に伝わる“聖槍”は二本存在します)。ヴァネスは“金剛身”の素質を持っていたことで知られていますが、聖槍王の没後、王家に“金剛身”を素質を持った者は未だ誕生していません。
王国の主な宗教は四神教です。これは魔法という超常の力を一番最初に発見ないし創造した伝説の大魔導神ノエルを主神とし、その3人の弟子とされる破壊神ロゥガ、創造神ヴェシャ、時間神ゼノンを副神としたもので、フェラズで信仰する者は多くありませんが、それより北の地域では信者の多い主要な宗教として知られています。
9)マエズロス フーラン ナサイブ(緑葉の森)
ウィナスラス リアナイラル王国南部に位置するオルファスの森です。王国とは建国以来の友邦であり、王国の関係する戦争で度々援軍を供出しています。
この森出身のオルファスには戦闘技術に長けた勇猛果敢な戦士が多く、現在の森の長であるナサイバも若かりし日のヴァーナス王の傍で戦い、彼が聖槍王と呼ばれるに至るまでの道のりを共に歩んだ建国の功労者でした。
10)マエズロス ファイ オルファス(海エルフの森)
シャズディース女王国の北部に位置するオルファスの森。森林と同時に海洋をも愛する一族が暮らしています。
女王国とは長年の同盟国で、ウグスダ、緑川を巡る紛争では共にクーランギム共和国と敵対し軍隊を派遣しています。この争いで、共和国に属する熊谷の森の軍勢とオルファス同士による殺し合いを演じてしまっています。
この森のオルファスたちの造船・操船技術や航法知識は卓越していて、リゲスケール湾内を巡る海上交易網の一翼を担って女王国に多大な恩恵をもたらしている一方、活動範囲を更なる外海に広げて遠洋航海に出ることでも知られています。
11)リゲスケール島国
リゲスケール湾の真ん中に位置する、リゲスケール島。
そこにある海洋都市リゲスケール、ラケルタの“大海の部族”、サナンドーラのアンギス集落、そして周辺二つの島を全部合わせてリゲスケール島国と呼びます。
リゲスケールとは、島を発見した女海賊ルーファ・リゲスケールから来ています。海洋都市は彼女の子孫、“大海の部族”は彼女の一番の部下だった“海王”ビゼの子孫が代々治め、アンギス集落は彼女の盟友サナンドーラが未だ長として生きています。この三者は最年長のサナンドーラが一歩引く形で、原則的に互いに対等として島を共同統治しているのです。
元々紅玉諸島の海賊だったルーファは島に移住後海賊業から足を洗い、以後海洋貿易で富を成すようになりました。その過程で彼女は貿易の妨げとなる紅玉諸島の他の海賊の根絶に力を尽くし、彼女の孫の代に目的は完遂されたと宣言されています。
リゲスケールの民は「乳白天の神々」の一柱である海神ダイワを崇めています。海神ダイワは、他の地域では見られない三連装の巨大なヘヴィ・クロスボウを左手に持ちトライデント(三叉の槍)を右手に持ったヒト型の女神で、赤と白を基調とした衣裳と深茶色の腰まで垂れる長い髪を後ろで結わえた出で立ちで知られます。即ち、彼女は海洋での狩猟を司る女神でもあるのです。なお、リゲスケールにおけるダイワ信仰は独自の発展を遂げており、ほかの地方で見られるものとかなり異なるところがあります。ここでのダイワは甥である夢神ミカッソとの間に数多の子孫を作ったとされており、その子孫達と共に「ダイワ神族」と呼ばれる神群を形成し、信仰を集めています。
スタート時点の年号は海神暦189年。紅玉諸島の海賊壊滅宣言から100年が過ぎましたが、近年再び紅玉諸島を根城とする海賊が出てきたという噂が人々に不安の影を落として居ます。
12)ブーラーラ・ヴァレケマラフ(妖精の楽園)
フェラズ最大のブーラーラの居住地。現在はマグラス ブーラーラである真夏の夜のティタが治めています。
妖精の楽園には様々な地方からブーラーラ以外の種族も多数移住し、ティタに忠誠を誓っています。そして、楽園を外敵から守るために防衛軍を結成しています。
妖精の楽園はウィナスラス リアナイラル王国領、海エルフの森、都市国家リゲスケールなどと海洋貿易を行っています。魔力の強い妖精たちの中には道具や武具に魔法を付与する力を持つ者も多く、そうした品々は諸外国に高値で取引されています。
妖精の楽園に年号という概念はありません。そうした国家のしがらみから解放される場所だからこそ、楽園と呼ばれるのです。
13)ヴァルジェディラ(煉獄)
かつて、紅龍“炎王”サティナ・ロが本拠とした広大な火山地帯です。その中心部に龍の名を冠したサティナ・ロ三連山が絶えず大規模な噴火を続けており、煉獄の範囲は年々僅かずつ拡大しています。
サティナ・ロは様々な魔族や魔物を従え、また“龍を崇める部族”というラケルタの部族も支配下に置いていました。彼は西へ勢力を拡大しようとしていましたが、200年前、その野望はたった一人の無謀な挑戦により潰えました。アンギスの女勇者シャズディースが単身煉獄に乗り込み、自らも瀕死の重傷を負いながらサティナ・ロの打倒に成功したのです。
シャズディースはサティナ・ロを殺した後、なんとか自力で山中を文字通り這うようにして抜け出し、火山灰に覆われた平地まで出た所で完全に動けなくなるほど消耗しきってしまいました。そこへ、サティナ・ロに従っていた残党が大挙して襲来しました。もはやこれまでか、とシャズディースが覚悟を決めたその時、彼女の後を追跡していた都市国家サグラス マスラニエ(徳王)当時の王子が軍勢と共に救出に現れ、これを恩義に感じたシャズディースは以降この王子に忠誠を誓うようになり、最初は将として、そして王子が王となった後には王妃として国に尽くすようになり、終に夫王の寿命が尽きた後に、国民の圧倒的支持を得て女王として即位したのです。
サティナ・ロ亡き後、煉獄からの脅威は無くなったものと思われていました。しかし近年、東方に展開する女王国の野伏たちの報告によると、魔物や敵対的ラケルタの活動が活発になってきているそうです。また、新たな龍が煉獄に君臨したとの恐ろしい噂が囁かれています。
実は200年前、煉獄にはサティナ・ロ以外に、その配偶者として共に子を為したもう一体の雌龍、“煌炎”クジャロサ・ティが棲んで居ました。偶然にもシャズディースが襲来したその日はクジャロサ・ティが子を出産した直後で、消耗し動けなくなっていっていました。そのため、クジャロサ・ティは為す術なくシャズディースに瞬殺されました。しかし、その子に関してはアンギスの特性として「生まれたばかりの無垢な存在を殺せない」ため、その場に放置することになりました。この子龍が200年の間に成長し、虎視眈眈と機会を窺っているのです。両親を殺されたことを、この若き龍、“烈炎”デジョサ・ティは“龍を崇める部族”の守護神として君臨し、シャズディースを決して忘れず、決して赦さずに復讐を狙っているのでしょう。
世間一般では、クジャロサ・ティやデジョサ・ティの存在は知られていません。また、“龍を崇める部族”のラケルタ達の間でもクジャロサ・ティの運命については知られておらず、サティナ・ロの死と同時期に姿を消したという認識しかありません。そして、デジョサ・ティも自らがサティナ・ロとクジャロサ・ティの子であるということを未だに周知させていません。そのため、クジャロサ・ティに関してはサティナ・ロと共にシャズディースに殺された説、デジョサ・ティを産んだ際に亡くなった説、元々サティナ・ロと違って全く活動的ではなかったため実はまだひっそり生きている説など、様々な説が彼らの間でささやかれています。また、シャズディースも無防備な雌龍を殺したこと名誉な行いとし、ごく僅かな者を除いて口外していません(実際は如何なる手段や状況でも龍殺しという時点で不名誉でもなんでも無いのですが)。
なお、煉獄という言葉には「燃え盛る炎の中で死んだ魂が浄化されるための場所」という意味があります。これは600年前まで近隣一帯を治めていた宗教都市国家マラナラン フレル(神炎)の葬式慣習で、死人を火口に投げ込むことで生前の罪が清められ、たとえ罪人でも神の国に至ることが出来ると信じられていたことに由来します。宗教都市国家マラナラン フレルは600年前にサティナ・ロによって滅ぼされ、その独特な宗教も殺された人々と共に消え去りましたが、煉獄という土地名だけが残ったのです。
14)岩山砂漠
一年中乾燥していて、不毛な岩山が多数乱立する砂漠で、“龍に抗う部族”というラケルタ部族の本拠地があります。彼らは煉獄の“龍を崇める部族”と長年の仇敵同士で、数百年間、果てしなく戦い続けています。
“龍に抗う部族”は総数や繁殖力では“龍を崇める部族”に勝るのですが、サティナ・ロの存在がパワーバランスを煉獄側の圧倒的な優勢に傾けて来ていました。
シャズディースの活躍により龍が不在と思われていた間は砂漠側が有利に戦いを進め、あわや“龍を崇める部族”全滅かと思われるところまで行ったのですが、近年龍が復活したとの噂が流れるようになり、戦いは小康状態を保ったまま煉獄で睨み合いが続いている状況です。
“龍に抗う部族”は人間に対し友好的ではありませんが、彼らは全力を煉獄に傾けているため、“龍を崇める部族”を滅亡させない限りは基本的に西進して人間と事を構えることはないと近隣の多くの者は考えています。
15)旧都市国家ランバート領:ゴブの遊び場
スタート時点の40年前に滅んだ都市国家およびその支配領域です。
突如非常に強力なゴブ王が誕生し、あっと言う間に十万以上のゴブが集結、都市国家ランバートになだれ込み、瞬時に滅亡させてしまいました。
これを知った周辺諸国の人々はゴブ達がそのままランバート跡地に彼らの王国を打ち立てるものと考えていました。ゴブは自ら生産することを知らぬ種族なので、ゴブ王が誕生すると、占領した地域からの略奪と住民の奴隷化(生産人口の確保)が後に続くことが知られているのです。
しかしこのゴブ王は定住することなく、配下のゴブ軍団を従えて北上し、都市国家ア・ギーバに向けて進撃を開始しました。途方もない数のゴブが襲来するという事態に際し、斥候たちによる敵進撃状況の逐一の報告を受けながら、ア・ギーバではでは慌ただしく防衛の準備が急がれました。
しかし、ゴブ軍団はア・ギーバの門にまで迫った時点で、急に止まりました。そこに魔法使いクーランギムが突如現れ、ゴブ王を引き寄せ、魔法の力で屈服させたのです。そしてこの軍団は南に戻り、忽然と姿を消してしまいました。この功績でクーランギムが大躍進を遂げたのは先述の通りです。
それから40年。
旧都市国家領は数多のゴブの小集団や魔物が闊歩する不毛の大地に変貌し、いつしか「ゴブの遊び場」と呼ばれるようになりました。因果関係は不明ですが、この土地では草木が減少し、岩肌が露出した険しい地形に覆われるようになっています。
周辺の国々ではゴブ王が実はランバート跡地に引き返して統治しているのだとか、新たなるダンジョンマスターが出現したのだとか、クーランギムが実はそのダンジョンマスターだろうとか、様々な憶測や噂が飛び交っていますが、事実は未だ闇の中です。
16)イートン砂漠
シャズディース女王国の南方にある、200km四方ほどの砂漠です。
この砂漠の海岸線には道が作られ、フレラグラス・アズ王国と女王国との間の交易路となっています。フレラグラス・アズ王国からは傭兵隊が、女王国の方はリゲスケール海から海エルフの森を介した貿易で流入した品々が運ばれます。道路が繋がっているとはいえ魔物も出没するので、商人は厳重な警備を雇い入れて対処しています。その中には冒険者の姿も勿論頻繁に見られます。
かつてはこの辺縁に都市国家イートンがありましたが、遥か昔に滅亡しています。その原因は不明ですが、都市跡地を訪れた冒険者たちの報告から、やはり魔物か敵対的ラケルタ部族の襲撃があったものと考えられています。
跡地は魔物の巣窟で、まだまだ人知れず価値のあるものが眠っていると言われています。そのため、女王国を活動拠点とする冒険者の名所となっています。近年では女王国による占領計画も囁かれています。
17)地蟲巣食う荒野
クーランギム共和国の西端、城塞都市ジンジークと淡水海の都市国家連合の南端、都市国家ジラン ブェナスウェとの間に位置する、ナセロンド ミスレン=地蟲が無数に生息している荒涼とした丘陵地帯です。地蟲というのは強靭な顎を持った、眼の無い巨大ミミズのような生物で、睡眠を取ることなく常時動き回り、土や岩を噛み砕きながら地中を移動し続ける不思議な特性で知られます。彼らは他の生物に全く興味が無く、とにかく岩や土を噛み砕き、呑み込んで行きます。そして数日に一度は地表に頭を出し、泥状に消化された土を尾部の排泄器官から大量に排出して行きます。こうして地蟲が通り過ぎた土地は良質で肥沃な農業好適地となることで知られ、地蟲の棲地が知られると駆除隊を送り込む国家もあるほどですが、この地蟲巣食う荒野では駆除し切れないほど大量に棲んでおり、あまりにも危険なため放置されているのです。ジンジークやジラン ブェナスウェもその辺縁に見張り塔を置き、地蟲の棲息範囲の拡大を警戒しながら予防的に直近の個体を(犠牲を払いながらも)駆除していくだけで精一杯という情勢が長年続いています。
なお、地蟲の体色は噛み砕いた大地の土質で変化するため、砂漠に棲むフェロンド ミスレン=砂蟲と全く同じ生物なのではないかとする説があります。ただし砂蟲は泥土ではなく砂を排出し、また他の生物を襲うという点で地蟲とは違います。学者の中には、砂蟲が生物を襲うのは砂漠の場合土中の養分が少ないため、それを得るための進化だと唱える人も居ますが、万人の共通認識となるには至っていません。
18)竜の狩場
多数の竜が棲息する危険な山岳地帯です。
ヴァネス=竜とヴァネジラン=龍の違いは、言葉を発する能力の有無にあります。いくつもの言語を操り、より知性の高い方が龍と呼ばれていますが、知性そのものは竜もある程度備えていて、人と心を通わせて騎乗を許す例もあります(大抵は凶暴そのもので手が付けられませんが)。
翼・肥厚能力の有無や身体の大小、ブレス(魔息)を吐く能力やブレスの種類などは竜も龍も様々なバリエーションがあり、一部の間では互いの親戚関係が推察されていますが、その真偽は明らかにされていません。竜が龍になると語る人もいれば、双方は全く関係の無い種族とする人もいるのです。
どちらにせよ大変危険で力強い種族とされている竜に関する余談として、戦士の多い家柄では偶に子を竜にちなんでヴァネス、あるいは女性でヴァネッサと名付ける場合があります。有名な例では、ウィナスラス リアナイラル王国を建国した聖槍王ヴァネスも、竜という意味での名付けです。
竜の狩場では、あまり大型の、非常に強力なタイプの竜は棲んでいないとされています。中から小型の竜が縄張り争いをし、あまり豊富と言えない餌資源を奪い合っています。それだけにこの地方の竜は非常に腹を空かせていることが多く、中には共食いまで行って命を繋ぐ個体も存在することが知られています。
この地方は、50kmほど南にある淡水海の都市国家連合所属、ジャナディーのアンギス集落から若いアンギスが腕試しに訪れる、修行と実践の場としても知られています。
即ち竜の狩場とは竜が狩られる場である、と語る人間もいます。
勿論易々と倒される竜ではありませんが、この命知らずな挑戦を生き延びた精強なアンギスが淡水海の都市国家連合に取って重要な戦力として周辺に知られ、侵略に対する抑止力となっていることは事実なのです。
19)魔龍の荒らし場
非常に邪悪で残忍と恐れられる、魔龍“深淵”ヴァティサ・ティのテリトリーです。約250年前に、ヴァティサ・ティはそれまでこの地に存在していた美しい都市国家ラシエ ナセス(青き湖)に突如襲いかかり、灰塵に帰してこの地を魔物の跳梁跋扈する荒らし場としました。周辺の国々に時々散発的な魔物の襲撃が発生するようになったのはこの後であるため、ここで組織された魔物の軍勢と推測されています。しかし、それを命じたであろうヴァティサ・ティが何を目的としているかは全く不明で、周囲一帯をこの得体の知れない恐れが包んでいます。
龍は生来のダンジョンマスターとしても広く知られていますが、ヴァティサ・ティは特に地中深いダンジョンを造り、その中で強大な魔物の軍勢を育て、ゆくゆくはより広大なテリトリーを占領し巨大な帝国を築き上げるのではないかと危惧されています。竜の狩場に棲む竜たちは、雌とされているヴァティサ・ティが生んだ子らではと推測する人もいます(竜と龍に親戚関係があるかは不明で、この説には否定派も多いのですが)。
かつてレスタルカを襲い、ウィナスラス リアナイラル王国の傘下に編入せしめた魔物の軍勢も、ほぼ間違いなくこの荒らし場からのものと考えられています。このヴァティサ・ティへの恐れのために、ウィナスラス リアナイラル王国および淡水海の都市国家連合は領土問題をこじらせること無く、共にこの脅威に備えるために手を取り合おうとしているのだと言えます。
20)紅玉群島
100年前まで海賊の楽園として知られていた、大変入り組んだ群島地帯です。しかし189年前にこの群島で最も力を持っていた女海賊ルーファ・リゲスケールがリゲスケール島に移住して国家を建設した後、リゲスケール島国は海路交易路の安全を確保するために動き、ルーファの孫ルーファスの代で紅玉群島の海賊は根絶されました。この功によって、ルーファスは周辺一帯の海に自分の家名を冠し、リゲスケール海として周辺諸国も受け入れたのです。
それから100年、リゲスケール海は安全な海上交易として周辺の国々に大きく寄与しました。しかし近年、再び海賊が増えてきたことが報告され、また紅玉群島に海賊が棲みついて来ているのではという危惧が大きくなって来ています。
リゲスケール島国は、今一度海路交易の安全を守るため紅玉群島への軍事行動を計画していると噂されています。しかし、別の噂がリゲスケール海で活動している人々の胸中に大きな疑惑の影を落としています。
近年、女海賊ルーファ・リゲスケールの旗を掲げている海賊船が紅玉群島近辺に出没していると言うのです。